動画再現データ分析

日本を意識した韓国の守備スタイル(1/3)
激闘の日韓戦を詳細分析Vol.5

2011年8月10日
解説:スポナビblog「サッカーの面白い分析を心がけます」管理人

【Getty Images】

 アジアカップ準決勝・韓国戦の詳細分析シリーズもいよいよ最終回を迎える。第5回はスポーツナビblog「サッカーの面白い分析を心がけます」管理人が解説。同ブログは図解入りの詳しいゲーム分析が好評で、ファンブログのアクセスランキングでも上位の常連として、サッカーファンの支持を集めている。
 さまざまな角度、選手の視点などからプレー、ポジショニングを確認できる動画再現データを用いて主に韓国を分析。得意のロングボール戦術、守備の弱点とシステム変更による修正など、ライバルの特徴を洗い出す。
※解説は動画の分析になっています。動画と合わせてお楽しみください。

分析ポイント

内田を狙った韓国得意のロングボール攻撃

【プレーバック】
前半31分:韓国が後方でボールを回し、すきをうかがう。これに対し、日本は守備ブロックを作って対応。前線の前田、本田がプレスをかける。一発で局面を打開しようと、韓国は最終ラインのチョ・ヨンヒョンが内田の裏を狙ってロングボールを送る。サイドに流れたチ・ドンウォンが深い位置でキープし、攻撃参加したイ・ヨンピョにバックパスを出すが、日本守備陣が防いでスローインに。

※動画は新しいタブ、ウインドウで立ち上がります

【解説】

 最初のポイントは韓国のボールの落ち着かせ方です。韓国は優れたゲームメーカーが不在なので、ロングボールを基本とした攻撃を得意としています。アジアでの韓国のフィジカルの強さは衆知の通りなので、ロングボール戦術を採用するのも非常に理にかなっています。ロングボールの活用で大切なことは、キッカーに時間とスペースを与えられるか、それに尽きます。

 ボールを保持している時に韓国は全体を間延びさせます。特に縦幅を重視しています。縦にピッチを広く使うために、DFからFWまでの距離は遠目に設定されています。ボールを保持している時にディフェンスラインを低くするメリットは、相手のプレスに多くの判断を強いることです。主たる判断は、どこまで相手陣内で深追いすべきか、そして中盤より後方の選手はどこまで前線のプレスについて行くべきか。この場面では、数的不利の中で前田と本田がボールにプレスをかけに行っています。

 岡崎もそのプレス要員に加わろうとしていますが、自分がマークすべきイ・ヨンピョを優先しています。そのために、中央で韓国優位の4対2という局面ができあがっています。よって、韓国のセンターバックはフリーでボールを蹴れる状況にありました。

 味方が自分たちのプレスについてこないので、前田はプレスをかわされることを避け、相手にロングボールを蹴らせることを優先しています。センターバックまでプレスをかけて、MFにオープンな状況でボールを持たれるよりも、ロングボールを蹴らせた方がいいと判断したのでしょう。

 次のポイントはそのロングボールを誰と誰が競り合うかです。ロングボールを使う韓国は空中戦の強い選手に供給する必要があります。また、その競り合う相手が空中戦に弱い方がいい。自分たちのストロングポイントを相手のウイークポイントにぶつける。サッカーの基本中の基本です。

 ロングボールにおいて、韓国の強いポイントはチ・ドンウォン、逆に日本の弱いポイントは内田です。韓国はこのように考えました。なので、この試合では中央のチ・ドンウォンがサイドに頻繁に流れて内田とマッチアップする場面がいくつかありました。フリーのセンターバックから内田の裏に放り込んだり、内田と競り合いをさせたりと。当然、岩政が内田のカバーに入りますが、それも韓国にとっては有利な材料です。岩政を外につり出して内田のサイドからクロスを上げれば、中央での空中戦は今野と長友が主役になります。こうして、韓国は空中戦でも自分たちの強いポイントを日本の弱いポイントにぶつけることに成功しています。

 この場面では、チ・ドンウォンがボールを失って攻撃が終了しており、最終的にはシュートに結びつきませんでした。しかし、この攻撃パターンが韓国の得意技であることは間違いありません。この試合でも何度も見られた場面です。パク・チソンがPKを獲得したシーンも、後方からのロングボールから生まれています。日本が韓国のロングボール戦術をどのように防ぐかは今度の試合でも興味深いところです。あるいは、韓国が戦術の幅を手に入れるために、まったく異なる戦術を採用してくるかどうかにも注目です。


<続く>


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