コラム
キム・ミョンウ
スポーツナビ

韓国人選手たちが明かした来日の理由 (1/2)
Jリーグ『アジア枠』がもたらす利点と弊害

2009年5月19日(火)

■Jリーグで活躍する韓国人選手たち

抜群の決定力で得点を量産し、最下位に低迷する磐田を13位に押し上げたFWイ・グノ
抜群の決定力で得点を量産し、最下位に低迷する磐田を13位に押し上げたFWイ・グノ【Photo:松岡健三郎/アフロ】

 新聞や雑誌のサッカー報道を見ていると、“李”や“金”などの漢字、あるいはカタカナで“イ”、“キム”と書かれた名前が目に飛び込んでくるようになった。それらはすべてJリーグでプレーする韓国人選手。今季からJリーグに渡ってきた韓国人選手の活躍ぶりがそれだけ目立つということだが、かつてホン・ミョンボ、ユ・サンチョル、ファン・ソンホンらの大物韓国人選手がJリーグに在籍していた時代を彷彿(ほうふつ)とさせてくれる。

 最近、最も衝撃的だったのはジュビロ磐田のイ・グノだろう。
 リーグ開幕後の4月に移籍してきた彼は、(第12節終了時点)7試合で6ゴールを決め、周囲の度肝を抜いた。磐田の救世主は、最下位のチームを13位にまで押し上げ、今や各メディアから取材に引っ張りだこ。韓国から直接取材に訪れる記者も増えている。
 彼だけではない。ガンバ大阪初の韓国人選手となるチョ・ジェジンも、7ゴールを決める活躍でチームの躍進を支え、チームメートのパク・ドンヒョクもいち早くチームへ順応している。

 ほかにもJ1には、京都サンガF.C.の韓国代表DFイ・ジョンス、J2水戸ホーリーホックから鹿島アントラーズに移籍し、レギュラーポジションをつかんだパク・チュホ、ビトリア・セツバル(ポルトガル)から移籍してきたモンテディオ山形のキム・ビョンスクもチームを支えている。また、昨年のJOMO CUPオールスター戦でKリーグ選抜として出場したパク・ウォンジェは大宮アルディージャに在籍。北京五輪代表経歴を持つ横浜F・マリノスのキム・クンファン、U−19代表のエースとしてプレーしたアルビレックス新潟のチョ・ヨンチョルも若手ながらコンスタントに試合に出場し、徐々にその実力が開花されようとしている。ヴィッセル神戸の元韓国代表MFキム・ナミルは、昨シーズンからの安定したプレーで、定位置を確保している。

 現在、Jリーグにはどれほどの数の韓国人選手がいるのだろうか。選手名鑑を手に一つ一つ調べてみると、J1には先ほど名前を挙げた10人を含む14人の韓国人選手が在籍していることが分かった。そのほか、J2にも多くの選手が在籍している。J1でプレーする選手のほとんどは経歴からプレーの特徴などを把握しているが、J2の選手は韓国でも無名。そのほとんどが知らない選手ばかりで、大学卒業の若手やナショナルリーグ(韓国の実業団チーム)出身者が目立つ。

 それにしても、これほど多くの韓国人選手が日本に渡ってきた理由とは何か。最大の要因は、Jリーグにアジア枠が創設されたことだろう。今季からJリーグが導入したアジア枠は、従来の外国人選手枠3人に加えて、AFC(アジアサッカー連盟)加盟国・地域の選手が1人登録できる制度だ。Jリーグはアジア枠創設の目的を、選手のポジション争いによるゲームレベルの向上、アジア地域における新たな事業開拓、アジア地域を対象にした国際交流と位置付けている。

■危機感を募らせるKリーグ

 アジア枠の導入による韓国人選手の増加について、あるエージェントは次のように語っている。
「過去に(Jリーグで)プレーした韓国人選手が、良い成果を残していますからね。生活レベルや文化がそこまで大きく違わないので適応も早く、各チームの強化部が目をつけるのも当然です。一時期、韓国人選手の年俸が高騰したことで、Jでプレーする選手が少なくなりましたが、アジア枠が施行され、さらに(Kリーグの)FA(フリーエージェント)制度などで、合理的なレベルで移籍金が落ち着いたということも理由の一つでしょう」

 Jリーグの現状と立場を説明すると以上のようになるが、韓国の反応はどうだろう。自国の人気選手たちの多くがKリーグでプレーせず、日本に渡るのだから、その心境は複雑に違いない。韓国人Jリーガーの活躍は、今後の韓国サッカー界の発展につながると見るむきもあるが、まだ懸念する声も多い。

 Jリーグでアジア枠創設が話題に挙がったとき、韓国側は好意的にとらえていなかった。元Kリーグ事務総長のキム・ウォンドン(現・江原FC代表理事)は、Kリーグが危機を迎えるのではないかと懸念していた。
「もし先にJがアジア枠を設ければ、極端な話、韓国から18名の選手がJ1に流れるわけです。一方的な流出は釣り合いが取れませんし、Kにとって国内リーグに空洞化を招く危険性もあります」

 当時はあまりにも大げさではないかと感じていたが、今ではあながち的外れではないようだ。多くの韓国人選手がJリーグに渡る現状を嘆くように、韓国では最近このようなタイトルの記事が紙面に載った。
『2009Kリーグ興業スターの不在』
 韓国のスポーツ新聞『スポーツ韓国』が掲載した記事で、Kリーグの人気が低迷しているという内容だ。人気クラブのFCソウルや水原三星ブルーウィングスでさえも、1試合平均2万人だった観客数が、今では1万5000人にも満たないという。その理由として挙げているのが、人気選手のJリーグ移籍だ。

 記事では、磐田に移籍したイ・グノ、G大阪のチョ・ジェジン、パク・ドンヒョク、京都のイ・ジョンスらの名前を挙げながら、Jリーグのアジア枠創設によってひき起こされる国内リーグの低迷を嘆いていた。水原三星のチャ・ボングン監督のコメントも掲載されていた。
「円高による一時的な現象と見てはならない。これから、優秀な選手たちの海外移籍はどんどん増えていくだろう。次世代のスター選手を育てるために、韓国サッカー界が努力しなければならない」

 韓国のサッカー関係者は常に危機意識を持っているようだが、当の選手たちの気持ちとは少し隔たりがあるようだ。
 昨年末、横浜FMのキム・クンファンと新潟のチョ・ヨンチョル、今年に入って鹿島のパク・チュホを取材する機会があり、「Jリーグを選んだ理由」について聞いたことがある。彼らは皆、Kリーグでプレーすることを選ばず、Jリーグでプロデビューを飾った選手たちだ。しかも3人共、韓国のユース代表では欠かせない主力で、将来を背負って立つと言われる逸材だ。

 <続く>


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■関連リンク
韓国サッカーの名誉挽回のために (2009/3/10)
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