◆トピックス&コラム
宇都宮徹壱
スポーツナビ

打ち砕かれた「プライド」 (1/2)
W杯アジア3次予選 日本代表対バーレーン代表

2008年6月23日(月)

■バーレーン戦は「プライドを懸けた試合」?

負傷明けの中村俊を起用したところに、岡田監督の「意地」が表れている
負傷明けの中村俊を起用したところに、岡田監督の「意地」が表れている【写真は共同】

 雪の埼スタ(埼玉スタジアム)から、雨の埼スタへ――。
 2月6日のホームでのタイ戦でスタートしたワールドカップ(W杯)アジア3次予選も、今日6月22日のバーレーン戦がラストマッチとなる。すでに最終予選進出を決めている両チーム。最終戦前の段階では、1ポイント差でバーレーンが首位に立っているものの、最終的にどちらが1位になっても、最終予選の組み合わせには何ら影響はない。要するに、この日のゲームは「消化試合」なのである。そんな中、チームをモチベートする要因をあえて挙げるなら、それはもう「プライド」以外には見当たらないだろう。

「僕はバーレーンでの屈辱(アウエーで0−1で敗れたこと)は、一生忘れないでしょう。そういう意味で、この試合は自分の、そして日本サッカーのプライドを懸けた試合になると思っています。どんなことがあっても勝つ、勝たねばならないと思っています」

 14日のアウエーでのタイ戦(3−0で勝利)を終えての会見で、岡田監督はこのように語っている。代表監督就任以来、まるで能面のような表情で、感情や本音を表に出すことを極端に控えてきた岡田監督。そんな彼が「プライドを懸けた試合」という強い言葉を発したことについては、当初は少なからず驚いたものだが、あとから考えると岡田監督の強情で負けず嫌いな性格がよく現われていたようにも思える。自身の信念を決して曲げようとしない、その愚直なまでのメンタリティー。それは、内田や香川といった若手を辛抱強く使い続けたり、あるいは選手交代の遅さであったり、はたまた「これからはオレ流で」という発言からも強くうかがわれる。良くも悪くも強情。それが、この人の基本姿勢なのであろう。

 この「消化試合」に臨むにあたり、例えばバーレーンのように主力を休ませて、若手に経験を積ませるという考え方も、十分に妥当性はあっただろう。とりわけ、アウエー2連戦で酷使し続けた中村俊には、ここらで休養を与える判断があってもよかったのではないか。しかし、岡田監督はあえて真剣勝負の道を選んだ。それはそれで、十分に尊重すべき決断ではあると思う。ならば、目標を単なる「勝ち点3」や「1位通過」から、さらに一段高く掲げてほしい。すなわち、2日の横浜でのオマーン戦をしのぐ会心のゲームを、あるいはユーロ(欧州選手権)2008で目が肥えた日本のファンをうならせるような内容のゲームを、ぜひともこのバーレーン戦で見せてほしい――。いや、決して皮肉でも嫌味でもなく、私は心の奥底から、そう願っていたのである。

■岡田監督の「意地」と「迷い」

 ところが、である。試合前に配布されたスタメンのリストを見ると、このバーレーン戦が本当に「プライドを懸けた試合」なのか、いささか疑わしく思えてしまった。GKは楢崎。DFは内田、中澤、闘莉王、安田。MFは中村俊、中村憲、遠藤、本田。そしてFWは玉田と佐藤。これまでA代表で出場経験のない本田、そしてJ2の広島から抜てきされた佐藤のスタメン起用にも驚かされたが、それ以上に意外だったのは、ここ3試合不動のスタメンだった、松井、長谷部、そして駒野がベンチにも入っていなかったことである。

 実はこの3人は、今回の3次予選でそれぞれ警告を1枚ずつもらっている(駒野と松井はアウエーのタイ戦、長谷部はホームのオマーン戦)。ゆえに、来るべき最終予選をにらんでの温存であったことは間違いない。そして、それぞれのバックアッパー、もしくは新たなオプションとして、安田、本田、中村憲が起用されたのであろう。ゆえに、このバーレーン戦は「プライドを懸けた試合」と言いながらも、実のところは「主力温存」と「テスト」の意味合いが色濃いことは明らかだ。

 一方で、このラインナップからは、岡田監督の「意地」と「迷い」も読み取れる。「意地」というのは、もちろん中村俊のスタメン起用だ。右足首の負傷が癒えて間もない日本の10番について、指揮官は「試合に出られる状態にあるというのは間違いない」と、前日会見で言い切っていた。確かにそうなのかもしれない。しかしながら、決して代えの利かない希代のタレントが「意地」のために酷使されることについては、やはり割り切れないものを覚えてしまう。

 そして「迷い」とは、玉田のパートナーに佐藤が指名されたことである。オシム監督時代には、ほぼ常連で呼ばれていた佐藤だが、今季はJ2でプレーする選手。無論、佐藤自身を、そして広島やJ2をくさすつもりはない。が、それでも高原がスランプに落ち込み、そして大久保が出場停止処分の身である現在、日本のトップリーグに安心して代表の前線を任せられる人材がいないという事実は、決して看過できるものではないだろう。

 岡田監督の「意地」と「迷い」――それはすなわち「俊輔依存」と「ストライカー不在」という、今の日本代表の宿痾(しゅくあ)そのものであり、今後の最終予選において不可避の懸念材料でもある。

 <続く>


◆前後のページ |
このページのトップへ
Facebook:スポーツナビ・サッカー公式ページ Twitter:最新のサッカー情報を配信中 mixi:スポーツナビ高校サッカーページ

おすすめエントリー

編集部発ブログ

ブログ検索

お知らせ

サイト内検索:  携帯版スポーツナビブログ