天皇杯の価値を高めたファイナル=漫遊記2011 (1/2)
決勝 京都サンガF.C. 2−4 FC東京
■見どころは「J2クラブ同士の対戦」だけではない
「お前らJ2! お前らJ2!」
元日の国立競技場。選手入場直前、このようなコールがスタンドにこだました。「お前ら」とは京都サンガF.C.のサポーター。そして声の主はFC東京サポーターである。当然ながら京都のゴール裏からは反発のブーイングが沸き起こる。思えば2010年のJ1最終節、FC東京をJ2降格に引きずり下ろしたのは、すでに降格が決まっていた京都であった。くしくも「都(みやこ)対決」となった、元日・国立の顔合わせ。東京と京都との比較文化論については、さまざまなジャンルで語り尽くされた感があるが、ようやくJリーグでも両者の間に「因縁」が生まれたことだけは間違いない。ちなみに天皇杯での京都とFC東京との顔合わせは、意外にも今回が初めてとなる。
さて、巷間(こうかん)では「史上初のJ2クラブ同士の対戦」という部分ばかりが強調されている、今回の決勝。確かに、トップリーグ所属以外のチームが決勝に進出すること自体、国内のカップ戦では珍しい。手元のプレスキットによれば「2部リーグ(相当)のチームによる決勝進出はわずか4チーム」で、優勝したのは「日本鋼管とヤマハ発動機の2チーム」のみ。今回は初の2部同士の対戦となるので、29年ぶり3チーム目の「2部リーグチームのカップウィナー」が誕生することになる。
もうひとつ注目されるのが、京都の大木武監督とFC東京の大熊清監督との「因縁」。いずれも日本代表のスタッフとして、当時の岡田武史監督をサポートする「戦友」であった。オール・ジャパニーズで挑んだ南アフリカでのワールドカップ。そのコーチングスタッフ同士が、元日・国立の舞台で顔を合わせるというのも実に味わい深い。なお、大熊監督は今季限りでの勇退が決まっており、勝っても負けても、これがFC東京での最後のさい配となる。
両チームのスターティングイレブンにも、両監督の志向の違いが見てとれる。FC東京は準決勝と同じメンバーというより、キャプテンの今野泰幸が代表から戻って来た4回戦以降、ずっとスタメン固定で戦っている。対する京都は、守備の中心選手である秋本倫孝が出場停止のため、準決勝でサイドバックに起用していた安藤淳をセンターに、守備的MFが本職の加藤弘堅を右サイドに配した(大木監督いわく「ウチはどこでもやらせるから」)。だが、それ以上に特筆すべきは、スタメンの平均年齢23.9歳という若さである(FC東京は26.8歳)。こうして見ると「J2クラブ同士の対戦」というフレーズに、何らネガティブなニュアンスは感じられない。むしろ今大会の決勝の顔合わせは、野次馬的には実に魅力的であると言えよう。
■激しい点の奪い合いとなった前半戦
試合開始早々、FC東京はルーカス、石川直宏、そして谷澤達也が立て続けにシュートを放つ。序盤からエンジン全開で飛ばしてくるのは、今大会での彼らの一貫した戦い方だ。この日も、前半だけでシュート12本を放ち、7つのCKを獲得している。対する京都は相手の攻撃をしっかり受け止めて、すぐさま反撃に転じ、ショートパスをつなぎながらチャンスをうかがう。いかにも決勝戦というような、相手の様子をうかがうような雰囲気はみじんも見られない。どちらもそれぞれの持ち味を出しながら、果敢にゴールを目指す。
先制したのは京都。前半13分、ハーフウエーライン付近でボールを受けたドゥトラが、斜め左方向にドリブルを仕掛ける。これに徳永悠平と今野が対応。いったんは徳永がカットしたが、ボールは中央を走る中山博貴にわたり、中山は飛び込んでくるGK権田修一の動きを冷静に見切ってネットを揺らした。今大会、初めて先制を許したFC東京であったが、すぐさま反撃を開始。失点からわずか2分後、左ショートコーナーから石川が絶妙なクロスを上げ、後方から飛び込んできた今野がヘディングで同点ゴールを決めた。
序盤からのゴールの応酬に、スタンドは大いに盛り上がる。その熱気に水を差したのが、14時28分に発生したマグニチュード7.0の地震であった。国立競技場のスタンドは1分以上も揺れ続けたが、両チームの選手は構わずプレーを続行。西村雄一主審も試合を止める様子はない。結果として大事には至らなかったものの、昨年の震災の記憶が生々しいだけに、いったんゲームを止めるという判断もあってよかったように思う。
地震発生から10分後、観衆はさらなる衝撃を受けることになる。FC東京のFKのチャンスから、石川がちょんと前に出し、森重真人が右足を一閃。ボールは急速に落下しながらゴールに吸い込まれてゆく。逆転に成功したFC東京は、その後も積極的にゴールを目指し、42分には追加点。京都のゴールキックを高橋秀人がヘディングでクリアし、前線のルーカスが猛ダッシュして右足インサイドで京都ゴールに巧みに流し込む。これで3−1。激しい点の取り合いとなった前半は、FC東京の2点リードでハーフタイムを迎えることとなった。
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