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コラム  

4パーセントの望み(1/2)
(6月12日@カイザースラウテルン)

2006年06月13日

■試合後のミックスゾーンにて

カイザースラウテルンに向かう途中駅で、オーストラリアのサポーターと遭遇。応援合戦が始まった
カイザースラウテルンに向かう途中駅で、オーストラリアのサポーターと遭遇。応援合戦が始まった【 photo by 宇都宮徹壱 】

 試合後のミックスゾーンは、日本人記者たちの深い落胆と自虐、そして憤まんやるかたない思いで満ち溢れていた。その外では、オーストラリアサポーターたちの凱歌(がいか)が、いつまでも鳴り止むことなく続いている。そんな中、選手たちは、ある者はうつむき加減に、ある者はじっと一点を見つめたまま、さながら葬儀の参列者のように、無言のまま早足で通り過ぎてゆく。中村は足を痛そうに引きずっていた。坪井の姿も一瞬だけ見えたが、果たしてけがの具合はどうなのだろうか。

 宮本はキャプテンとしての義務を果たすべく、きちんとメディアからの質問に応じてくれた。だが、その表情は非常に疲れていて、その言葉は何とも茫洋(ぼうよう)としていた。

「初戦に負けてしまったことで(グループリーグ突破は)難しくなったとは思う。(ロッカールームの雰囲気は)ちょっと暗いですね。
 向こうはフレッシュな選手を3人入れてきたけど、こちらは守備陣が疲れていた。(中略)
(クロアチア戦に向けて)勝つために何ができるかということを……今はまだ思いつかないけれど、考えていきたいと思う」

 ラスト10分で3失点。これまで何度か、強豪相手に大量失点を喫してきたことのある日本代表だが、現体制になって、ここまで短時間での大量失点というのは今までになかったことである。途中交代のアロイージが、トップスピードで駒野を置き去りにしてダメ押しの3点目を決めた瞬間などは、ボクサーがノックアウトされる瞬間をスローモーションで見ているような錯覚を覚え、直後に「崩壊」の二文字が脳裏に浮かんだ。

 もちろん、この「崩壊」の責任は、誰か1人に帰するものではあるまい。とはいえ、それが事故もしくは偶発的なものであったかと問われれば、やはり私は「否」と答えるしかない。さすがに3点は取られ過ぎだと思ったが、それでも今の日本が、それこそ今大会のイングランドやポルトガルのように1−0で逃げ切れるほど成熟したチームであるとは、ちょっと思えなかった。その意味では、敗戦を予感させる要素は、そこかしこに存在したのである。そこであらためて、この試合で何が起こったのか、両チームの選手交代にフォーカスして振り返ってみたい。

■1−0で逃げ切ることは可能だったのか?

 前半26分、中村のラッキーなゴールで先制した日本。後半のゲームプランは「向こうが点を取りにくることは分かっていた。それをどうしのぐか、ということを考えていた。もちろん追加点も狙っていたし、カウンターからのチャンスもあった」(宮本)というものであった。
 一方ジーコは、試合後の会見で「そこ(1−0)でゲームを終わらせることもできた」としながらも、「(オーストラリアの)後ろ(の守備)が薄くなっているのは確実。あそこで追加点を取っておけばこういう結果にならなかった」と語っている。
 守りに入るのか、それとも強気に攻めにいくのか。その見極めは何だったのか、どうもはっきりしない。要するに、チームとしての意思統一ができていなかったのだろう。

 そうこうするうちに後半10分、坪井が足をつって倒れてしまう。そして坪井に代わって、緊急招集された茂庭が投入される。ここで、あらためて驚かされる事実が2つ。まず、センターバックのバックアッパーが茂庭しかいないという事実。そして、茂庭の最近出場した試合は、今年2月に行われたアジアカップ最終予選のインド戦(しかも途中出場)までさかのぼらなければならないという事実。いかにジーコが、このポジションに対する危機管理を欠いていたか、この交代が見事に象徴しているといえよう。

 これに対してオーストラリアのヒディンク監督は、後半8分にブレシアーノに代えてカーヒル(この試合では結局2ゴールをゲット)、16分にはDFのムーアを削って長身FWのケネディを投入、さらには右サイドで三都主と何度もマッチアップを演じていたウィルクシャーを下げてFWアロイージを送り出すなど、布陣を極端に前傾姿勢にする。
 それでも日本のディフェンス陣は、高さでのハンディを素早い寄せと集団での囲みによって、しっかりカバーできていたと思う。またこの日は、ゴールマウスを守る川口も絶好調。自身も「流れというか、フィーリングを引き寄せることができていた」と語るように、何度もファインセーブを連発し、ビドゥカをはじめとするオーストラリアのアタッカー陣は天を仰ぐばかりであった。

 確かに、後半に入ると見ていて失点する雰囲気は感じられなかった。オージー(オーストラリア)のシュートは、次第に精度を欠いた長距離砲となり、加えて折からの暑さと焦燥感で冷静さを失っているようにも見えた。これなら勝てるかもしれない。
 34分、さらに相手が前がかりになったことで、スペースメーカーとしての存在意義が薄れた柳沢に代えて、小野が投入される。おそらくここで、ジーコも1−0で逃げ切る踏ん切りをつけ、あわよくば追加点を狙おうと考えたのだと思う。オーストラリアの怒涛(どとう)の3ゴールがさく裂するのは、このわずか5分後のことである。

<続く>


【関連リンク】
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