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雪のW杯予選に思う(1/2)
W杯アジア地区3次予選 日本代表対タイ代表

2008年02月07日
(文= 宇都宮徹壱 )  



■3万5130人は悲観すべき数字ではない


大久保のゴールを祝福する選手たち。岡田ジャパンは重圧のかかるW杯予選の初戦を快勝で乗り切った 大久保のゴールを祝福する選手たち。岡田ジャパンは重圧のかかるW杯予選の初戦を快勝で乗り切った【 Photo by 大友良行 】
 2月6日、東京は小雪がちらつく空模様だった。埼玉スタジアムに到着するころには、いったんは雨に変わったものの、試合開始と同時に再び雪になった。2010年ワールドカップ(W杯)への第一歩となるアジア地区3次予選。その初戦に雪が降るとは、何やら今予選の波乱を予感させるかのような幕開けである。

 W杯予選に雪、と聞いて思い出されるのが(といっても実際に見たわけではないが)1954年3月7日に行われたW杯・スイス大会アジア地区予選・対韓国戦である。史上初めて実現した日韓戦は、当日朝まで降り続いた雪が残る明治神宮外苑競技場で行われ、日本は1−5で敗れている。記録によれば、グラウンドは雪でぬかるみ、両チーム泥だらけで死闘を尽くしたと伝えられる。

 さて、今回の雪のW杯予選。天気予報によれば、今日の最高気温は4度だという。プレーする選手も大変だが、寒空の下、観戦するお客さんにとっては、これ以上はないくらい過酷な観戦環境である。果たしてこの日の埼玉スタジアムには、何人の観客が集まるのだろうか――先に明かすと、公式発表で3万5130人であった。埼玉スタジアムのキャパシティーが6万3700人だから、やっと半分を超えたくらいの数字である。実際、バックスタンドにはかなり空席が目立っていた。とはいえ、これは代表人気の低下というよりも、むしろ観客数が「落ち着いた」と判断するのが妥当であろう。

 すでにW杯出場3回を果たしている日本にとって、もはやアジア予選は仰ぎ見るような高い壁ではない。それにこの3次予選は、4チーム中2位になれば最終予選進出が決まる。同組のライバルは、タイ、オマーン、バーレーン。いずれもおなじみの顔ぶれであり、さほどの怖さは感じられない。平日だし、遠いし、寒いし、そもそも3次予選だし……となれば、この時期に無理して有休をもらったり、冷たい視線を浴びながら定時退社ではせ参じる“勤め人”のサポーターは、おのずと限られよう。

 むしろこの雪の中、風邪っぴきのリスクを省みず、最終的に3万5130人もの観客がスタジアムに駆けつけてくれたという事実を、主催者はもっとポジティブにとらえるべきではないか。あらゆる状況をかんがみて、この3万5130人という数字は、決して悲観すべきものではないと思うのだが、いかがであろうか。


■「エアポケットみたいな」タイの同点ゴール


 さて、今日のタイ戦に臨む日本代表である。
 スタメンは、先のチリ戦、そしてボスニア・ヘルツェゴビナ戦を踏まえた、実に順当な顔ぶれが並んだ。GK川口、DFは内田、中澤、阿部、駒野。中盤は底に鈴木、右に中村、左に遠藤、トップ下に山瀬。そして2トップに大久保と高原が起用された。
 対するタイは、配布されたメンバー表にはGK以外、全員が「FP(フィールド・プレーヤー)」と表記されていて面食らったが、何のことはない、オーソドックスな英国スタイルの4−4−2であった。

 序盤からゲームを支配したのは、ホームの日本。相手のプレッシャーがきつくないため、かなりの時間を相手陣内でプレーし続けるのだが、なぜか前線でのプレーがシンクロしない。特に、いったんボールがサイドに流れてから中央に折り返すボールが、ことごとく相手DFにカットされてしまうのが気になる。

「サイドバックのところまで、あるいはサイドチェンジしてからは、フリーで行けるんです。けれど、今日のタイは中央に人を集めて守っていた。(中略)サイドから蹴るボールが、どうしても二アでひっかかってしまう」(岡田監督)

 思うにタイは、両サイドをえぐられるところまでは織り込み済みだったのではないか。縦のパスコースを封じ、外に出させてから折り返しのクロスを二アサイドでつぶす。その代わり、相手FWが裏を取るような動きには細心の注意を払っているように見えた。高原や大久保にボールが流れると、すぐさま追い込んで数人で囲んでボールを奪い去ってしまう。こうしたタイの組織的な守りに、前半の日本は次第に焦燥感を募らせていった。

 しかし先制したのは日本。前半21分、大久保が倒されて得たFKを遠藤が直接ゴールネットに突き刺して、底冷えのするスタンドを熱狂させる。この貴重な先制弾で、ゲームの行方は決まったかに思われた。
 しかし直後に、タイは素早いリスタートから反撃。13番のスティー・スックソムギットからのパスを受けた14番ティーラテープ・ウィノータイが、意表を突くタイミングでミドルシュートを放つ。中澤がカットに向かったが、タイ人ストライカーの右足から繰り出された弾道は、GK川口の頭上を越えて、そのまま日本のゴールネットを揺さぶった。

「あの失点はエアポケットみたいな感じだった」(川口)

 同点ゴールを決めたティーラテープ・ウィノータイは、かつてイングランドのクリスタルパレスのアカデミーに籍を置き、エバートンのユースでもプレーしていた経歴を持つ選手らしい。だが、前半のタイのシュートは、この1本だけ。そのたった1本のシュートが、一瞬のエアポケットとなって、直前の遠藤のゴールに沸いたスタンドを沈黙させたのである。これがW杯予選の怖さというものなのだろうか。
 結局、前半は1−1で終了する。

<続く>

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【関連リンク】
タイ戦後 選手コメント 08/02/06
タイ戦後 岡田監督会見 08/02/06
試合後 タイ代表チャンウィット監督会見 08/02/06

 


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