グレート・エスケープ! (1/2)
J1第34節 千葉 4−2 FC東京
「あ、大宮が勝ってる」
え? 隣席の記者がつぶやいたのが聞こえたが、目の前のジェフ千葉は0−2で負けている。ジュビロ磐田が負けていてもさして状況は変わらない、と思っていたら……。
「あっ、うわ、入ったー」
青木良太のスライディングタックルのこぼれ球、谷澤達也が拾ってすぐに前線へ。DFの裏へ落とす典型的なダイレクトプレー、その縦パス1本に反応した新居辰基がフリーで抜けてシュート。FC東京のGK塩田仁史の手に当たったが、ボールが“頑張ってくれて”ゴールイン。この一発で、スタジアムの雰囲気が変わったように思えた。
「おいっ、ヴェルディは?」
「あ、負けてます。磐田もそのまま」
現金なもので、それまで気にもとめていなかった他会場の様子が心配になってくる。
先制の3分後に谷澤、その3分後にレイナウド! 85分谷澤、4−2だ。もうもらった。
「ヴェルディは?」
「もう終わるはずです」
「磐田は?」
「そのままです」
巻誠一郎はセンターバックとなってハイクロスを跳ね返している。ロスタイム表示は4分。もう終われ、全部終われ。フクアリは終わった。スクリーンに映し出された東京ヴェルディの試合は川崎フロンターレの2点目が入っていて、ロスタイム1分の表示。これも終わりだ。磐田は? え、終わったの。
降格危機からの大脱出。ミッション・コンプリートであった。
■自動残留
自動残留。そんな言い方はしないのかもしれないが、自動降格という言葉が頭から離れなかったので、入れ替え戦にも回らずにすむ15位で自動残留となったのは信じられなかった。それには自力だけでは足りず、他力が必要だった。自力+他力、その両方がいっぺんに起きた。サッカーは分からない。
後半途中までの試合の流れからすると、千葉が4点も取るとは到底思えなかった。実際に4ゴールを目の当たりにしても、半ば偶然にも思える。ただ、谷澤の2点目が入った時点で、逆転の予感でいっぱいだったのも確かなのだ。
スタメンはサプライズがあった。まず、GKが替わっている。岡本昌弘ではなく、櫛野亮が今季リーグ初スタメン。そしてキャプテンの下村東美と谷澤達也がベンチスタートだった。
「もし負けていたら、なぜキャプテンを外したのかと言われただろう」(千葉、アレックス・ミラー監督)
ミラー監督によると、下村はここ数試合のパフォーマンスが落ちていたからで、谷澤に関しても調子がよくないと判断したそうだ。選手起用は監督の専権事項であり、外部からはその理由がよく分からないことも多い。ただ、ミラー監督の起用法は不可解とまでは言わないが、首をかしげるようなケースが何回かあった。
前半の出来は今ひとつ。後半にも攻撃に工夫がなく、工藤浩平が放り込んだハイクロスが難なく跳ね返され、そのままカウンターで長友佑都に2点目を食らっている。流れが変わったのはミシェウに代わって新居、深井正樹から谷澤に交代してからだ。それでもFC東京にはトドメを刺すチャンスがあった。戸田和幸のサイドチェンジがカットされ、カボレがシュートを打ったが枠を外した。これが決まっていたら、すべて終わっていただろう。
しかし、千葉は唐突にゴールを連取する。谷澤のダイレクトプレーから新居で1点、青木のハイクロスを巻が胸で落としたところを谷澤が冷静に打ち抜いて2点、レイナウドが自らゲットしたPKを決めて3点(逆転)。残り5分、どカウンターから谷澤が4点目。谷澤はハーフラインでFC東京のディフェンスラインの裏に入り、そのまま独走してクールに決めた。
点のとり方が全部違う。交代出場の新居、谷澤の活躍は効いていたし、あの時間帯で足が止まらなかったのは、勝利の要因の1つだろう。ただ、突然のゴールラッシュを1つや2つの理由で説明するのは無理だと思う。サポーターの応援や、相手の崩れ方も含めて、34節分のあれやこれやがまぜこぜになり、化学反応でも起こしたような4ゴールに思えた。



