コラム
キム・ミョンウ
スポーツナビ

韓国サッカーの名誉挽回のために (1/2)
ACLに挑む韓国勢4クラブの現状と勝機

2009年3月10日(火)
Kリーグ連覇よりもACL制覇を優先すると語った水原三星のチャ・ボングン監督
Kリーグ連覇よりもACL制覇を優先すると語った水原三星のチャ・ボングン監督【Photo:アフロ】

 今季、ACL(AFC=アジアサッカー連盟=チャンピオンズリーグ)に懸ける韓国Kリーグの意気込みは熱い。“アジア最強”を自認する韓国は、もともとアジアのタイトル獲得に強い意志を示してきたが、今季はその意気込みがかつてないほど強いようだ。
 Kリーグも、Jリーグと同じ3月7日に新シーズンが開幕した。それに先立って行われたプレスカンファレンスでACL参戦クラブの監督たちの口から出てきた言葉は、「リーグ戦制覇よりもACL優勝」だった。リーグ連覇が期待される水原三星ブルーウィングスのチャ・ボングン監督も、こう言い放ったほどである。
「Kリーグに多少の影響があるとしても、ACLで結果を残すために集中力を切らさないようにしたい。韓国サッカーの名誉を守るためにも、ACLではベスト尽くす」

“韓国サッカーの名誉のために”という言葉は、近年の屈辱を晴らしたいという覚悟と誓いの裏返しと言える。というのも、2007年のACLでは、全北現代と城南一和が浦和レッズに敗れ、08年のACLでは全南ドラゴンズと浦項スティーラーズがそろって予選リーグ敗退。3クラブが決勝トーナメントに進出したJリーグ勢とは対照的に、Kリーグ勢は“ACLの見物人”に甘んじた。それだけに、新システムによって4クラブが参加することになった今季のACLを、韓国は名誉挽回(ばんかい)の機会と位置付けているのだ。

■ACL制覇に燃える“常勝軍団”水原三星

 そんな汚名返上に燃えるKリーグの期待を一身に背負うのが、前出のチャ・ボングン監督が率い、鹿島アントラーズと同じグループGに属する水原三星だ。クラブ創設は1995年ながら98年にリーグ制覇して以来、国内タイトルはもちろん、アジアクラブ選手権2連覇を達成するなど、国内屈指の実力と人気を誇り、Kリーグ最高のビッグクラブとされている。

 昨季はリーグ戦11連勝を含む19試合連続無敗という他の追随を許さない安定した試合運びを見せ、チャンピオンシップも制覇。3−4−2−1を基本システムに、シンプルかつスピーディーでパワフルなサイド攻撃で相手を圧倒するスタイルで、4年ぶりのリーグ王者の称号を手にした。スピードとフィジカル重視のサッカーは、現役時代にドイツ・ブンデスリーガで活躍し、今でも韓国の国民的英雄として人気が高いチャ・ボングン監督の真骨頂とも評されており、今季のKリーグでも優勝候補の筆頭に挙げられている。

 もっとも、今季は昨季の主力が大量離脱。守備の二大柱だったマトは大宮、イ・ジョンスは京都へとJリーグ行きを決め、若き得点源だったFWシン・ヨンロクはトルコのブルサシュボルへ移籍。さらに“韓国のガットゥーゾ”の愛称で親しまれているMFチョ・ウォンヒも、イングランド・プレミアリーグ行きを模索してクラブを離れてしまった。
 昨季の主力4名、それもチームの背骨となる縦のラインがごっそり抜けてしまっただけに、攻守に安定した昨季の強さが健在だとは言い切れない。中国代表DFリ・ウェイフォン、ブラジル人DFアルベスをバスゴ・ダ・ガマから獲得しているが、新戦力だけにその可能性は未知数である。

