![]() 【(C)Getty Images/AFLO】 (スポーツナビ編集部) ACLのプレステージを高めた浦和の出場2007年という年は、間違いなく“青の時代”から“赤の時代”へと移行するターニングポイントであった。もちろん“青”は日本代表であり、“赤”は浦和レッズ、つまりクラブである。それまで代表人気で回っていた日本のサッカー界は、この年、浦和を象徴とするクラブに、完全に自転軸をシフトさせたのである。もちろん、それ以前から浦和は人気クラブではあった。彼らが初タイトル(ナビスコカップ)を取った03年、初のステージ優勝を飾った04年、そして天皇杯を制した05年、さらにはリーグとカップの2冠を達成した06年、いずれも国内サッカーの話題の中心に浦和がいたのは間違いない。だが今にして思えば、それら一連のメモリアルは、07年への助走にしか過ぎなかった。当のサポーター自身も、ほんの2年くらい前までは「え、オレたちがビッグクラブだって?」という狼狽(ろうばい)を隠し切れなかったはずだ。浦和が昨年、名実ともにビッグクラブとして国内外で広く認識され、日本代表を凌駕(りょうが)する存在になったという私の指摘は、決して的外れではないと確信する。 昨年、浦和が成し遂げた功績の中で、第一に挙げたいのがACLに優勝し、同時にそのプレステージを高めたことである。もちろん浦和のACL優勝の陰には、Jリーグや日本サッカー協会のサポートがあったことは見逃せない。とはいえ、もし浦和がACL出場権を獲得していなかったら、これほどサッカー界が団結してACLを取りにいったかというと、やはりいささかの疑念をぬぐえない。当初は「罰ゲーム」のような扱いを受けていたACLは、ビッグクラブ浦和が参戦して注目を集めることで、初めて「われわれの大会」へと変ぼうしたのである。 私見では、決勝のセパハン戦よりも、むしろ準々決勝、準決勝での韓国のクラブ(全北現代、城南一和)との死闘こそが、今大会のクライマックスであったと考える。代表戦ではない、クラブ同士の対戦でも「日韓戦」がこれほどまでに両国のサッカーファンを熱くさせるということを、浦和とそのサポーターは私たちに証明して見せた。普段は浦和の「数の力」を快く思っていない他クラブのサポーターでも、この「日韓戦」には心底感情移入できたのではないか。 ![]() サポーターの大声援を背にアジアチャンピオン、そして世界3位に輝いた浦和レッズ【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】 クラブW杯での貢献、そして国内での隠れた貢献昨年の浦和はACLのみならず、クラブW杯の風景をも変えてしまった。セパハンとの開幕戦では、それまで閑古鳥が鳴いていた豊田スタジアムのゴール裏を真っ赤に染め上げ、続くミラン戦では横浜国際総合競技場を6万7005人とほぼフルハウスにし、テレビの平均視聴率は23%に達した。これまで「W杯」と銘打ちながら、サッカーファン以外にはなかなか注目されることのなかったクラブW杯だが、浦和がアジア王者として出場することで、状況は一変。浦和の試合結果は、NHKを含む各局でも大きく報じられ、各スポーツ紙の一面を飾ることとなった。 最終的に浦和は、この大会で「世界3位」の称号を得ることになった。だが、ミランとの準決勝で明白となった彼我の差もまた、ほろ苦い思い出となった。スコアこそ0−1と僅(きん)差であったが、その1点は長谷部誠が語った通り、「5点、10点に匹敵する」1点であった。とはいえ、これまで「別世界」でしかなかった欧州のビッグクラブに対し、日本のビッグクラブが公式戦で真剣勝負を演じたことが、日本サッカー史のメルクマール(指標)となったのは紛れもない事実。浦和ファンのみならず、日本のサッカーファン全体にとっても、世界のトップとの距離感をはっきり認識することができた。その意味で、今大会における浦和の貢献度は計り知れない。 そんな浦和が昨年、国内では一つのタイトルも獲得できなかったことは、何とも皮肉であった。だが見方を変えれば、これはこれである意味、浦和の国内サッカーへの貢献の結果、ととらえることも可能だろう。 昨年の浦和は、ビッグクラブの宿命ゆえ、必然的にアンチも大量発生した。浦和のサポーターの数は確かに日本一だが、決してJリーグ全体の過半数を占めているわけではないし、浦和のサッカーを「つまらない」と切って捨てるサッカーファンも一定数以上に存在する。また、他のクラブにとって浦和は、目標であると同時に、明確に「打倒すべき存在」の筆頭となった。鹿島アントラーズの逆転優勝も、それを導いたJ1最終節での横浜FCのアップセットも、そして天皇杯5回戦での愛媛FCの快挙も、相手が浦和だったからこそ、あれほど劇的なゲームとして成立したのではないか。 ビッグクラブ浦和の君臨は、国内のサッカーにも新たな刺激とモチベーションを与える契機となった。ACLやクラブW杯での功績もさることながら、こうした国内サッカーへの隠れた貢献についても、昨年の浦和は評価されてしかるべきだと思う。 <了> (文・宇都宮徹壱) |
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