コラム
西部謙司
スポーツナビ

いざ、開幕! (1/2)
犬の生活 2010

2010年3月5日(金)
ジェフいぬち
ジェフいぬち【画:西部謙司】

 さあ、開幕です。一部皆さまにご心配をかけたらしい「犬の生活」もスタートです。
「今年は書いてもらえるんですか?」
 何人かのジェフ千葉ファンの方々から声をかけていただきました。J2に落ちたからもう書かないんじゃないか、スポナビから「いい加減にしてください」なんて言われてるんじゃないかと、心配してくださったようです。僕自身はやる気十分、石垣島のキャンプにも行ってきました。スポナビさんからもゴーサインが出たので、めでたく2010年版の開始となります。皆さまに感謝です。

 さて、今年は趣を変えてみました。従来のマッチリポートではなく、適宜に(いつが適宜なんだ?)いまジェフはどうなっているんだ的なリポートを書いていきます。更新頻度のいまいちなブログと言われるとそれまでですが、現場の声なども取材しつつ、ちょっとドキュメンタリー風(?)にいってみます。

■濃い石垣島

「島の人は顔が濃いです。それと、顔を見れば名字もけっこう当てられます」
 県外から来て石垣島に住んでいるという人は、顔でだいたい名字が分かるという。沖縄県の八重山諸島、石垣島からは東京よりも台北の方がずっと近い。やっぱり暖かい。
 到着したのは2月2日、取材は3日から。すでにキャンプ4日目に入っていた。「サッカーパークあかんま」は山の中。江尻篤彦監督の大きな声が響きわたっていた。
「こだわりを持って、1つのことをやり続けていけるのは、(シーズン途中で監督に就任した)昨年とは違いますね」

 江尻監督のやりたいこと、コンセプトはしっかりと伝えられているようだった。
 どんなサッカーをやるのか。J1昇格とともに、今年のジェフ千葉の大きなテーマだ。監督には明確なイメージがある。ただ、僕にはそれをひとことで表現するキャッチフレーズが見つからない。いくつかポイントを拾ってみる。

1)縦にグラウンダーのパスを入れていく(「逃げの横パス」をしない)
2)といっても、FWへのクサビよりも、むしろその手前(中盤への縦パス)
3)縦へ入れることで相手の視線を奪い、“見えない”スペースを作る
4)狭い場所でのパスで“セットアップ”した後は、ピッチの横幅を使う展開
5)プレーを止めない。切り替えを早く
6)クロスには複数が飛び込んでいく。特にニアは迫力のある走り込み

「当たり前のことなんですけどね。バルセロナでも、その当たり前のことを当たり前にやっている」
 江尻監督の言葉を借りると、「当たり前のサッカー」ということになるが、これだとキャッチフレーズとしてはよろしくない。要再考である。

■窮屈な時期

「オシムさんのときも、最初のころは30%ぐらいしかできていませんでした。徐々に効果が表れるようになったんです」
 と、広報の利渉洋一さん。キャンプの練習はイビチャ・オシムさんのときと似ていた。コンセプトを立てて細部を詰めていく過程では、どうしても窮屈になる選手も出てくる。石垣島では、まだぎくしゃくしている感じだった。
 江尻監督の要求していることは、世界のトッププロにとっては「当たり前のこと」かもしれない。でも、ジェフの選手にとっては必ずしもそうではない。だいたい、当たり前にできるのならキャンプでやる必要はないのだ。

「攻守の区切りのないサッカーをやりたい」
 シュートが外れた、自分がミスした、味方がミスした、タッチラインを割った……、そこで集中を切ってはいけないと江尻監督は強調していた。プレーは続いている、リスタートを早くしろ。ボールボーイがボールを渡すのも早くしたいと言う。
 リスタートを早くするのは、やろうと思えばすぐにでもできることだ。でも、実際には遅れる選手はいる。かつてディエゴ・マラドーナはこう言っていた。
「俺に必要な“ひと息”をつかせてくれ」

 スーパースターは“ひと息”ついて、スーパープレーを連発した。けれども、今年のジェフに“ひと息”はいらない。アルゼンチンだって、皆がマラドーナではまずいわけだ。練習中のリスタートはみるみる素早さを増していった。ただ、中には早くやるのと、焦るのとの境界線が分からなく人もいる。焦るとミスる。自分のペースでやれないから窮屈になる。
 切り替えを早く、素早くプレス。何人かは早い、だが遅れる人もいる。連動しないプレスは空転する。縦へのグラウンダーのボール、あわてて蹴ってカットされる。
 高く跳ぶには助走がいる。石垣島は、まだ助走の途中。とにかく、なかなか濃いキャンプだった。

 <続く>


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