◆トピックス&コラム
宇都宮徹壱
スポーツナビ

もっと攻撃的に、もっと前へ (1/2)
松井大輔(日本代表/サンテティエンヌ)インタビュー

2009年4月2日(木)
日本代表に対する熱い思いを語った松井
日本代表に対する熱い思いを語った松井【宇都宮徹壱】

「もっとリスクを冒せ!」
 このほど発売されたテクニック本「松井大輔のサッカードリブルバイブル」(カンゼン)には、帯部分にこのような一文が掲げてある。同書の監修者である松井の姿勢、そしてサッカー観を的確に表現したコピーだと思う。

 2010年ワールドカップ(W杯)出場に王手をかけたバーレーン戦から、一夜明けた3月29日。都内某所にて、松井大輔に話を聞く機会に恵まれた。「南アフリカまであと1勝」に迫ったにもかかわらず、松井の表情は決して明るいものではなかった。無理もない。前日の試合はベンチスタートで、出場時間はわずか11分。持ち味であるドリブルを披露することもなく、結局シュートゼロで終了のホイッスルを聞いたのだから。

 前線に敏しょう性のある選手を並べ、高速パスをつなぎまくるという日本のコンセプトがより明確になるにつれ、リスクを冒して自らゴールに向かっていく松井の存在感は、次第に薄れつつあるように感じる。チーム戦術を優先させるのであれば、仕方のない話なのかもしれない。だが一方で、気がかりな面もある。すなわち、コンセプトに合致しない才能が排除されることで、本来チームが持っていたオプションやダイナミズムが失われるのではないか――と。

 完全に崩し切るまでシュートを打たない(打てない?)。遠めから相手の意表を突くミドルを狙う野心もない。相手ペナルティーエリア内に進入しても、ついパスの受け手を探してしまう。そんな今の日本代表にあって、常に1対1の勝負にこだわり、そして果敢にゴールを目指して突っかけていく松井の存在は“異端”であると同時に不可欠である(少なくとも私はそう考える)。では松井自身は、今の代表と自分の置かれた状況をどうとらえているのだろう。そしてその視線の先には、果たして何が見えているのだろうか。

■もっといろんな崩し方があってもいい

――バーレーン戦では、残念ながらピッチの外側でゲームを見ている時間の方が長かったわけですが、アップしながらどんなことを考えていましたか?

 0−0で入ったら、自分のプレーを出しながらどんどん前に行って、センタリングとかペナルティーエリアの前でワンツーとかで崩していこうと。16番のセンターバック(サイド・モハメド・アドナン)なんかは、そんなにフィジカルは強くないし、足元はあまり良くないって見ていたので、そっちを攻められれば、何とか点を決められるんじゃないかなって思っていました。

――実際には1−0のスコアが続いた状態で、79分に玉田(圭司)選手と交代して出場したわけですが、どうでしたか? 11分間プレーしてみて

 サイドに行った時は、どんどん仕掛けていいと(監督から)言われていたので、できるだけどんどん行こうと思ったんですけど。ただ、自分でもあまりリズムが作れなくて、すごく難しい入り方になってしまいました。

――記者席から見ていても、何とも歯がゆい感じがしました。全体的にゴールへの意識が薄いんですよね。自分から崩しに行くとか、遠めからゴールを狙うとか、もっとそういう姿勢があっても良かったと思うんですが、松井さんはどう思われます?

 もうちょっと、みんなドリブルしても良かったと思う。玉さん(玉田)も、中盤ではどんどんドリブルで行っていたんですけど、もうちょっと前でドリブルできれば(相手にとって)一番怖いところだったと思うんです。それと、相手が引いて難しい試合になったので、もっとロングシュートを打っても良かったんじゃないかと。1秒でも(コースが)空いたら、どんどん打って良かった。最初のうちにバンバン打ったら、DFも(ラインを)上げざるを得ないので、相手が来たところでワンツーを使うとか、そういった崩し方はあったと思います。

――前線に小さくてスピードのある選手、そして中盤をパサータイプの選手で固める現在の代表にあって、自らリスクを懸けて切り込んでいく松井さんの存在は、ある意味ユニークだし、切り札になると思います。岡田監督からは、いつもどういうことを要求されていますか?

