コラム 浦和レッズ
構成:スポーツナビ
スポーツナビ

さいたまダービーを掘り下げる (1/2)
浦和、大宮、ライター対談

2010年7月29日(木)
浦和の島崎氏(右)、大宮の土地氏がさいたまダービーの思い出を語る
浦和の島崎氏(右)、大宮の土地氏がさいたまダービーの思い出を語る【スポーツナビ】

 7月31日に、浦和レッズと大宮アルディージャによるさいたまダービーがさいたまスタジアムで行われる。大宮がJ1に昇格した2005年以降の両チームの対戦成績は、Jでの先輩でもある浦和が8勝3分け3敗(ナビスコカップ、天皇杯を含む)と大きく勝ち越しているが、ここ3年のリーグ戦に限ると、逆に大宮が2勝3分け1敗と勝ち越しており、ライバル心をむき出しに挑む大宮が、強豪・浦和を上回る。この結果は、まさにダービーならではと言えるだろう。現在は浦和が6位、大宮が17位と、両チーム共に不本意な順位に甘んじているが、それもダービーにおいては関係ない。互いの意地と誇りを懸けて、正面からぶつかり合う。これがダービーの醍醐味(だいごみ)だ。
 そこで今季初のダービーを前に、両チームを代表するライター2人にライバル対決について語ってもらった。前半は過去のさいたまダービーについて。浦和、大宮にとってのダービーの位置付け、そして記憶に残る名勝負……。さいたまダービーをディープに掘り下げる。

浦和レッズ:島崎英純
大宮アルディージャ:土地将靖

■大宮と浦和ではダービーの位置付けが違う

さいたまダービーでもっとも印象的な選手として挙げられたのは桜井直人
さいたまダービーでもっとも印象的な選手として挙げられたのは桜井直人【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

――大宮と浦和では、浦和の方がJリーグでの実績で上回っていますが、近年のダービーの対戦成績ではほぼ互角となっています。それはなぜでしょうか?

土地 大宮の選手、スタッフ、サポーターにとって、ダービーはシーズンの中でのメーンイベントという位置付けがありますね。だから気持ちが入りますし、それが要因としてあるんじゃないでしょうか。

島崎 浦和を負かすことによって現状を肯定させようとか、いい状態を継続させたいとか、レッズの存在がそういうモチベーションの1つになっているのかもしれません。今のレッズの成績は褒められるものじゃないですが、相手にとってはレッズを負かすことは1つのステータスというか。そういう位置付けになっているんですかね。

土地 ほかのクラブとの位置付けは分からないですが、浦和はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で優勝して、クラブワールドカップ(W杯)で3位に入って、世界に出たという意味ではパイオニア的なクラブです。Jでもトップに位置するクラブなので、ほかのクラブからすれば、その浦和を“食う”ことによって、というのはあると思います。でも、大宮はそれとは関係ないんですよね。浦和がトップであろうが下位であろうが、実力に関係なく同じエリアにあるクラブ。だから絶対に負けられない。
 浦和がまず誕生して、レッズが県内、特に県南ではサッカー=浦和レッズでずっと来たところに、アルディージャがJに入ったわけです。わざわざ敵の中に入ってきた感覚。もともと前身のNTT関東サッカー部としては県南にあったチームなので、入ったというのは正しい表現ではないですが、その中にあえて飛び込んだ。レッズのサポーターが多い中で大宮アルディージャというチームが立ち上がった。だからこそ、アルディージャを応援しているサポーターは気合が入りますよね。今は同じさいたま市ですから、同じ市内にあるクラブには負けたくないと。

――チームとしてのアイデンティティーの証明のようなものですね

土地 そう、本当にそうです。

島崎 本当におこがましいんですけど、レッズ側にはそういうのがあまりないように感じるんですよね(笑)。そうなる1つの理由として、大宮が後発なのは間違いないんですけど、先発であることの誇りが邪魔しているのかもしれません。後発を認めないというような。
 僕がこの仕事をする前、NTT関東がJリーグに準加盟して、来年度からJ2に参戦するというころのことです。駒場でレッズとフレンドリーマッチをやったんですよ。レッズからすると小野伸二のデビュー戦でした。僕はそれを見に行ったんですけど、和気あいあいとしていましたね。つまり、新しくできたライバルチームというよりは、「ようこそ、よろしく」というような雰囲気がレッズのサポーターにあって、それが今でも根底にあるような気がします。
 だから、大宮とレッズではダービーの位置付けが違いますよね。近年の成績を見ると、そのモチベーションが結果に表れているんじゃないかという気がしますね。

■さいたまダービーをミラノダービーのように

スタジアムについて持論を展開する島崎氏
スタジアムについて持論を展開する島崎氏【スポーツナビ】

――サポーターの意識はよく分かりました。選手もそういう意識なのでしょうか?

