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◆トピックス&コラム
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灼熱の大地で得たもの (1/2)
W杯アジア3次予選 オマーン代表対日本代表
■オマーン代表監督交代の背景にあるもの
オマーンの首都マスカットの語源は「谷間にふわっと浮かび上がった、美しいもの」という意味なのだそうだ。なるほど、タクシーに乗って都市と都市を結ぶ道路を走っていると、途中、視界に入るのは赤茶けた山々と岩の塊ばかり。ようやく商業エリアや住宅街の辺りにたどり着くと、風景に多少の緑が加わり、いささかほっとした気分になる。
アラビア半島の風景は、気候と同様、実に過酷である。もちろん、この地に生まれ、育った人々なら当たり前の風景でしかないのだろう。そしてわれわれのような取材者にとって、驚異に満ちた風景は、やがては美しい思い出となってゆく。だが、オマーン経済を下支えする海外からの出稼ぎ労働者、そしてこの地にビジネスチャンスを求めてやってきた商社マンや石油ディーラー、そしてサッカー監督の場合は、どうだろうか。ある種の覚悟を決めざるを得ない過酷さを、当地の風景から敏感に感じ取っているのではないか。とりわけ、明日をも知れぬ立場のサッカー監督であれば、なおさらであろう。
オマーンを含む中東諸国は、サッカー監督の一大輸入地帯である。ワールドカップ(W杯)予選、アジアカップ、そしてガルフカップの直前になると、南米から、東欧から、そこそこ名の知られた指導者が、潤沢なオイルマネーにひかれて、この地にやってくる。だが、そこで待ち受けているのは、前述のような過酷な風景と気候、大っぴらにビールが飲めない厳しい戒律、そして短気で気まぐれでサッカーの本質をまるで理解していない王族(=代表チームの実質的オーナー)たちによる理不尽の数々である。相当にストレスのたまる環境であることは間違いないだろう。
私がマスカットにたどり着いた5日、オマーン代表のフリオ・リバス監督が解任されたという報道に、いきなり接することとなった。現地の新聞によると、月曜日の横浜での試合で日本に0−3で敗れたのが、解任の理由だったようだ。実は私は、日本とのアウエー戦でも、あえて攻めの姿勢で臨んだこのウルグアイ人監督が、ホームゲームではどんなさい配を見せてくれるのか、密かに楽しみにしていた。そんな彼も、あっという間に解任である。この国では、ことサッカーに関して言えば「待つ」とか「育てる」とか「見守る」といった悠長な言葉は一切通用しない。この苛烈な環境がそうさせているのか、それとも単に王族たちが、気が短いだけなのか、それは分からない。いずれにせよリバスはチームを去り、後任にはオマーン人のハマド・アル・アザニがコーチから昇格した。
■キックオフが1時間早められたことについて
試合当日、マスカット市内の日中の気温は38度を記録した。歩いているだけでも汗がスプリンクラーのように噴き出してくる。アザーン(イスラム教における礼拝への呼び掛け)が流れる18時を過ぎると、いくぶんか過ごしやすくなるのだが、キックオフ時間の17時15分は、まだまだ陽が残っていて、火照るような熱を感じる。当初、18時15分に設定されていたキックオフ時間が「日本のエージェントの都合で」1時間早められたことについては、地元オマーンの新聞でも、しっかりと報じられている。極めてサッカー的でない理由で、選手が消耗するという本末転倒は、いったいいつになったら改善されるのだろうか。
確かに、深夜にかからない時間帯でテレビ観戦できるのは、一見ありがたい話だと思う。だが、テレビの視聴者さえよければ、現地で戦う選手はどうなってもよいという理屈が、まかり通ってしまうことに、私は底知れぬ危惧(きぐ)を覚える。2年前のドイツで味わった蹉跌(さてつ)が、今なおあらためられていない。そんな由々しき現実に対して、これまで「テレビ桟敷」の快適さを享受してきたサッカーファンも、そろそろ異議申し立てをする時期に来ているのではないだろうか。こうした状況が当たり前になってしまえば、やがてサッカーは死ぬ。それ以前に、選手自身が生命の危機に瀕することになるのは間違いないだろう。
いずれにせよ、決まったことは覆らない。このオマーンとの戦いは、極めて人為的な理由で、暑さとの戦いを強いられることとなった。
それでは日本の状況を確認しておこう。
キリンカップ以降、3試合連続で左サイドバックを担ってきた長友は、ホームでのオマーン戦で右足首をけがしたため、オマーンではずっと別メニューを黙々とこなしていた。右太ももを痛めていた闘莉王は練習に復帰。オマーン入りした初日の練習でリタイアした玉田、長谷部、遠藤も、問題なく出場できる見通しだ。
一方で気になるのが、チーム内に水当たりと思われる体調不良がまん延しているという情報である。最も経験豊かな川口がダウン。他にも数名、軽い症状を訴える選手がいるという。「けが人が出ることを想定しながらのメンバー構成にしてある」とは岡田監督の弁だが、さすがにここまでの緊急事態は想定していなかったのではないか。
とはいえ、今回のスタメンは、月曜日の横浜のそれと、ほとんど変わらなかった。
GK楢崎。DFは右から、内田、中澤、闘莉王、駒野。MFは中村俊、長谷部、遠藤、松井。そして2トップは、大久保と玉田である。長友の代わりに駒野が左サイドに回り、そして久々に内田が右サイドで起用された。それ以外は、ホームでのオマーン戦とまったく同じ。あの時のよい流れを、このアウエー戦でも継続させたいという、岡田監督の願いにも似た気持ちを、このスタメンから読み取ることができよう。
・オマーン戦後 岡田監督会見 (2008/6/8)
・オマーン戦後 選手コメント (2008/6/8)




