なでしこジャパン、北京五輪への確かな手応え (2/2)
日本女子 3−0 オーストラリア女子
■随所にたくましさを見せた選手たち
勝敗の行方は、前半終了間際と後半開始早々のなでしこジャパンの連続得点で決まった。42分、ようやく中央に切れ込んだ安藤に澤からのスルーパスが渡り、安藤のシュートからコーナーキックを得る。宮間あやの右コーナーキックはいったん相手にクリアされるも、再び宮間からのクロスを澤が頭で合わせ先制。ハーフタイムをはさんだ47分には、安藤、宮間、永里がそれぞれマーカーとの駆け引きを連続して制する速攻で追加点を挙げた。
佐々木監督はその後の時間帯で、選手交代を含めたさまざまな状況への対応を試みた。中でも「なるほど」とひざを打った采配(さいはい)は、FWの交代の手法だ。55分あたりから、右サイドの安藤と近賀ゆかりのポジションを前後で入れ替えると、その10分後、安藤をFWにシフト。近賀を元のサイドバックに戻し、FWの大野忍に代えて原を右サイドハーフとして投入した。つまり、安藤をFWに上げて原を投入したのだが、その間の10分間に安藤をDFに下げて、ピッチ内で休ませたのだ。
10分間息を整えた安藤は、FWに上がると再びアクセルを踏み、左右に、中央にと顔を出しボールを引き出した。73分、得点には至らなかったものの、左に流れた安藤が澤からスルーパスを受け、ラインを突破した場面があった。目立たなかったが、安藤は細かい動き直しを繰り返し、澤とのタイミングを計っていた。澤は、安藤についたDFの意識が、出し手の自分に引き寄せられた一瞬を逃さずパスを送った。同じ瞬間、安藤は相手DFの背中側に回って、ボールを受ける前に突破した。澤と安藤。かつては不動のトップ下とその補欠、といった見方をされてきた2人だが、互いにポジションを変えて高次元で共存できることを示したシーンだ。
そのほかの交代選手も、限定された状況下で自らの特徴をチームに生かすための采配に、十分に答えた。MF原とDF矢野喬子は、相手の推進力である右サイドを封じ、GK海堀は「福元のアクシンデントを想定して、本人には事前に何も告げず突然ピッチに入れた」というスクランブル起用にも落ち着いて対処した。終了間際に投入されたFW丸山桂里奈とDF宇津木瑠美は、終盤のパワープレー要員としての役割が与えられた。丸山は強引にペナルティーエリア内に突っ込むドリブラーとして、宇津木は後方からのロングパサーとして。丸山は入って早々にそのドリブルからPKを獲得し、自ら決めて試合にダメを押した。
暑さと疲れという、タフなコンディション下での戦いを強いられただけに、胸のすくようないつものなでしこジャパンの戦いぶりとは違った展開になったが、振り返ってみれば、選手たちは随所にたくましさを見せ、監督も緻密(ちみつ)で計算高い采配と演出を披露した。五輪への準備として、実り多き試合であった。
佐々木監督は、29日のアルゼンチン戦に向けて「五輪初戦のニュージーランド戦を想定して、絶対に勝ち点3を取る戦いをしたい。そしてできるだけ点を取りたい」と抱負を述べた。だからといって、7月中旬の福島キャンプから続く地獄の追い込みを緩めるつもりはないらしい。帰京後には、佐々木監督の母校・帝京高校男子との合同練習が予定されている。
<了>
・女子オーストラリア戦後 佐々木監督会見 (2008/7/24)
江橋よしのり1972年生まれ。茨城県出身。フリーライター。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。近著に『世界一のあきらめない心』(小学館)など。なでしこジャパン佐々木則夫監督の著書『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(講談社)や、澤穂希選手の著書『夢をかなえる。』(徳間書店)の構成を担当 |




