コラム
西部謙司
スポーツナビ

いざ、開幕! (2/2)
犬の生活 2010

2010年3月5日(金)

■間違いなく面白い

石垣島キャンプの様子です。青空の下、ではないですね……。
石垣島キャンプの様子です。青空の下、ではないですね……。【西部謙司】

 石垣島キャンプの最終日、江尻監督に手応えを聞くと、
「やろうとしていることの90%」
 コンセプトの浸透はかなり進んだもよう。今年のジェフは間違いなく面白くなる。守備ブロックを作って、待ち受けて、引っかけて、でも相手も同じようにやっているから守備ブロックの外側だけでパスを回して、最後はリスクを避けてロングボール……、おそらく、いや絶対にそういうサッカーにはならない。妥協するつもりはないと、監督は明言している。「当たり前のこと」が、当たり前にできるようになったとき、このサッカーは多くのファンの支持を得られると思う。何か、面白そうなサッカーだと感じてもらえる要素をたくさん持っている。

 2月21日のちばぎんカップでは、その片りんを見せた。1−1でPK戦による勝利だったが、昨年とはひと味違うサッカーだった。サッカーは面白くなければならない。ジェフのサッカーは特にそうだ。勝利だけを見に来るお客さんなら、とっくにほかのチームの試合を見にいっているはずである。もし、お金をたくさん稼ぎたいだけなら、子供たちはJリーガーになるよりもプロ野球選手かプロゴルファーを目指すだろう。サッカーが好きなのは、サッカーが面白いからだ。プロはサッカーの面白さを伝えなければならない。降格したのに、ちばぎんカップでは過去最高の観客動員。だからファンの期待に応えなきゃいけない。全部勝てなんて言わない。ジェフのサッカーを見せてほしい。サッカーって面白いな、そう思ってもらえれば、半分は成功である。

■ただいま決定力不足

川平湾で遭遇したネコです。恐え〜。でも「ニャン」とかわいらしく鳴きます
川平湾で遭遇したネコです。恐え〜。でも「ニャン」とかわいらしく鳴きます【西部謙司】

「石垣島では、主に中盤までやってきましたが、いまはゴール前まで来ています」
 ちばぎんカップを前に、江尻監督はそう話していた。そう、問題はゴール前だ。点が入らないと面白いサッカーをやっていても勝てない、J1には上がれない。
 ちばぎんカップや練習試合を見たファンはうすうす気がついているかもしれないけど、ここまでのジェフのサッカーは岡田武史監督の日本代表とうっすら似ている。パスは回る、しつこく同サイドを突いていく、切り替えも早い、だけど案外ゴールが遠い。

 まあ、焦ることはない。そう言い聞かせてみる。世界中に決定力満足なんてチームは、そうそうないのだ。石垣島でちょっとキャンプをやって、練習試合をいくつかやっただけでバルセロナやアーセナルになったら、その方が驚く。そう、今年のジェフは面白い。面白いけど点が入らなくて、勝てなかったらどうしようと心配するのも含めて面白い。それが“これから”のチームを応援する楽しみでもある(さて、この余裕がいつまで続くかと思いながら次回へつづく)。

<この項、了>

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西部謙司

1962年9月27日、東京生まれ。少年期を台東区入谷というサッカー不毛の地で過ごすが、小学校6年時にテレビでベッケンバウアーを見て感化される。以来、サッカー一筋26年、早稲田大学教育学部を卒業し、商事会社に就職するも3年で退社。サッカー専門誌の編集記者となる。95〜98年までフランスのパリに在住し、欧州サッカーを堪能。主な著作に『Eat foot おいしいサッカー生活』『スローフット なぜ人は、サッカーを愛するのか』『1974 フットボールオデッセイ』『イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く』(いずれも双葉社)、『サッカーがウマくなる!かもしれない本』『監督力』『技術力』(いずれも出版芸術社)、『「日本を超える」日本サッカーへ』(COSMO BOOKS)、『サッカー戦術クロニクル』、『サッカー戦術クロニクルII』(いずれもカンゼン)、『サッカー日本代表システム進化論』(学研新書)など。また、有料メールマガジン「犬の生活情報」(http://blogola.jp/c/mailmag/kenjinishibe)も配信中

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