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川崎が体験したアジアのサッカー(3/3)
ACLグループリーグ
2007年05月01日
川崎―全南 前半、先制ゴールを決めチームメートから祝福されるジュニーニョ(左端)=等々力【 共同 】
■Kリーグの緊張感のないスタジアム そして妥当なスコア
なぜこの程度のリーグしか持てない国に勝てないのだろうかと思わざるを得なかった。ACLの第3節を迎えた試合開始30分前の光陽フットボールスタジアムは、熱気を帯びた川崎サポーター陣営を除けば、ホーム全南サポーター側のゴール裏も含めて閑散としていた。戦いの雰囲気は全く出ていなかった。
前日に昼食を取るために入った定食屋で聞いてみた。
「明日の試合は行かれますか?」
店員は「チケットがあれば」と消極的だった。
同じく銀行でも尋ねてみた。
「仕事が終わらないですね」
チケットなどスタジアムに行けばいくらでも売られていたし、本当にチームを愛していれば仕事そっちのけで見に行くことも不可能ではない。しかしそこまでの熱気を期待するのが間違いだった。
光陽市内には“日本のチーム”との対戦を強調する広告が用意されており、なんとか観客を集めようと必死になっていることをうかがわせた。しかし閑古鳥は鳴きやまなかった。
川崎サポーターが当初陣取っていたコーナーフラッグの裏あたりは、地域的に多い反日的サポーターが座る可能性があったという。そのため、無用な衝突の発生を懸念した全南サイドの申し出により、ゴール裏へと移動することとなった。しかし蓋を開けてみればそれは取り越し苦労だった。
公式記録上は5703人の観客がスタジアムを埋めていたことになっているが、体感的に実数はその半分程度だったのではないかと思われる。当初川崎サポーターが占拠する予定だったスタンドは無人のままで、衝突は起こりようがなかった。1954年の初出場以来7度のワールドカップ出場記録を持ち、2002年にはベスト4に上り詰めたほどの実績を持つ韓国の国内リーグの代表クラブは、その程度の人気しかなかった。そして、全南というクラブも弱かった。
もちろんそれは仕方のないことでもあった。というのも、リーグ戦優勝クラブならまだしも、全南はカップ戦の優勝によってACLへの出場権を手にしたチームだったからである。今季も8節を終えた段階で1勝6分け1敗の10位と低迷しており、その実力がACLにもそのまま出てしまった形だと言える。
3点を追いかける試合終盤に攻勢に転じ、後半ロスタイムに1点を奪い返した姿からは意地が見えた。おそらくは全南というチームの今季のACLにおけるハイライトだったのだろうと思う。
■川崎がグループリーグ突破へ王手
アウエー光陽戦の後半ロスタイムの1失点を気にする向きもあったが、少なくとも前節の対戦を見る限り、両者の力関係やそれに基づく結果が等々力で逆転するとは考えにくかった。それほどまでに両者の力関係には差があった。ただし、試合は始まってみないと分からないものである。つまり、前節を終えて川崎が手にしていた得失点差2点のアドバンテージは、全南が先制した場合にないも同然となり、勇気づけられた全南が一気に攻勢に転じることは目に見えていた。彼らは1−0のスコアを2−0にできれば、対戦成績で五分に持ち込めるのである。グループリーグ敗退の危機から脱せるのである。
だからこそ、第4戦の前半26分のジュニーニョの先制点は、ACLグループFの行方を決定付けるものとなる。川崎が勝ち点3を奪われるのは、ここから2度ゴールを割られるという前提が必要だった。なおかつアウエーでの全南戦との合計で3点のリードを手にした川崎は、もし仮に2失点を喫して逆転負けをしたとしても、まだ勝ち点で並んだ際の当該チーム同士の成績において、1点差でリードを保てる楽な立場に立つこととなった。
そんな川崎有利の状況の中で、全南の攻撃力のなさが川崎を助けた。セットプレーではキム・ジンギュがストレート系のFKを壁にぶつけまくり、期待されたキム・チウも後半中央にポジションを変えるまではほぼ何もできない状況だった。
けが人が出ていたことが最大の理由なのかもしれなかったが、それにしても選手の組み合わせにも問題はあるし、外国人ストライカーの質にも違いがあった。いずれにしても全南の攻撃に怖さはなかった。ホ・ジョンム監督が守備出身だということももしかしたら影響しているのかもしれないが、全南の攻撃は整理されていなかった。
試合終盤の鄭大世の2ゴールは、観客10070人の大半を占めた川崎サポーターへのプレゼントとなった。そして、全南は戦意をなくした。
戦意をなくしたチームとの対戦で、心掛けなければならないことがある。後半ロスタイムに、ジュニーニョがマーカーから両足によるバックチャージを受ける場面があった。不幸中の幸いというか、スパイクが入り皮膚が切れたような外傷だけで済んだようだが、へたをしたら選手生命を脅かされる大けがも予想されるほどの汚いプレーだった。
これが国内リーグの同一ディビジョンのチーム同士の対戦であれば、ラフプレーに対する暗黙の抑止力が働くこととなるが、外国チームの対戦においては、日常的に顔を合わせることがないため、こうしたラフプレーが起きやすくなる。
この試合、川崎にとってはホームであり、無失点できれいに試合を終えるのも大事なことだった。しかし、それよりも勝負に負けない程度に力を抜くことも必要なのだと感じさせられる悪質タックルだった。関塚監督の言葉を借りれば、「そうした経験をすることが大事なんだ」、となるのかもしれないが。
いずれにしても、全南との2連戦で勝ち点6を手にした川崎が、Jリーグ勢では初めてのACLノックアウトラウンドへの進出に王手を掛けた。歴史に刻まれる可能性のある大一番は、5月9日。ゴールデンウイークの連戦を含めた7連戦の6試合目として開催される。相手は辛うじてグループリーグ突破の可能性を残すアレマ・マラン。関塚監督の選手起用も含めて、注目の一戦となりそうだ。
<了>
江藤高志/ETO Takashi
1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にフリーライターに。J2大分を足がかりにヒッチハイクで全国を取材行脚。J2太郎としてマニアなサポーターに知られる存在に。曲折を経て現在に至る
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