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コラム  

湯浅健二 スポーツナビ

W杯とドイツ代表総括、そして日本サッカーの課題(1/2)
ドイツサッカー界の重鎮ビーザンツ氏に訊く

2006年08月09日

■30年間、プロコーチ養成コースの総責任者を務めた人物

ブッフバルトやクリンスマンら多くのプロコーチを育て上げた、ドイツサッカー界の重鎮ゲロー・ビーザンツ氏
ブッフバルトやクリンスマンら多くのプロコーチを育て上げた、ドイツサッカー界の重鎮ゲロー・ビーザンツ氏【 (C)Kenji 】

 ワールドカップ(W杯)が終了した3週間後の7月30日。ドイツ北部の都市ハノーファーで、ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟が主催する国際会議が始まった。
 私も正式会員ということで毎年招待されているのだが、この2年間はごぶさたしてしまった。今回は、W杯取材の流れで、その後もさまざまな情報交換などを目的にヨーロッパに滞在し続け、その最後を飾るプログラムとして国際会議に参加することにした。
 今回は、ドイツ代表が素晴らしいサッカーを展開して3位に輝いたこともあって、700人を超える参加者が一堂に会するという大盛況の会議になった。

 ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟は1957年に設立された。最初は、私も所有するプロライセンスコーチだけを対象にした組織だったが、最近になってAライセンスコーチにも門戸が開かれた。そのこともあって、現在の会員数は「3800人」までに拡大している。
「われわれは、どこからも影響を受けない独立した組織として活動を継続できていることを誇りに思う」。3年ごとに開催される連盟の総会で(今年がそれに当たる)、会長のツィングラーフ氏が、力強く言い切ったものだ。私が国際会議に参加しはじめて既に15年が過ぎようとしているけれど、確かに連盟は、ドイツサッカー界での存在感を着実に高め続けている。

 連盟のリーディングメンバーには、ドイツサッカー協会のスポーツ・ディレクターに就任したマティアス・ザマー(現役時代はヨーロッパ最優秀選手に選ばれ、監督としてもドルトムントなどで素晴らしい成果を残している)、バイエルン・ミュンヘン監督のフェリックス・マガート、ベルダー・ブレーメン監督トーマス・シャーフらがいる。また、辞任したユルゲン・クリンスマンの後を継いだドイツ代表監督のヨギ・レーブもメンバーに入ることが確実視されている。もちろんそれ以外にも、元プロ選手ほどには一般に名が知られているわけではないけれど、これまでドイツサッカー界を引っ張ってきた重鎮の方々も健在だ。

 そんな重鎮の中でも、2000年までの30年間、プロコーチ養成コースの総責任者(ドイツサッカー協会コーチ養成プログラムの総責任者)を務めたゲロー・ビーザンツ氏は特別な存在だ。前述した連盟リーディングメンバーだけではなく、浦和レッズ監督ギド・ブッフバルトや、前代表監督ユルゲン・クリンスマンといったドイツサッカー界で活躍しているプロコーチのほとんどは彼の「生徒」だったのである。

 彼は、私のドイツ時代の恩師である。また彼は、日本の「S級ライセンス・コーチングコース」の立ち上げにも大きく貢献したから、日本サッカー界での知名度も高い。
 現在は、UEFA(欧州サッカー連盟)とFIFA(国際サッカー連盟)の「インストラクター」や「アドバイザー」を務め、重要なゲームの分析をしたり、コーチ養成コースのインストラクターに招かれたりしている。そのゲロー・ビーザンツ氏に、今回のW杯をテーマにインタビューした。

■若いタレントが育ち、チャンスを与えられたドイツ代表

 インタビューは、もちろんドイツ代表の話題が中心になったわけだが、その成功についてビーザンツ氏は、こんなふうに話しはじめた。
「このドイツ代表は若いチームだから、最初のゲーム(コスタリカとの開幕戦)で波に乗ったことに、非常に重要な意味があった。若いから恐れを知らないという側面もあるだろう。ラーム、ポドルスキー、シュバインシュタイガーらは常に、躊躇(ちゅうちょ)することなく1対1の競り合いを仕掛けていった」

「私は、勝負の試合だったからこそ、若い選手たちが刺激され、そして大きくブレイクしていったと思っているのですが……」という筆者の問いかけに、「そう、その通り。勝負の試合で成功体感を積み重ねていけたからこそ、自信を深め、結果だけではなく、内容的にも素晴らしいサッカーになったと思うよ」と力を込めるビーザンツ氏。

 続けて、「いまドイツでは、若いタレントがどんどん育っている。ただ彼らの多くは、才能を本当の意味で開花させる機会を与えられていない。2002年W杯の後、当時の代表監督だったルディー・フェラーは若いタレントをチームに入れなかった。だから、2004年のヨーロッパ選手権ではロートルだけのチームになってしまった。そんなところに登場したのがユルゲン(クリンスマン)というわけだ。彼は積極的に若い選手にチャンスを与え、それが実を結んだ。素晴らしい仕事をしたと思うよ」と、この数年の経緯を分析する。

「2004年末にドイツ代表が来日したとき、ユルゲンが私との単独インタビューに応えてくれたのですが、そのときも彼は、名前にこだわらず、選手のパフォーマンスだけをフェアに評価すると言っていましたからね」と私が言うと、「ユルゲンは、メディアなどだけじゃなく、たまにはドイツ協会からも逆風が吹いたにもかかわらず、とにかく若いタレントとともに新しいチームを作ると宣言し、そしてその意志を完遂させたんだよ。立派なものだ」とビーザンツ氏が素早く反応した。

<続く>

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