平野貴也
スポーツナビ

明大、51年ぶりの優勝を引き寄せた改革
全日本大学サッカー選手権大会

2010年1月8日(金)

■天皇杯での経験が守備の改善を促した

51年ぶりの優勝を果たした明治大学サッカー部
51年ぶりの優勝を果たした明治大学サッカー部【平野貴也】

 明治が大学サッカー界の頂点に立った。全日本大学サッカー選手権大会(通称:インカレ)の決勝戦が6日に国立競技場で行われ、明治大学(関東3位)が2−1で福岡大学(九州1位)を破り、51年ぶり2度目の優勝を果たした。

 1回戦は仙台大学(東北1位)に0−0から、2回戦は鹿屋体育大学(九州2位)に1−1から、2戦連続でPK戦による辛勝と苦戦が続いた。しかし、準決勝では負傷明けで初先発となったFW久保裕一(3年・名古屋グランパスU18出身)が決定力を発揮して関西大学(関西2位)に2−0と完勝。決勝戦では福岡大学の強力かつ的確なセットプレーに再三脅かされながら、GK高木駿(2年・東京Vユース出身)の神がかり的なセーブなどでしのぎ切り、最後は久保のゴールで勝ち越した。

 明大と言えば、天皇杯での躍進が記憶に新しい。2回戦でJ2上位の湘南ベルマーレを撃破。3回戦ではモンテディオ山形を3−0で破り、大学勢として初めてJ1勢から勝利を飾る大金星を挙げた。それでも関東リーグ後期戦では10試合で18失点と守備に課題を残していたこともあり、インカレで優勝候補に挙げられることはなかった。
 しかし、今大会はPKを除けば準々決勝と決勝戦で喫した2失点のみ。攻撃の主軸を担うMF山田大記(3年・藤枝東出身)は「天皇杯ぐらいから格上のチームとやって守備で割り切って守るという意識がすごくできた。危ない時間帯もむやみに流れを変えようとしてバランスを崩してしまうことがないようにと話し合ったし、そういうことがなければそうそう失点はしないし、簡単には負けないなというのが学習できた。そこは今季終盤、変わったところだと思う」と、直前の3週間でも特に注力したという守備の改善を勝因の一つに挙げた。そして、手堅くなった守備に加え、久保が準決勝、山田が決勝で先発復帰。負傷で離脱していた戦力が肝心の大舞台に戻ってきた影響も大きかった。

■近年の明大が力をつけてきた理由とは

大会MVPを獲得した小林でさえ、激しいポジション争いにさらされている
大会MVPを獲得した小林でさえ、激しいポジション争いにさらされている【平野貴也】

 明大は近年、目覚しく成績を向上させている。現在チームを率いる神川明彦監督がコーチから昇格する形で就任した2004年に関東リーグ1部へ復帰、07年は43年ぶりに同リーグを制覇。そして、今季は天皇杯での活躍、インカレ制覇と勢いを増している。指揮官は、躍進の裏側にはハード、ソフト両面の充実、そして精神面の見直しがあると説明した。

「ハード面は、06年3月に人工芝のグラウンドが完成し、学生寮とトレーニングルーム、トラックとグラウンドが一直線になる導線ができて質の高い練習ができるようになった。ソフト面では04年から東京ヴェルディさんと業務提携をしてコーチ派遣をしてもらって技術的、戦術的なものを教えてもらっている。それから(別ルートで)24時間体制でトレーナーを派遣してもらうようになった。もう1点は、生活面の改善。僕が入ったときは本当にひどくて悔しかった。朝しっかり起きて食事をする。そんな当たり前のことが初めはできていなかった。今は朝6時、8時、10時からの練習で必ず一度は出なければいけないようにしている。午後は授業を入れて単位も取らなくてはいけません。ナイター設備がないこともあり、その環境の中でいかに強くなるかを考えた。それが6年間での変化ではないかとわたしはとらえている」

 そして環境面の向上により、質の高い選手がそろうようになった。スポーツ推薦による入学枠も増加。今春に卒業する4年生の代では1人だったのが、年を重ねるごとに5人、7人、13人と飛躍的に拡大した。特に昨季は豊作で、1年から早くも試合に出場するメンバーが続出。高校3年時にFC東京U−18で日本クラブユース選手権優勝を果たしたFW山村佑樹、岩渕良太、MF三田啓貴の3人が加入し、高校選手権で活躍した選手で構成される日本高校選抜からも優勝校の主将だったDF松岡祐介(広島皆実)ら4人が紫紺のユニホームに袖を通した。

 厚みを増す選手層が激しいポジション争いを生み、彼らのポテンシャルを引き出している側面も見逃せない。インカレでMVPに輝いた小林裕紀(3年・ヴェルディユース出身)でさえ「入って来る選手のレベルが高い。同じ中盤でも1年生の三田なんかはかなりすごい。負けたくないという気持ちになる」と刺激を受けている。
 4月には現在佳境を迎えている高校選手権で注目を集めたFW野間涼太(青森山田)、西澤厚志(前橋育英)らが入学予定。今春もハイレベルな新入生が明治の門をたたくことになる。
 神川監督は「3年生以下は複数Jリーグに行くことになると思うので期待している。長友佑都(FC東京)だけだとまぐれだと思われるので、2人、3人と日本代表へ送り込みたい」と明治サッカーの新時代を築く若きタレントに期待を掛けている。

■3冠というさらなる高みを目指して

来シーズンは3冠を目標に掲げる神川監督
来シーズンは3冠を目標に掲げる神川監督【平野貴也】

 インカレ優勝後、報道陣に囲まれた神川監督は「もう言ってしまいますけど、来季は3冠(関東リーグ、総理大臣杯、インカレ)を狙います」と新たな目標を宣言した。
 タイトル独占という究極の目標は、今季の躍進を自信とするか慢心とするかで、達成までの距離が変わってくるだろう。明大は心に生まれかねないすきを埋めるべく、3月にスペインのバルセロナへ約1週間遠征し地元のチームと強化試合を行うプランを組んでいる。指揮官は、その心積もりを次のように話した。

「彼らは、大したことないのに自分たちのサッカーに酔いしれるときがある。スペインでパスサッカーの神髄に触れ、自分たちのパスサッカーがいかに脆弱(ぜいじゃく)であるかを肌身に触れて知ってほしい。0−10でボコボコにやられて負けてもいいから、『バルセロナで学んだこと』と合言葉にしながら来季をやっていけたらいい。また磨き上げてリーグ開幕に備えたい」

 意欲を失わない改革の旗手に導かれ、明大サッカー部は新たな歴史作りに挑戦する。

<了>

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