吉か凶か、浦和の「柏木+山田直+阿部」プラン (1/2)
発動された4−1−2−3システム
■前半戦の浦和を振り返る
フォルカー・フィンケ監督体制2年目のシーズンとなった浦和レッズは、Jリーグ前半戦を首位・清水エスパルスと勝ち点5差の4位で終えた(※7月14日にAFCチャンピオンズリーグ出場クラブ未試合分の第11節が開催され、その結果、浦和は5位になった)。そして、南アフリカ・ワールドカップ(W杯)開催中の6月下旬にはオーストリアで夏季キャンプを実施し、リーグ後半戦の戦いに備えた。
前半戦の浦和は昨季に比べてチーム戦術が整備され、内容面でも少なからず向上の兆しを見せていた。当初は守備の要だった田中マルクス闘莉王(→名古屋グランパス)と契約を更新せず、ディフェンス陣の層の薄さが懸念されたが、その代わりを担ったチーム最年長の山田暢久がバックライン中央に鎮座し、守備面ではむしろ昨季よりも連係やビルドアップで進化を果たした。
またフィンケ監督の指針である“コンビネーションサッカー”の幹となる中盤は、絶対的なキーマンである山田直輝が1月の日本代表・アジアカップ最終予選のイエメン戦で腓骨骨折を負い長期離脱を余儀なくされるアクシデントはあったものの、今季サンフレッチェ広島から移籍加入した柏木陽介の存在によって人選のリニューアルが図られ、組織による攻撃構築に一層の磨きがかけられた。
ただし、問題は得点力で、圧倒的なボールポゼッション率で相手を凌駕(りょうが)する半面、ゴールはそれほど積み上げられず、得点は12試合で18得点(リーグ5位タイ)で、ゲームを支配しながら下位のチームに追いつかれたり、試合終了間際に拮抗(きっこう)した実力の相手に決勝点をマークされるような試合もあった。
■後半戦のテーマは“連動”
そんな中、リーグ前半戦の結果を踏まえた上で実施されたオーストリアキャンプでの狙いは、徹底した“連動”の反復だった。
今回、浦和から南アフリカW杯の日本代表メンバーに選出された選手は阿部勇樹1人だけだった。よってチーム戦術を熟成させる際に、ほぼ選手全員がそろっていた点は好材料だった。そしてフィンケ監督は、リーグ前半戦の、ボールポゼッションが高く、チャンスも作りながらゴールできない要因は連動性の希薄さにあると考えた。
確かに前半戦の浦和はチャンスを数多く創出した。しかしその場面は大抵相手守備網のブロックに阻まれていたり、攻撃側が厳しいシュート態勢を余儀なくされていたりと、フィニッシャーにとって状況が困難な場合が多かった。その要因としては、浦和の攻撃がパスの出し手と受け手の2人の関係で完結する傾向にあった点が挙げられる。浦和に所属する選手はJリーグ全体の中で個人スキルに秀でた者が多く、対人プレーで相手よりも優位に立つケースが目立つ。そのために攻撃は一方向、すなわちパスの出し手と受け手の“テレフォンパス”になり、最終局面で守備側が浦和の攻撃パターンを予測しやすくなっていたのかもしれない。
そのようなチームの問題点をしっかりと把握していたのは、すでに広島のミハイロ・ペトロビッチ監督の下で“コンビネーションサッカー”に慣れ親しんでいた柏木だった。
「僕の理想はピッチに立つ11人全員がお互いを信頼して、生かし、生かされるプレーをすること。今季のレッズはだんだんそのようなプレーができるようになってきたけど、まだまだチーム全体の活動量が少ないとは思う。1つ課題を挙げるとすれば、今のチームは3人目の動きが少ない。今は1人目、2人目だけで崩す傾向がある。僕の理想では縦パスを誰かが落として、そのボールを僕が裏へ走る選手へ出したい」
柏木の理想が体現されたゴールはある。1つ挙げるとすれば、ナビスコカップ予選リーグ第3節の湘南ベルマーレ戦の先制点がそうだ。最後尾のセンターバックであるマシュー・スピラノビッチが最前線のFWエジミウソンへ鋭い縦パスを通し、それをエジミウソンがたくみなポストプレーで落とす。そのボールを待ち構えていた柏木が右前方を駆けるロブソン・ポンテへワンタッチでスルーパスを通し、GKと1対1になったポンテが右足で難なくゴールを射抜いた。
このゴールでは一連のプレーに4人が連動し、“ゴールしやすい”シチュエーションを自ら創ってフィニッシュまで至っている。そしてチームは、このコンビネーションのさらなる熟成を狙い、オーストリアキャンプに突入したのである。
オーストリアのキャンプではヨーロッパの各クラブと総計4試合のトレーニングマッチを行い、そのほかは半日のオフを除いては連日午前午後の2部練習をこなした。練習では前述の“3人目、4人目”の動きを意識付けするシチュエーションプレーが多く取り入れられていた。それはあらかじめパターン化されたパス交換・動き出しから最後は“3人目”の選手がフィニッシュするもの。そしてトレーニングマッチでは実際にそのパターンからゴールを奪い一定の成果を挙げるなど、それなりに選手の内面に浸透する練習が行えたように見えた。
・『浦和再生 レッズスタイルの行方』 (2010/7/16)


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