流通経済大・中野雄二監督「山村はチームで存在が別格」 (1/2)
大学サッカー界と日本の育成に横たわる課題
U−22クウェート代表をトータルスコア4−3で破り、アジア2次予選を突破したU−22日本代表。今回の2次予選メンバー22名のうち、最多となる3選手を輩出していたのはセレッソ大阪と流通経済大学の2チームだ。
そのメンバー発表翌日となる11日、U−22日本代表の関塚隆監督も視察に訪れた関東大学リーグの流通経済大学と専修大学の試合を取材してきた。取材したかったのは、U−22日本代表の3選手(増田卓也、比嘉祐介、山村和也)よりも流経大の中野雄二監督だ。
代表に1名も選手を送り出していないJリーグのクラブがある中、大学の単独チームが3名もの選手を輩出している現状は、流経大をはじめとする大学サッカー界にタレントが集まっていることを示している。しかし、それはあくまでも表面的な見方でしかない。
試合後の囲み取材の形ではあるが、中野監督と1対1のインタビュー形式のようなやりとりで、興味深い提言や大学サッカー界と日本の育成に横たわる課題を聞くことができた。一問一答式で掲載する。
■代表選手を輩出している責任
――壮絶な試合でした。(※前半1−4とリードされた流経大が後半に3点を決めて4−4の引き分けに終わる)
スコアだけ見れば壮絶ですけど、情けないですよね。五輪代表(U−22日本代表)に選ばれている選手が後ろに3人もいながら、前半で4失点したわけですから。
1点目は確かに専修の思い切りの良さが出た形。角度のないところから狙ったというのは素晴らしいと思いますけど、GKはニアサイドに決められているわけですし、2点目は山村が持ち出したところを奪われての失点。3点目は増田がパンチングする前に入れられた。
3失点にオリンピック代表の選手がすべて絡んでいるわけだから、コンディションは大変だと思いますけど、ピッチに立つ以上、「それでも五輪代表なのか」と一喝したいシーンの連続でした。流通経済大だけの問題ではなくて、そんな戦い方でクウェートに勝てるのかと。そこはすごく心配です。
――U−22日本代表の3選手のコンディションは低下していますか?
気が抜けているとかではないのですが、うちでもこの1週間で3試合やりましたし、その合間の月曜、火曜に代表の合宿に行っています。われわれが思っている以上に精神的な疲れがピークに来ているのかなとは思います。だから、明日(12日)はゆっくり休ませて、明後日から19日のクウェート戦に向けてじっくり調整をすれば、1週間後は逆にかなり良い状態で迎えられるのではないかなと思います。
――今後は、3選手が五輪代表で抜けてしまう試合が続きます
本音を言えば、今日しっかりと勝って2位グループと勝ち点4差を維持したまま、3人がいない状況を迎えたかったです。でも、残った選手がそこで力を出せないようなら、トータル的にリーグ戦というのは取れません。まあ、3人がいなくなるのは確かに大変ですけど、ケガとか出場停止でいないということもあるわけですから、そこはやりくりしなきゃいけないと思っています。
ただ、今日の前半の出来じゃ、「3人じゃなくてもいいかな」という気はします(笑)。比嘉はよく頑張っていたと思いますよ。後半もやられたかなというところで、体を張ってシュートブロックにいっていましたから。彼は本能的に負けず嫌いだから、疲れていてもああいうことができる選手。
後半のオフェンスに関しては、山村はやはり縦パスを良いタイミングで入れ出したから、ああいう、うちらしい得点が生まれたと思います。良いところ、悪いところの両方が出たと思いますけど、こういう経験をオリンピックのゲームで良い面だけを出してもらえればと。われわれとしても選手を輩出している責任がありますから。気持ちよくコンディションを調整して、19日、23日の試合を戦ってほしいと思います。
■若い選手は試合に出られなければ伸びない
――昨日(10日)、クウェート戦のメンバー発表の会見で落選した實藤友紀(川崎フロンターレ)のことを引き合いに出しながら、「日本はプロ入りしてから公式戦に出場できない若手選手が多く、そこが育成の課題ではないか」という質問を原さん(原博実氏/日本サッカー協会技術委員長)にしました。中野監督はその点についてどうお考えですか?
僕もそう思います。今回のメンバーで、3人選ばれているチームはプロでもないんですよね(※実際には、セレッソ大阪も清武弘嗣、山口螢、扇原貴宏の3名を送り出している)。そこで3人選ばれるということは名誉なことだし、同時に大学のゲームであっても公式戦をやっていくということが、選手が一番ものを考えたり、成長するわけだから。Jリーグも若手の育成をもう一度、抜本的に考え直していく必要があると思うんです。
例えばですけど、J2は先発に10代の選手を2名出さないといけないとか、J2の監督は日本人でなきゃいけないとか。どの方法にもメリット、デメリットがありますけど、日本の今の優秀なプラチナ世代だったり若い選手は、試合に出られなければ伸びない。
プロは勝利にこだわって当然なんですけど、外国人を連れてきて彼らを使う、それも悪くない。でも、J1とJ2は状況が違うわけだから、そういう工夫を協会やJリーグの組織全体で考えていかないと。自分たちのことばかり考えたら、逆に選手招集もままならなくなるだろうし、原点は日本のサッカーを強くするために、われわれは何をしていくべきなのかを議論していかなければいけないと思います。
――名古屋グランパスに入団した永井謙佑(福岡大卒)も含めて、昨年から五輪代表に占める大学生の数が多く、アジア大会では大学生主体のチームで優勝しています。だからといって、「大学サッカーすごい」で終わらせてはいけない。逆に今が育成環境や制度面の改革をするチャンスだと思うので、大学サッカー界のみならず、日本サッカー界で影響力を持つ中野監督としては具体的にどのような提言ができますか?
1つは(日本サッカー協会)代表部とJリーグの間では、具体的な調整を行っています。でも、今回これだけ五輪代表に大学生がかかわると分かっていながら、大学連盟と代表部の間で具体的なスケジュール調整というのはないわけです。トップダウンで落ちてくるだけ。多少、水曜日のゲームなんか、全国大会が懸かった試合の場合は配慮してくれて、山村たちはうちの試合に戻ってきましたけど。
・小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」(外部サイト) (2011/6/29)
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