冒険の終わり (1/2)
ドイツ女子 2−0 日本女子
■メダルを懸けた最後の戦い
2004年4月24日、国立競技場から見上げた空には、細い三日月が架かっていた。
アテネ行きを懸けた、北朝鮮との準決勝が始まる直前。両国国歌を聴きながら、私はその月を眺め、あることを思った。
この月は、明日にはどうなっているのだろう。満月に向かって輝きを増していくのか、それとも闇に消えてしまうのか、と。五輪か、それともすべてを失ってしまうのか。彼女たちの境遇を、その月に重ねて見ていたのだ。
あれから4年。北京五輪というひのき舞台で、女子サッカーファンのみならず、多くのサッカーファン、スポーツファンの注目を浴びたなでしこジャパンは、満月のように輝いてこの日を迎えた。世界大会初のメダル獲得を懸けて、ドイツとの3位決定戦に臨んだのだ。
キャプテンを務めるDF池田浩美を先頭に、大黒柱のMF澤穂希をしんがりに、先発メンバーがピッチに入場してくる。GK福元美穂。DF近賀ゆかり、岩清水梓、矢野喬子。MF原歩、阪口夢穂、宮間あや。FW大野忍、永里優季。
勝っても負けても、このチームで戦う五輪は、これが最後。いつものように胸の日の丸に手を当てて君が代を聴き終えると、やがてキックオフの笛が鳴った。
試合開始直後、宮間からのスルーパスが大野に渡る。いきなりのチャンスに、会場中がどよめいた。こぼれ球を永里がシュートするが、ボールは枠を逸れる。
対するドイツは、9番プリンツ、8番スミゼクの2トップが交互に引いて後方からのボールを引き出そうとする。が、なでしこジャパンはDFとMFが呼吸を合わせ、相手を挟み撃ちにしてボールを奪い返す。この日も澤が、守備の局面で序盤から目立った活躍を見せている。佐々木則夫監督の「澤ボランチ構想」が、世界戦略上、実に効果的であることをあらためて感じさせるシーンが続出した。
■最もメダルに近づいた瞬間
奪ったボールを素早く敵陣に送りたい、なでしこジャパン。しかし、この日のドイツは立ち上がりからとても慎重だった。攻めている間も守備にすきを作らないよう、4−4−2の陣形をまったく崩そうとしないのだ。なでしこジャパンは、自陣でボールを動かしながら攻めどころをうかがう。13分に永里のポストプレーから大野へとスルーパスが通る。自分で仕掛けて相手をずらし、コースをこじ開けて打ち込んだ大野のシュートは、惜しくもバーの上を越えていった。それでも今大会を通じて大野が得た、自信と手応えを感じさせるシーンだった。
20分には、永里に入ったボールが左にこぼれると、宮間が鋭く反応する。永里をスクリーンに使い、回り込むようにして左隅へシュート。しかし、相手GKアンゲラーの目いっぱい伸ばした右手が、あと一歩のところでゴールを阻止した。
過去の対戦では、チャンスさえほとんど作らせてくれなかったドイツを相手に、なでしこジャパンが互角の勝負を演じている。勝ち進むうちに身につけた積極性が、あのドイツを押し込んでいるのだ。
22分。なでしこジャパンの右コーナーキック。ファーサイドから折り返されたボールを澤が強烈にボレーで合わせる。アンゲラーは横っ飛びで防ぎにいっているが、後でリプレーを確認すると、体はゴールの内側に入っていた。反応しきれていなかった証拠である。しかし、この決定的なシュートも、ゴールライン際で7番ベーリンガーのクリアで阻まれた。結果的に、この時が、なでしこジャパンが最もメダルに近づいた瞬間だった。
・澤「素晴らしい経験」、宮間「歴史を作れた」=選手コメント (2008/8/22)
・佐々木監督「胸を張って帰りたい」=監督会見 (2008/8/22)




