コラム 浦和レッズ
島崎英純
スポーツナビ

レッズの今後に見いだした大いなる希望 (1/2)
ライター島崎のレッズの楽しみ方

2010年7月23日(金)

■普通の若者のスピラノさん

フィンケさんの慧眼(けいがん)には本当に感服いたしました
フィンケさんの慧眼(けいがん)には本当に感服いたしました【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

 約2カ月近くのごぶさたでございます。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
 ついにJリーグが再開されました。あっ、ここで毎度毎度申し上げますが、今連載は浦和レッズに特化したコラムでございます。なので、今回初めてご覧になられた方はご了承下さいね。かなりレッズに肩入れしたユルい文体ですから。

 さてさて、浦和レッズのリーグ再開初戦は第13節、ガンバ大阪のホーム・万博記念競技場での試合でした。レッズは後半ロスタイムにエジ(エジミウソン)のゴールで追いついたものの、その約20秒後にガチャピン、もとい遠藤保仁選手のミドル弾に沈むという(今度、遠藤選手とガチャピンのコラボグッズが発売されるそうです)壮絶な展開で2−3、ショッキングな敗戦を受け入れざるを得ませんでした。正直わたし、そのダメージから抜け切れておりません。それでも時は流れます。なので、ここは一念発起して、レッズのチーム状態が不穏にもかかわらず、楽観的、享楽的に本コラムを展開しますよ。

 ここのところ、ちまたでは南アフリカでのワールドカップ(W杯)が大変盛り上がったようですね。優勝候補のスペイン代表が見事にW杯初優勝を果たし、われらが日本代表も堂々と決勝トーナメントに進出し、日本国内は熱狂に包まれたとか。
「とか」? 
 なぜこんな他人事のような言動かと申しますと、その日本代表が南アフリカの地で躍進していたとき、わたしはなぜかヨーロッパにいたのでございます。そう、その時期はレッズが中欧のオーストリアで夏季キャンプを実施し、わたしもその取材を行っていたのです。
 そこで今回はまず、わが愛しのスピラノさん(スピラノビッチ)とカンバセーションしてみましたよ。あっ、これもまた毎度毎度の説明になりますが、今連載ではレッズの選手名表記を、すべてわたしが実際に本人に呼称しているもので記しますからね。あしからず。

わたし「ハーイ、スピラノさん。ハウ・アー・ユー?」
スピラノ「うん、元気」

 うーん、スピラノさん、若干シャイな方です。あやしい日本人が寄ってきて、警戒心がありありです。

わたし「今日のスピラノさんのプレーは良かったねぇ。今まで見た中で一番良かったよ」
スピラノ「そう? ありがとう」
わたし「ケガも治ったようだし、これからが実力の見せどころだねぇ」
スピラノ「ご期待に沿えるよう、頑張ります」

 なんて予定調和な会話。いわゆる撃沈というやつです。しかもスピラノさん、僕とそんな会話を交わした数日後のトレーニングマッチで足首をねんざして、また半月程度戦線離脱してしまいました。残念無念。
 でもね、普段のスピラノさんは決して無愛想ではなく、その年齢なりに(1988年6月27日生まれの22歳)明るく朗らかな青年らしいですよ。チーム内ではヴィリーことウィルフリード・サヌとドイツ語で語り合い、いつも笑い転げています。ちなみに、この前はこんなことを話していたそうです。

スピラノ「(清水エスパルスと対戦した後)おいヴィリー、ヨンセンさん(清水のFW、フローデ・ヨンセンのことです)がヒデーんだよ」
ヴィリー「どうしたの?」
スピラノ「あの人、おれが前に出てブロックすると、後ろから股間に手を入れてきて、イチモツをわしづかみするんだよ。こうだぞ、こう!(身振り手振りで説明中)」
ヴィリー「それは災難だったねぇ。イチモツには気をつけなさいよ」

