必然に満ちた鹿島の戴冠=天皇杯漫遊記2010 (1/2)
決勝 鹿島アントラーズ 2−1 清水エスパルス
■決勝まで「アウエー知らず」だった鹿島
2011年がスタートした。西日本では天気が軒並み荒れ模様で、山陰地方では雪の被害が報じられていたが、幸いにして東京は快晴。今年の元日も好天の下、天皇杯決勝が行われることとなった。今大会のファイナリストは、鹿島アントラーズと清水エスパルスである。今季の無冠回避と来季のACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場権獲得のためにも、是が非でも負けられない鹿島。この日が最後の指揮となる長谷川健太監督の花道を優勝で飾りたい清水。両者とも、タイトルの重みと同じくらい、この試合に強い意気込みが感じられる。元日・国立にふさわしい好ゲームが期待できそうだ。
さて、両者の勝ち上がりをパンフレットで確認していて、あらためて気になったことを試合前に記しておきたい。それは、準決勝までの試合会場である。
清水は、アウスタ、アウスタ、ニッパツ、アウスタ、そしてエコパ。4回戦のニッパツ(対横浜F・マリノス戦)以外は、いずれもホームである。一方の鹿島は、カシマ、カシマ、カシマ、カシマ、そして国立。こちらは2回戦から準々決勝までずっとホームである。FC東京との準決勝こそ国立で行われたが、バックスタンドの鹿島サポーターの多さを考えれば、およそアウエーとは言い難い環境であった。つまり、鹿島は今大会、アウエーをほとんど経験しないまま、決勝までコマを進めたことになる(ちなみに天皇杯3連覇を目指していたガンバ大阪も、2回戦から準々決勝まではずっと万博で戦っている)。
J2勢で唯一気を吐いたアビスパ福岡が、一度としてホームで戦えなかったことを考えると、いささか不公平感が否めないレギュレーションである。しかし、だからといって鹿島やG大阪が「ずるい」と主張するつもりはない。むしろ私は「もったいない!」と思っているのである。考えてみてほしい。もしも鹿島なりG大阪なりが、一度でもJクラブがない他県に出向いて試合を行ったなら、それだけで地元のサッカー少年少女は喜ぶだろうし、ちょっとした地域貢献にもなる。天皇杯という大会を通して、レベルの高いサッカーが地方都市で見られれば、それだけで素晴らしい普及活動になり得たはずだ。また、そうした経験はサポーターにとっても、何かしらの有意義な体験をもたらしたことだろう。
天皇杯の開催地が、どのような理由と過程で決定されるのか、今でも不透明な部分は少なくない。別段、すべてを明らかにする必要はないと思うが、もう少し理にかなったものであってほしいと願うのは私だけではないだろう。日程的に「ホーム&アウエー」が不可能な大会なのだから、なおさら「サッカーファンにとっての公共性」というものを意識してほしいものだ。当連載では、これまで天皇杯のあり方について、事あるごとに意見させていただいた。本稿の最後に、今大会を踏まえた私なりの「天皇杯改革案」をまとめさせていただいたので、興味のある方は最後まで読んでいただければ幸いである。
■セットプレーによる2ゴールで鹿島が勝ち越し
鹿島はベテランDF大岩剛の代わりにMF青木剛が入った以外は、準決勝と同じメンバー。この日はボランチの中田浩二が、センターバックの穴を埋める。一方の清水は、前の試合でキャプテンマークを着けた兵働昭弘が左足小指を骨折したため、ベンチ入りせず。山本真希がスタメンに名を連ねた以外は、こちらも準決勝と同じである。
「前半は鹿島のゲームで、何もやらせてもらえなかった」
清水の長谷川健太監督の言葉は、前半の戦況を端的に表現していたように思う。序盤から両者が積極的に攻め合う展開でスタートしたが、ほどなくして鹿島の優位は明らかになる。前半のシュート数が、鹿島7に対して清水2。より多くのチャンスを作る前者と比べると、後者はあまりにも「らしくない」ミスが目立った。そして26分、小笠原満男からのコーナーキックに、フェリペ・ガブリエルがヘディングシュートを決めて、鹿島が先制する。清水の守備がそれなりに機能する中、より得点の確度が高いセットプレーで、取れる時に取っておく。鹿島の手堅さを痛感させる見事なゴールであった。
エンドが替わった後半、清水はシステムを4−2−3−1から4−4−2に変更する。「後半頭から、岡崎とフローデ(ヨンセン)の2トップにして、前線でタメができるようにした。小野(伸二)と藤本(淳吾)を両サイドの中盤にして、相手のボランチの横で起点を作ることで、非常に展開もスムーズになった」(長谷川監督)。そして後半14分、小野のパスを受けた本田拓也が浮いたパスを前線に送り、オフサイドラインぎりぎりの地点から飛び出したヨンセンが、GK曽ヶ端準が出てくる動きを読みながら、右足ワンタッチでループシュートを決める。センターバックの中田が必死に追いかけてクリアしようとするが及ばず。ついに清水が同点に追いついた。
その4分後、鹿島のオズワルド・オリヴェイラ監督はフェリペ・ガブリエルを下げて、準決勝のFC東京戦で効果的な働きを見せた本山雅志を投入する。指揮官いわく「相手にとって一番使われたくないバイタル(エリア)のところでプレーできるという意味では日本で一番」でありながら、フィジカルに問題があるため「90分使えない」本山は、この試合でも清水に傾きかけた流れを取り戻す仕事を十全に果たしてみせた。背番号10が中盤でタメを作り、ボールを散らし、そして相手のパスコースを消すことで、再び鹿島の攻撃は活性化する。そして後半32分、相手ペナルティーエリア前で得たFKのチャンスに、野沢拓也がゴール左上に突き刺す見事なシュートを直接決めた。結局、これが鹿島の決勝点となる。
対する清水は、原一樹、大前元紀といった攻撃の選手を相次いで投入し、さらにDFのボスナーを上げてパワープレーを試みるが、鹿島の守備陣が冷静に対応。ファイナルスコア2−1でタイムアップとなり、鹿島の3大会ぶり4度目の優勝が決まった。
・オリヴェイラ監督「鹿島らしさが出ていた」=天皇杯決勝後会見 (2011/1/1)
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・天皇杯決勝結果・戦評 (2011/1/1)