 ディフェンスの切り替えの早さとか、それから全員守備・全員攻撃とか。

――攻撃パターンとして、ディフェンスラインの裏のスペースに走り込む選手へのスルーパスが多いですが、それ以外の崩しに関して監督と話すことはありますか?

 攻撃に関しては、センタリングの練習とかはしますけど、どういう崩しをするとか、そういうのはあまりないですよね。ただ、みんなのイマジネーションというか、もうちょっと意思疎通ができれば、いい感じで行けると思います。

■日本代表にアネルカがいれば……

――このところ岡田監督は、松井さんと大久保(嘉人)選手を対戦相手やシステムによって使い分けているように見えます。2月11日のオーストラリア戦(0−0)でも、57分に「松井OUT/大久保IN」でした。大久保選手のプレースタイルについて、何か感じるところはありますか?

 嘉人は、もうちょっと前で使った方がいいのかなと。その方が、彼の野生の勘みたいなのが生かせると思います。今の(サイドでの起用)だと、ちょっとかわいそうな感じですよね。本当はもっと前に、もっと真ん中に行きたいって感じですから。それだったら、例えば3トップにした方が、もっと面白くなるんじゃないかと思います。

――ただ、前線に人を増やしても、なかなかゴールが決まらないという悩ましい現状がありますよね。日本にこういうFWがいればもっと点が入る、というのはあります?

 うーん、アネルカ(フランス代表/チェルシー)くらいの選手がいれば、いいんじゃないですかね(笑)。でも、日本には日本の良さがありますから。それに、日本に突然アネルカは出てこないし。

――とはいえ、日本は流れの中でなかなか点が取れないのが現状です。バーレーン戦でも、結局(中村)俊輔選手のFKによる1点だけでした

「こうやって点を取ろう」という形がない、というのはあるかもしれませんね。サイドを崩してニアに合わせていくとか。センタリングにしても、どんどん上げていくとか。1本でもピンポイントで合えば入るわけだし。それがダメなら、中に切り込んでワンツーするとか、ロングシュートするとか、あとは個人の能力で中まで切り込んでいくとか。そういうのがないと、やっぱりダメだと思います。

――ただ、今の日本のコンセプトは、素早いパス交換で崩していくのが基本です。その意味で、自ら突っかけていく松井さんのスタイルは“異端”になってしまうわけですが

 いろいろ混ぜることが大事だと思います。相手がこう来るんだったらワンツーとか、こう来たんだったらドリブルとか、センタリングとか。やっぱりワンツーが少ないですよね。ドリブルで入りながらワンツーでもらって、また進んでいく。スペインのサッカーとか、すごくワンツーが多いし。あれだけ(相手が)守っていても、するっと(ラストパスが)出ちゃうわけで。

――日本の得点力不足、決定力不足って、結局のところ何に起因していると思います?

 うーん、僕が思うのは、最後の最後での貪欲(どんよく)さだったり……。やっぱり、気持ちの部分じゃないですかね。

――普段、フランスでプレーしていると、その違いはすごく感じますか?

 僕らのチーム(サンテティエンヌ)は結構、サポーターが激しいですから。負けたり、まずいプレーをしたら、まずブーイングされたり、たたかれたりしますよね。南米なんかだと、本当に命が懸かっているわけだし。でも日本では、そういうのがないかもしれない。

 <続く>


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■関連リンク
『松井大輔のサッカー ドリブルバイブル DVD抜き技&魅せ技スペシャル』 (2009/4/2)
カンゼン 監修:松井大輔
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