 ね、普通の若者の会話でしょ。

■フィンケさんを“純正サウニスト”に認定しますよ

 はてさて、話は変わりまして、少しW杯の話をしましょうかね。今回、レッズがキャンプを張ったオーストリアと日本の時差は、サマータイムで7時間あります。一方、オーストリアと南アフリカは時差がありません。なので、キャンプ中のチームはリアルタイムでW杯の試合を観戦できました。例えば1日3試合が組まれるスケジュールでは第1試合が現地時間の13時半開始、第2試合が16時、そして第3試合が20時半というのが通例でした。レッズのチームスタッフや選手たちは練習の合間に、または夕食後にゆっくりと試合を観戦できたのです。
 そこで大会開催直後に、(フォルカー)フィンケさん(監督)とW杯の話題を話しておきましたよ。フィンケさんは当時、こんな予想を立てておりました。
「ワシとしてはユーロ(欧州選手権)2008で素晴らしいサッカーを展開したスペイン代表に優勝してほしいと思っとる。ただW杯で優勝することはそんなに簡単なことじゃないからのぉ。やはりブラジル、アルゼンチンあたりの南米の優勝経験国も優勝候補に入るじゃろう。また今回のオランダは個人能力の高い選手がそろっておるから手強いはずじゃ」
 あれ? フィンケさんの母国であるドイツ代表の話題が出てこない。ドイツ代表はどうなんですか?
「もちろん期待しておる。まあバラックが負傷して大会に参加できないのは残念じゃが、それに代わってエジルやミュラーら若手に活躍のチャンスが来たわけじゃから、今はそこに期待だな」
 大会が終了した今振り返ると、フィンケさんはちゃんとドイツ代表の潜在的な強さを予見しているんですねぇ。さすがです。そこでわたし、調子に乗って独自の優勝予想もしちゃいましたよ。

わたし「フランス代表はどうです? 彼らは予選の成績があまり良くなくて下馬評も低いんですが、注目されていないからこそ本番では気楽に戦えて、実力を発揮できる可能性も……。彼らは優勝経験国でもありますし」
フィンケさん「フランス? フランスはもう、メンタル的に死んでいる(ピシャリ!)」

“アタタタタタター!”、“ひでぶ”。秘孔炸裂! 思わず、フィンケさんが北斗神拳の使い手かと思っちゃいました。まあフィンケさんの容ぼうはケンシロウではなく、かぎりなくラオウに近いんですが……(『北斗の拳』をご存じない方、すみません)。しかしフィンケさん、フランス代表の没落もしっかりと予見なさるとは、感服いたしました。

 さて、そんな中、フィンケさんとの話は思わぬ話題へと脱線していきます。実は今回のレッズの夏季キャンプ地、バード・ラドカースブルクという田舎町は温泉保養地として有名でして、いわゆるテルメ(日本流に言いますと健康ランド)があり、温泉プールやサウナなどを楽しむ方が連日各地方から詰め掛けるリゾートのメッカなのです。そしてわたしは何を隠そう、真摯(しんし)なサウニストでありまして(筆者注・サウニストとは筆者が勝手に作り上げた造語で、サウナを愛する人の総称です)、わたしの同志にはハセ(長谷部誠/ボルフスブルク)などもおります。なのでわたし、バード・ラドカースブルクに着いてすぐに、そのテルメに行ってしまいました。そんなとき、フィンケさんがふと言いました。

フィンケさん「ところで君、ここはサウナが有名な場所というのは知っているかい?」
わたし「もちろんですとも。早速、あなたのホテルの横にある大きなテルメに行ってきましたもの」
フィンケさん「もうあそこに行ったのか! おれも気になっていたのに! うむ、そこはどんなところだった? プールは大きいのか? サウナの数は?」

 キター! サウニスト発見! そしてフィンケさんはおもむろにわたしとの会話を中断し「ちょっと用事を思い出した」と言ってホテルを飛び出し、自転車を漕いでどこかに出かけてしまいました。そして数分後、息を切らして戻ってきたフィンケさんは満面の笑顔を向けて、「君、そのテルメのパンフレットをもらってきたよ。いやー、大きくて奇麗なテルメだねぇ。楽しみ、楽しみ」と言って去って行きました。さすがの行動力です。
 ちなみにフィンケさんはキャンプ中、毎朝必ずサウナに入って汗を流していたそうです。その際、ロウリュウ(ドイツ語ではアウフグースというそうです)というサウナストーブにアロマを含んだ水をかけることで蒸気を発生させ、それをタオルで仰ぐパフォーマンスを毎回見せていたとか。うむ、認定しました。フィンケさんは純正のサウニストです!

 <続く>


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