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西部謙司
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勇者の条件(1/2) 「犬の生活」 第12節 千葉2−1FC東京
2005年05月16日
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| ジェフいぬち【 画:西部謙司 】 |
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■気っ風のいいサッカー
いきなりだが、FC東京は好きなチームのひとつだ(もちろん2番目以下だが)。このチームには東京らしい、江戸っ子らしい気っ風(きっぷ)のよさがある。原博実監督のパーソナリティーによるものだと思う。明るい人柄は記者会見などでも分かるが、そういうパーソナリテイーとはまた別の、好きなサッカーへの侠気のようなものを感じるのだ。FC東京はボールを持ったらストレートに攻めていく。切り替えの早い、思い切りのいい攻撃だ。半面、こういう戦法のチームはリスクも負う。攻めるチームは、間違いなく攻められるチームだからだ。怖がっていたら、このサッカーはできない。
先手をとったのは千葉だった。「立ち上がりはジェフがくるだろうが、こちらも負けないようにスペースへ走れ」という原監督の指示を受け、FC東京は果敢に攻めてきた。今日の阿部勇樹は栗澤僚一をマーク、つまり栗澤はFC東京の要注意人物だったわけだが、その栗澤が巧みなコントロールからゴール右上隅をかすめるようなシュートを放つ。
その直後の17分、千葉は羽生直剛が左サイドで“クライフ・ターン”、縦に抜け出してロークロス、ゴール前2メートルで混戦になったところをハースが右足をひとふりして叩き込んだ。羽生の粘り強いドリブルが先制点を生んだ。
21分、左に出た栗澤のハイクロスがファーポストへ、ストヤノフがヘディングでクリアしようとしたがぎりぎりで触れず、近藤祐介はまったくのフリー。しかし、近藤のシュートは枠をとらえきれず、千葉としては命拾いだった。両チームとも、ボールを奪ったら思い切ってカウンターを仕掛ける。ミスが出ればカウンターのカウンターになって大きなピンチになるのだが、どちらも勇敢に前に出て行った。
■マリオ・“クライフ”・ハース
そんな中、千葉は前線のハースのキープ力とパスが効いていて、徐々にゲームを支配していく。以前、ハースをアラン・シアラーにたとえたことがあった。実利的なプレーぶりと、どことなく漂うオッサン臭さが似ていると思ったわけだが、タイプとしては、純粋なストライカーであるシアラーとは似ていない。ハースは「攻め残るCF(センターフォワード)」で、守備のときは最前線に残っているが、攻撃態勢になるとまっすぐにペナルティーエリアへは入っていかず、ハーフラインとペナルティーエリアの間のスペースに止まり、そこでパスを受ける。そこからスルーパス、クロス、パスワークの起点となる。その間、押し上げの早い味方はどんどんハースを追い越していく。つまり、彼は追い越されるFWでもある。プレーの格好はまるで似ていないが、タイプとしてはヨハン・クライフ型だ。
70年代のスーパースター、クライフのポジションはCFだった。しかし、常に最前線にいるわけではなく、やはり攻め残るタイプで味方を使うのがうまかった。当時、トータルフットボールの新語を冠せられたオランダは、ボール奪うと有利な体勢にいる選手がポジションに関係なく攻撃を仕掛けるところに特徴があり、非常にダイナミックなサッカーだったのだが、その中で一番走らないのがクライフであった。その代わりクライフは、ある意味で無秩序に攻め込んでいく味方を的確に整理する能力があった。パスで加速させたり、ちょっとしたキープでブレーキをかけたり、攻めの方向を変えて人数を増やしたりといった操作が上手かった。中距離パスの種類と精度が抜群で、特に左サイドから通すクロスが得意技であった。
29分、左サイドに開いた坂本将貴へパスが出る。坂本がこれをスルーすると、タッチラインいっぱいに開いたハースが受けた。ジャーンと対峙(たいじ)しながら、ハースは中の状況を見て右足でライナー性のクロスを蹴り、そこに巻誠一郎が躍り込むようにジャンプヘッド、鮮やかなシュートを決めた。高い打点でボールをとらえる巻の特徴を考え、ニアへ通したクロスはスピードも高さもどんぴしゃ。うーむ、やっぱりクライフ風だよな。比較の対象ではないかもしれんが。
<続く>
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