コラム
宮明透
スポーツナビ

大分トリニ−タに一体何が起きているのか? (2/2)
最下位に沈む低迷の要因とは

2009年5月8日(金)

■昨季から多かった警告

レッドカードを受ける大分のエジミウソン(左)。昨季から多かった警告の問題がここへきて表面化している
レッドカードを受ける大分のエジミウソン(左)。昨季から多かった警告の問題がここへきて表面化している【写真は共同】

 さらに昨シーズンから継続しているものは警告の多さである。2008シーズン、大分の警告は、J2に降格した東京ヴェルディに次いで2位の78個という多さだった。警告が1番少ない清水エスパルスの33個と比較すると2倍以上の多さである。守備の中心選手である森重真人、ホベルト、上本大海の3人で清水に近い31個の警告を受けている。特に上本については1人で12個と最多の警告数である。Jリーグの審判研修会でも悪いモデルとして大分の選手の映像が使われていると伝え聞いている。ちなみに横浜F・マリノスのDF中澤佑二は33試合で3個の警告、34試合フル出場した川崎フロンターレのDF伊藤宏樹は2個である。

 これは一体何を意味しているのだろうか? 警告数の多さと守備率向上との相関はないと思うが、そう思われても仕方がないほどの多さである。
 さらに言うならば、今年になって後ろや横からのファウルが増えている。1対1で守り切れない状況で抜かれる瞬間に足や手が出てファウルを重ねている。モンテディオ山形戦(4月11日、0−1で敗戦)の上本の後ろからのファウル、FC東京戦(4月25日、0−1で敗戦)での試合終了直前での高橋大輔のやはり後ろからのファウルは、いずれもPKを与えており、昨年では考えられなかったことである。ちなみに大分は昨年シーズン1度もPKを与えていない。

 こういった警告の多さに対して対応策はどう考えていたのだろうかと疑問が残る。今シーズン、出場停止などでベストなメンバーが組めないという状況は昨シーズンから潜んでいた課題なのである。

■ポジション競争がなくなった安定への弊害

 2008年シーズンの大分は安定した不動のメンバーで戦ったが、この弊害も出ている。けがや累積警告などでの出場停止はあったが、レギュラーと呼べる選手たちは固定したメンバーで「きずな」をキーワードに信頼感を深めてリーグ4位の結果を残してきた。一方で、そのポジションを脅かす若手の伸び悩みが目立っている。3年目の金崎夢生は伸びてきたがこれに続く選手が出てこない。清武弘嗣が出てきているもののレギュラー獲得までの信頼感はない。勝負の世界の安定は下降線への序曲である。1試合、1試合でポジションを「奪う眼」と「奪われないと思う眼」のギラギラした骨肉の争いがなければチームの向上はない。

 さらに、今シーズンの目標が何だったのかもいまだにはっきりと見えてこない。ACL出場についての目標は聞かれたが具体的な対応策は表に出てこなかった。どこを目指して、そのために何を施してきたのか。昨年と同じ選手、昨年と同じフォーメーション、同じトレーニングと、昨季との大きな変化はなかったが、脳裏にあるのは昨年の栄光ではなかったか? これは好成績の翌年によく起こる現象である。

 今季の大分は、新しく問題が発生したというよりは、警告数の多さなど、昨年の勝利の裏に隠れていた潜在的な課題が芽を吹いていると言えるのではないか。

■これからの大分が進むべき道

 時間は刻々と過ぎていき、毎週試合は迫ってくる。しかしチームを変えていくにはここまで来た歳月を待たねばならない。昨年、ナビスコカップで優勝し地方の星として名をはせた「大分」は今苦境に陥っている。
 大分県民も動揺を隠せない。「トリニータは、どげ〜なっちょんのか!」という言葉が県内に響きわたっている。ナビスコカップで優勝して「スポーツで街が豊かになる」ことを実感した大分県民は今、「スポーツで街が悲しむ」実感をも味わっている。

「試合でできないことは練習でもできない」。ならば「練習でできることは試合でできる」のである。地味で武骨ではあるが1番の方策は日々のトレーニングに全神経を傾けて、マスコットキャラである「ニータン」こと亀が進むように少しずつ「新しい大分トリニータ」を築くことにあると思う。
 それは2005シーズン、降格の苦境に陥った時に大分に着任したシャムスカ監督が言った「自信を持って前へ進みなさい」の一言と同じ。攻める気持ちが復活すれば、また躍動感のある弾力性豊かな守備を軸とした大分のサッカーが見られると信じている。

<了>

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■関連リンク
大分トリニータは何が変わったのか? (2008/11/4)

宮明透

1949年、大分県佐伯市生まれ。サッカーは1961年、中学入学と同時に始める。その後、スポーツ少年団やサッカースクールで指導。九州リーグ新日鐵大分の初代メンバー。大分トリニータ設立時は大分県サッカー協会理事として動く。女子委員長なども歴任。大分トリニータボランティアの会長も務め、現在は顧問。NHK大分ではテレビ解説も行う。朝日新聞大分版に大分トリニ−タのコラムを執筆中。国立大分高専勤務でサッカー部顧問。

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