 とはいえ、それでも水原三星に期待が集まるのは、その充実した戦力にある。昨季のKリーグMVPで韓国代表の不動の守護神でもあるGKイ・ウンジェを筆頭に、02年ワールドカップ(W杯)韓国代表のソン・ジョングッ、06年W杯韓国代表のペク・チフンら代表クラスがズラリ。さらに、最前線には昨季38試合で16ゴール7アシストの記録を残し、“Kリーグ最高のキラー”との称号を得たブラジル人FWエドゥーがいる。そんな充実した戦力もあって、今年2月に米国で行われ、大分トリニータも出場したパンパシフィック・チャンピオンシップで優勝。自信と弾みをつけてACL開幕を迎えようとしている。

 今季からキャプテンマークを渡されたDFクァク・ヒジュも語っている。
「パンパシフィック選手権だけでなく、今季戦うすべての大会の優勝カップを手にしたい。その中でも一番欲しいのがACLの優勝カップだ。ACLで一度敗北を味わっているので、次はかならず勝利しようと誓った。みんなの力を合わせて信頼し合えば、ACL制覇も夢じゃない」
 その豪華な布陣から“レアル・スウォン”とも呼ばれる水原三星。Kリーグの常勝軍団が本気でACL制覇に乗り出そうとしているのは、間違いなさそうだ。

■若さと勢いで躍進するFCソウル

 この水原三星を凌ぐ“勢い”で急速に力をつけてきたのが、韓国の首都をホームタウンとするFCソウルだ。クラブの前身は、かつて元日本代表の前園真聖も所属した安養LG。04年の本拠地移転を機に「FCソウル」と改名したクラブは昨季、リーグ戦2位でチャンピオンシップに進出。水原三星に敗れて準優勝に終わったものの、4−4−2のフォーメーションを軸に、素早いパス回しと高い個人技で相手の守備を崩しにかかる攻撃的なサッカーは高く評価された。

 そんな魅力的なチームを作り上げのが、セノール・ギュネス監督だ。02年W杯で母国トルコ代表を3位に導き、07年からFCソウルを指揮する名将は若手を積極的に起用。フレッシュでエネルギッシュなチームへと変身させた。
 その象徴とされるのが、今や韓国代表でも欠かせない存在へと成長した20歳のイ・チョンヨンとキ・ソンヨンのコンビだ。巧みなドリブルと鋭い切り込みで左サイドを突破するイ・チョンヨンは、積極的にゴールを狙う姿勢も忘れてはいない。一方のキ・ソンヨンは、中盤からの巧みなパスワークで攻撃にアクセントを加え、ゲームをコントロールする。

 この新世代コンビを筆頭に、最前線には03年Kリーグ新人王のFWチョン・ジョグッ、08年新人王のイ・スンヨル、サイドには韓国代表のキム・チウ、ディフェンスラインにはかつてジュビロ磐田に在籍したDFキム・ジンギュら、若い力がチームの主軸を担っているのがFCソウルの特長だ。その若手選手たちが着実に成長し、たくましさを増しているのが強みでもある。ほかならぬギュネス監督も語っている。
「われわれは平均23歳の若いチームだ。それだけに、ほとんどの選手が国際的な選手になりたいという野心に溢れており、そういう意味でACLは彼らの成長を世界に見せることができる最高の機会になる。予選リーグを突破できれば、決勝まで進出できるだろう」

 確かにFCソウルの若さと勢いは魅力で、水原三星のような主力の離脱もない。若い力とともに、もうひとつのアクセントとなっている外国人勢も健在だ。昨季33試合出場で15ゴール6アシストをマークしたモンテネグロ代表FWのデヤンは、今季も爆発の予感と貫禄さえ漂わせているし、ブラジル出身の左サイドバックであるアディは2年連続Kリーグ・ベストイレブンに輝いた。今季は新たにフランス出身のDFケビン・ハチカも獲得し、戦力は着実に整いつつある。
 若手が多いメンバー構成から「リーダーがいない」という不安も抱えているが、その底力は侮れない。同じグループFに所属するガンバ大阪も、油断すれば足元をすくわれることになるだろう。FCソウルの“勢い”には警戒が必要だ。

 <続く>


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