コラム
キム・ミョンウ
スポーツナビ

韓国人選手たちが明かした来日の理由 (2/2)
Jリーグ『アジア枠』がもたらす利点と弊害

2009年5月19日(火)

■韓国人選手がJリーグを選ぶ理由

好調を維持する新潟でリーグ戦12試合に出場するなど存在感を示す19歳のFWチョ・ヨンチョル
好調を維持する新潟でリーグ戦12試合に出場するなど存在感を示す19歳のFWチョ・ヨンチョル【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】

 彼らが、なぜKよりもJを選ぶのか。そこにはいくつかの共通点がある。一つはKリーグの“ドラフト制度”だ。
「それぞれの考え方に違いがあるので、一概にこれだという答えはありません。ただ、一つ言えるのは、韓国にはドラフト制度があるので、それが壁になっているのは確かです。例えば、強いチームに入りたくても入れないとなると、自分の将来を思い描けない部分があると思います」(キム・クンファン)

 チョ・ヨンチョルとパク・チュホも同じ考えだ。Kリーグでドラフト制度が施行されていたのは、1988年から2001年まで。02年から自由契約になったが、戦力の偏りや契約金の高騰を招いて、06年から再びドラフト制度が導入された。ドラフトは指名選手の基本年俸を制限していて、上限は1位指名で5000万ウォン(約330万円)、6位になると2000万ウォン(約130万円)にまで落ちる。
 選手にしてみれば、自由にチームを選び、金銭的にも条件のいい場所を求めたいと思うのが本音だろう。その結果、なじみやすい日本に目が向くのは必然。そこにアジア枠が創設され、彼らの日本進出に拍車をかけたという形だ。

 2つ目の共通する理由として、選手たちはJリーグの環境やシステムの良さを挙げている。
「リーグのシステムは整備されていますし、観客も多い。サッカーをする環境が整っているから、Jリーグに行きたがる選手が多いんです」(チョ・ヨンチョル)
 確かに、誰もが環境の整った場所でサッカーに専念できるなら迷わずそこを選ぶだろう。しかし、Jリーグを選んだからといって成功は保証されていない。それでも彼らが日本に渡ったのは、海外のリーグでプレーをして力をつけたいという強い気持ちがあるからだという。

 そんな海外での成功に懸ける思いが強く感じられたのが、パク・チュホだった。彼は韓国のドラフトでは確実に1位指名される選手で、Kリーグでもレギュラーとしてプレーできる逸材だ。本人もその事実を認めていたが、彼が選んだ道はJ2の水戸。日本に来た当初は、環境の違いや言葉などで苦労したというが、今では鹿島に籍を移し、スタメンとして起用され続けている。
「僕が経験したから言うのですが、一般的にみんなが思っているほど、J2は決してレベルの低いリーグではないと思います。同年代(の選手)がKリーグや韓国代表で活躍していますが、僕はここで結果を残して必ず成功してやりますよ。日本で成長して学ぶことを選びましたから、今のままじゃ韓国には帰れません」

■Jを目指す韓国人とアジア枠の未来

 彼らは、決してお金でJリーグを選んでいない。すべては、サッカー選手として海外に身を投じているという考えだ。いずれは韓国代表、そしてその先には欧州進出も狙っているようだが、このような考え方は、かつて京都に在籍したパク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)がモデルケースとなっているのは言うまでもない。欧州行きがささやかれているイ・グノも、例外ではないだろう。

 Jリーグに渡る韓国人選手は、今後も増え続ける可能性が高い。日本のスカウトが現地に赴いて、若手有望株をスカウティングする例があると聞く。チョ・ヨンチョルが明かしてくれたのだが、Jのスカウトが韓国の高校選手権の決勝戦を見に来ていたというのだ。才能豊かな韓国人選手を早い段階から安く獲得して、長期で育てた方がチームにとって有益だと考えるクラブが増えているのだろう。

 今年4月、今季からKリーグの江原FCでプレーする元川崎フロンターレの大橋正博を取材したとき、「驚いたことが一つある」と話していた。
「若い選手たちは、Jリーグについて本当によく知っています。チーム名や選手の名前まで知っている。日本には韓国人選手が多いから、情報がすぐに伝わるのだと思います。『将来はJリーグでプレーしたい』という選手が多いことに驚かされました」

 情報が行き来することで、若い韓国人選手のJリーグへのあこがれがとても強くなっていることを感じさせてくれる言葉だが、日本に来たからといって誰もが成功するわけではない。過去、元柏レイソルのチェ・ソングッ(光州尚武)や元京都のコ・ジョンス(現役引退)など、結果を残せずに去った選手がいることも忘れてはならないだろう。戦力外になることだって十分にあり得る。
 もし成功できない選手が増えれば、韓国市場は見向きもされなくなってしまうだろう。そうなれば、韓国サッカー界にとってもマイナス要素であることは間違いない。

 韓国人Jリーガーが結果を残すことで、Jリーグの『アジア枠』がより効果的に働くのは確か。Jリーグのレベルアップに貢献し、自らも実力を高めて評価を得られることは、韓国人選手には願ってもない環境だ。しかし、現在の高評価が来年へとつながっていくのかは、未知数。コリアンJリーガーの戦いは、これからが正念場だ。

<了>

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キム・ミョンウ

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。朝鮮大学校外国語学部卒。「朝鮮新報」記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、大韓サッカー協会(KFA)公式サイト日本語版を制作する「ピッチコミュニケーションズ」でライターとして活動し、韓国と北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを数多く取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。『Number』『週刊サッカー・ダイジェスト』などに寄稿

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