土地 05年か06年のころに、新聞紙上でダービーに関する両チームのいろいろなコメントが載ったんですが、浦和の誰かが「アルディージャ戦もリーグ戦の1つだ」というようなコメントが出たんです。それに(藤本)主税がすごく反応しまして、「あれ、本当に言ってたの?」っていうことがありました。大宮は選手もけっこう意識していますよ。

島崎 僕は当時、『サッカーダイジェスト』の記者で、ダービー特集をやっていたんですよ。もちろん、さいたまダービーも取材していました。「1つの試合でしかない」というのは世間向けの1つの言葉でもあるんですが、それが本音でしたね。むしろ、鹿島とかとやる方がライバル意識があって、それで大宮に負けているのがふがいないというか、自分たちでモチベーションを高めないで、負けているのは情けないですね。

 僕はこのダービーに対して、一番強いこだわりを態度でも見せていたのは桜井(直人)君(元浦和で05年から大宮でプレー)だと思いますね。彼以外でさいたまダービーの代表的な選手は考えられない。彼の場合は個人的なものがあったから余計に勝ちたい思いが強かったし、しかも点も取っていますから。だから、さいたまダービーといったら僕は桜井直人だと思うんですよ。
 片やレッズにはそういうタイプの選手がいないんですけど、彼は盛り上げるという意味でも尽力してくれたと思うし、レッズファンはさすがに桜井に点を取られたときはそうとう悔しがっていましたからね。2点取っているんですよね。今は、なぜかレッズで働いていますが(笑)

土地 彼の場合はやはり浦和が好きという気持ちの裏返しだと思いますね。

島崎 そうでしょうね。好きだからこそ、負かしたい思いも強いし、自分の人生に照らし合わせると、レッズと大宮は彼にとってかけがえのないものだったんでしょうね。

 大宮の事情も承知していますが、やっぱりNACK5スタジアムの方がレッズの選手は嫌だと言っていましたね。さいたまスタジアムだと大宮のホームでも大宮の声援が聞こえないと言っていました。今までNACK5では1回しかやっていないですよね。興行の問題がありますが、ダービーの価値を高めるという意味ではそういうのも舞台装置なのかなと思いますね。
 ほかのダービーとさいたまダービーの違いは、同じ地域のダービーなんですよね。世界のダービーで言えば、マンチェスターダービーやミラノダービーのような同じ都市のダービーですよね。これって特別で貴重なものじゃないですか。この点に関しては、僕らメディアも盛り上げないといけない要素なのかなと思いますね。

土地 たぶんまだ歴史が浅いんですよね。大宮がトップカテゴリーでプレーするのは今年が6年目でしょ。例えばミラノダービーにしろ、ずっとそうじゃないにしても、トップで両チームが争うという局面もあるわけです。かといって差がついてやるときもある。そういうのが積み重なって、それこそお父さんがあのときはこうだったと子供に話すようなことが出てくるようになると、日本のサッカー界でもスペシャルなものになってくるのかなと思いますね。

島崎 同じスタジアムをホームにしているダービーは、探せばあるでしょうけど、僕の記憶だとミラノくらいしかないんですよね。いまは1部と2部なので試合がないですが、ミュンヘンのアリアンツ・アレナなんかは、バイエルンが使うときはライトでスタジアムが赤くなって、1860ミュンヘンのときは青くなるんですよね。さいたまスタジアムはゲートは色分けしていますけど、そのときのホームによって全体の色を変えたりはしないじゃないですか。そのへんをさいたまスタジアムと協力してできないか。大宮のホームだったら全部オレンジにしてしまえばいい。プレーする側だけじゃなくて、クラブやメディアにもそういう努力が必要なんじゃないかなと思いますね。

 <続く>


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