コラム
貞永晃二
スポーツナビ

香川真司とともに進化するC大阪 (2/2)
若きエースが“3度目の正直”に挑む

2009年5月18日(月)

■エースとしての自覚がさらなる成長を促す

昨年10月のUAE戦で代表初ゴールをマーク。日本代表での経験が香川をさらに大きくする
昨年10月のUAE戦で代表初ゴールをマーク。日本代表での経験が香川をさらに大きくする【Photo:澤田仁典/アフロ】

 では、今季ここまでの戦いぶりについて振り返ろう。(第15節終了時点で)順位こそ2位だが、11勝2分2敗の勝ち点35は文句のつけられない成績だ。何しろC大阪といえばここ数年、開幕ダッシュどころか黒星先行が当たり前だったのだ。それが開幕5連勝、引き分けを挟む8戦無敗はでき過ぎと言ってもいいくらいだ。

 スタートダッシュ成功の理由としては、昨季最後に作り上げたシステム3−4−2−1を継続したことだろう。その中で最も目立つのは1トップ2シャドーだ。カイオ、香川そして乾の3人は、技術はもちろん、スピードにも優れ、試合を重ねるごとに連係もスムーズになって、他チームの守備陣をしばしば混乱に陥れてきた。彼ら3人が決めた20ゴールは、チーム総得点29の約7割を占める。引いて守る相手が多いだけに、この得点力は高く評価したい。

 開幕のサガン鳥栖戦で、香川は乾とともに終始厳重なマンマークを受けたが、「プレーしづらいところもあったが、それでも結果は残さないと」とエースとして相手チームに狙われるのは当然という自覚をうかがわせた。その言葉通り、香川はここまで10ゴールを挙げ、得点ランキングのトップとしっかり結果を残している。
 だが、現在の香川を見ていてひとつ気になるのは、今季は勝利後にも昨季と比べて明らかに笑顔が減っていることだ。たとえ得点しても、「まだミスが多い」「全然満足できない」「自分は課題が多い」など、口をついて出てくるのは反省の言葉ばかり。森島の背番号8を継承した責任感と、絶対J1に昇格するという意気込みがそう語らせるのだろう。

 岡田ジャパンで経験するあらゆることが、J1でプレーできない悔しさを一層大きくさせていることは間違いなさそうだ。そんな思いがなければ、3月の代表戦(バーレーン戦)後、翌朝に愛媛に移動し、睡眠不足のままスタメン出場、しかも決勝点を挙げるという人並み外れた活躍を見せられるものではない。

■チームは守備力アップで先攻逃げ切り型へ

 先制した9試合はすべて勝利しているように、今季のC大阪は先行逃げ切り型だ。それを可能にしたのは守備力の明らかな向上である。GK・DF陣の奮闘はもちろんのことながら、前線の3人が守備でも貢献し、マルチネスと羽田憲司のダブルボランチは相手カウンターの芽を巧みに摘み取り、3バックの弱点である両サイドも右・酒本憲幸、左・石神が豊富な運動量で埋めている。

 今季の総失点は15と、攻撃的なチームが1試合1失点ならば勝利が近づくのも当然だ。しかも失点を時間帯別(15分刻みの6分割)に見ると、「75分〜タイムアップ」はわずか2失点。昨季42試合を振り返ると、同じ終盤の時間帯に最多の15失点を献上し逃げ切りに失敗しているケースが目立った。

 今季はハイボールに無類の強さを見せるGKキムと、危機察知能力に秀でるチアゴを中心とする守備陣が相手の攻撃を跳ね返し、しかも安易なクリアに逃げず、ショート&ロングカウンターを繰り出し、「攻撃は最大の防御」を実践できている。終盤に足が止まる選手がいないのは、キャンプでのフィジカル強化の成果だと言えそうだ。

■香川の代役は柿谷に期待

 今後のリーグ戦を考えると、C大阪にとって香川の代表招集は重大かつ深刻な問題だ。日本代表は5月末からキリンカップ2試合、その後は2010年ワールドカップ・アジア最終予選3連戦と6月中旬まで活動が続く。その間、J2は通常通りにリーグ戦が進行する。香川がこの代表戦5試合すべてに招集されると、C大阪はリーグ戦で最大4試合(徳島ヴォルティス、東京ヴェルディ、ファジアーノ岡山、カターレ富山戦)を香川抜きで戦うことになる。
 そこで香川の代役だが、やはり柿谷曜一朗に期待したい。第3節の栃木SC戦後の記者会見でクルピ監督は、香川と柿谷を比較し、「香川には大胆さと勇気を、柿谷には責任感を強く求めている」と熱く語った。監督がこれほど期待したくなるほど柿谷には魅力があるのだ。19歳とはいえもうプロ4年目、そろそろ大ブレークしたいところだ。

 第14節のザスパ草津戦ではさらに痛恨事が起きてしまった。カイオが悪質なファウルを受けて全治3カ月の重傷(左足足首の関節じん帯損傷)を負ったのだ。彼の長期離脱はC大阪にとってあまりにも痛い。5得点のFWを失うというよりも、香川、乾をうまく生かせる選手を失うという意味でだ。幸い昨季16得点の小松塁が負傷から回復しカイオの穴を埋めるだろうが、香川、乾との連係面ではやや不安が残る。試合を重ねて連係を磨くしかないか。

 そして最後に、西澤明訓についても触れておこう。ケガを抱え引退をささやかれたが、元・名コンビのパートナーであった森島の引退で一念発起。J1昇格のためにと今季からC大阪に復帰した。そろそろ出番も巡ってきそうで、ベテランらしい存在感を見せてくれるはずだ。

 まだ第1クールも終わっていない時期にここまでの振り返りと、今後の展望を書かせてもらったが、まだまだ各チームとも山あり谷ありだろう。まだ何も終わっていない、いやむしろ始まったばかりなのだ。
 ちなみに昨季第1クール終了時の順位は1位・広島、2位・C大阪、3位・仙台で、第2クール終了時では広島、モンテディオ山形、鳥栖の順となった。広島を除けば、上位陣はあっさり入れ替わっている。これを見ても、いかにJ2が混戦か分かるだろう。サポーターの楽しみも苦しみも、まだまだこれからなのだ。

<了>

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貞永晃二

JSL当時から日本サッカーを見続け、尊敬する賀川浩氏を大きな目標とするサッカージャーナリスト。関西サッカーを少しでも盛り上げようとセレッソ大阪を中心にあらゆるカテゴリーを取材している。ドーハの悲劇を現地体験したため、ジョホールバルに行けなかった小心者。生まれも育ちも大阪、自転車で練習に試合に駆けつける肉体派(?)
2002world.com

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撮影・編集 : スポーツナビ

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