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西部謙司 スポーツナビ

「西部謙司の眼」
オシム監督会心の試合(市原 3−0 横浜M)

2004年03月22日

市原―横浜M 前半、横浜M・奥(右)と競り合う市原・阿部=市原
市原―横浜M 前半、横浜M・奥(右)と競り合う市原・阿部=市原【 共同 】


■昨季と同じプレーを忠実にこなす市原


「今日は何も聞かないでくださいね」で、始まったオシム監督の記者会見。「私がここへ来てから、今日が一番いい試合だった」と、続けた。昨季チャンピオンの横浜をホームに迎えて3−0。市原の完勝だった。

 底冷えのする市原臨海競技場は雨。序盤からペースをつかんだ市原は30分に佐藤勇人がボレーシュートで先制。後半開始早々には、マルキーニョスが坂本将貴のクロスをヘディングでたたき込んで2−0。その後も、横浜の攻撃を寸断してはカウンターアタックを浴びせ、80分にサンドロがPKを決めて3−0。横浜も2、3度の決定機はあったが、GK櫛野亮の好セーブでシャットアウトした。

 オシム監督が「就任以来、最高の試合」というほどの出来だったかどうかは分からないが、確かに市原の完勝であった。結果については、「3−0は妥当」と横浜・岡田武史監督も認めている。ただし、市原のプレーの何かが目覚ましく良かったわけではない。昨季やっていたことを、今季も忠実にやっていただけだ。2タッチのパス回し、ピッチの横幅を大きく使ったサイドチェンジ、パスを出した後の距離の長いランニングとそれによって出来るスペースの生かし方、忠実なマンマークと攻守の切り替え早さ……。どれも、昨季披露したものと変わりはない。

 では、横浜のプレーが悪かったのか。まず、コンディションはあまり良さそうには見えなかった。岡田監督は「そんなに悪くないと思う。ジェフの当たりに押された。ここでやるといつもこういう試合になる。今季はもうここでの試合はないのでホッとしている(笑)」と煙に巻いたが、1対1で市原の選手に振り切られたり、競り負けたりする場面が目立った。「奥と遠藤のコンディションが悪く、遅攻が攻めにならなかったかもしれない」という方が本音に近いのではないか。


■「自分たちのプレー」ができなければ、たたきつぶされる


 もう1点挙げるなら、横浜の攻撃には「深さ」がなかった。ディフェンスラインの裏へ走り込む動きが少なく、ミリノビッチを中心とした市原の3バックを押し下げることができなかった。そのため、市原の守備陣形はコンパクトな状態が保たれており、スペースのない横浜の足下から足下へのパスはことごとく狙い撃ちにされた。攻撃に深みを作れるタイプであるFW坂田大輔を69分に投入したが、流れを変えるには至らず。コンディションと攻撃の深さの欠如、この2点が横浜のプレーで気になった。しかし、それが致命的な敗因というほどでもなかったと思う。横浜の出来は確かに良かったとはいえないが、ひどかったというほどでもない。

 市原はいつもどおりのサッカーをやった。横浜はベストとはいえないが最悪ともいえない出来だった。そして、試合内容は「マリノスにプレーさせなかった」(オシム監督)というとおり、終始市原がペースを握った。ここでいう市原のペースとは、一方的にボールを支配するような展開ではない。相手にボールを回させておいてカットし、一気にカウンターを仕掛けていく展開、それが続けば市原のペースだといえる。その意味ではまさにパーフェクトな試合だった。この日は、そういう市原のスタイルに横浜がすっぽりはまり込んでしまった試合だったといえる。

「ウチは相手にプレーさせないことで成り立っているチームだが、自分たちもプレーできるようになりたいものだ」と、オシム監督は言った。が、現在の市原のプレースタイルも十分に威力のあるものだ。少なくとも、横浜のように「自分たちでプレー」できる陣容とスタイルを持ったチームが相手でも、それがベストの状態でなければ完膚無きまでにたたきつぶすこともできる。つまり、Jリーグはますます油断のならない状況になっているということだろう。


<この項、了>
■西部謙司(にしべ けんじ)
1962年9月27日、東京生まれ。少年期を台東区入谷というサッカー不毛の地で過ごすが、小学校6年時にテレビでベッケンバウアーを見て感化される。以来、サッカー一筋26年、早稲田大学教育学部を卒業し、商事会社に就職するも3年で退社。サッカー専門誌の編集記者となる。95〜98年までフランスのパリに在住し、欧州サッカーを堪能。主な著作に『Eat foot おいしいサッカー生活』(双葉社)、『サッカーがウマくなる!かもしれない本』(出版芸術社)、『スローフット なぜ人は、サッカーを愛するのか』(双葉社)がある


変わった浦和、変わらぬ力で同点に(横浜M 1−1 浦和)04/03/15(西部)



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