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タイ戦の鍵はサイドをえぐれるか
相馬直樹のピッチサイド分析:第2回

2008年02月06日
(文= 構成:スポーツナビ )  



■ボスニア戦に勝ったことが大事


2試合連続でスタメン出場した内田。タイ戦では、彼らサイドバックがどれだけサイドを深くえぐれるかが勝負になる 2試合連続でスタメン出場した内田。タイ戦では、彼らサイドバックがどれだけサイドを深くえぐれるかが勝負になる【 (C)Getty Images/AFLO 】
 まず、ボスニアに勝ったことはすごく大事だと思います。チームもシーズンもスタートしたばかりで、さらに本番のワールドカップ(W杯)予選のタイ戦を控えている。手放しで喜べるわけではないですが、チームが前に進むための1歩として、すごく大事な勝利だったと思います。
 ボスニアがコンディション不足だったことはありますが、その中でもボールを前で動かそうという意図が見られたと思います。特に(相手ディフェンスラインの)背後を突こうという意識が見られました。チリ戦ではパス、パス、パスとつなぐことが多かったのですが、ボスニア戦ではその先の突破にかかることが多かった。山瀬の1点目(日本の2点目)以外でも、かなり(相手の最終ラインの裏に)入り込んだシーンがありました。ボスニアの後ろの選手がきちんとカバーをしてきたので、最後の部分でフリーになり切らなかったんですが、裏へ突破しようという意識が出ていたのは良かったと思います。

 守備面では、ボスニア戦では前からのプレスが少なかったのですが、奪われたときに早く奪い返しにいくというコンセプトが、すぐに変わってしまうことはないと思います。こちらがポゼッションしている時間が長かったことと、悪い形でボールを失うこともあまり多くなかったので、プレッシャーをすぐにかける状況にならなかったということがあるのではないでしょうか。
 もうひとつは、前半20分くらいから、日本のプレスが強いこともあってボスニアがロングボールを入れてきたことが挙げられます。そういう状況になって無理して前から追いかけるとこぼれ球を拾えなくなるので、蹴られそうだったら無理に追いかけなくていい、という判断が出ていたのかもしれません。


■もっとサイドをえぐる形を作りたい


 ボスニア戦では、両サイドが(相手ディフェンスラインの)裏で受けようという意図がありました。まだ完全に(その動きを)使い切れていないんですが、サイドバックだけでなく、巻がGKと交錯したシーンも憲剛(中村)がスッと突破しているわけです。ああいう深く(敵陣に)入るシーンが、特に前半はあったと思います。それがシュートに結びついてなかったという意味で、岡田(武史)さんが「形にこだわりすぎている」と言ったのかもしれないですが、その意識は出ていたと思います。

 ボスニア戦はサイドチェンジが増えたんですが、サイドを変えた後の突破がもうひとつだったかなと思います。サイドを変えると(ボールを受けた選手は)フリーなんですけど、相手が前にいる状態なので。本当は、一方のサイドでうまく形を作って、(逆サイドの)ディフェンスラインの背後で受けたいんです。全部が全部できるわけではないですし、狙いはあると思うんですが、ボスニア戦ではただ単にサイドを変えることが増えてしまいました。そうすると、最後のボールを相手が待ち構えているところに放り込むことになるので、(引いてくると想定される)次のタイ戦を考えたときに簡単ではなくなってくる。
 どうにかしてサイドの深い位置を取る形をもっと作りたい。同サイドで崩そうとしているのはいくつかあるんですが、サイドチェンジの中でもそういうことが出てくると面白いのではないかと思います。
 前半も背後を取りにかかるんですけど、最後のシュートやその一歩手前でつかまることが多かった。そこをもうひとつ深いところまで行って、マイナスに戻すようなパスを出したい。アジアとの試合を意識して、それはかなり狙っているんです。(敵陣を)深く取れば取るだけ戻すパスは効くので、そういう形がもっと増えてくるといいと思います。

 内田は、第1戦を経て、自分がやりたいことがだいぶ出てきたと思います。ただ、内田だけの問題じゃないんですが、何度か裏で受ける形が欲しいですよね。前半35分に1回あったんですが、相手が引いてきたときに、両サイドバックが足元ではなくて、裏で受ける形をチームとして意識していく。サイドバックが足元で受けたときには、ほかの選手が裏で受けるような狙いを持ってほしいです。


■W杯予選の初戦の重要性


(W杯予選の)重圧は、本番だという思いなどで、自分たちで作ってしまうところがあります。勝って当然というのも、無言のプレッシャーだったりするんです。
 ただし、ボスニア戦で勝ったことは本当に大きいです。もしボスニア戦で勝てていない中で、W杯予選の初戦を迎えることを考えるとゾッとします。そういう意味では、前向きに入れるはずです。思い切ってやれといっても無理ですけれども、できるだけ重荷に感じずにできればいいなと思います。

 アジアでは、相手が日本をリスペクトしてくれる部分がいい意味でも悪い意味でもあります。相手は絶対に研究してくるし、その中でやっていかなければいけないので、先制点の持つ意味が大きいんです。
(初戦のタイ戦は)勝たないときつくなります。もし勝てなければ、アウエーで勝ちにいかなければならなくなる。6月の4試合に関しては時間をかけて準備ができる部分もあるんですが、オマーンとのホーム&アウエーは間が短いですし(中4日)、難しい面があると思います。最終予選の組み合わせのことも考えると1位で通過したいはずなので、初戦を勝ってスタートすることは重要です。
 今回は、中東に2回、そしてタイという暑い国にも行かなければならない。僕が代表だった時も、タイにはアウエーでやられています。暑いバンコクでデーゲームをやらされたり、ピッチがデコボコだったりするので、相手のホームは相当嫌なものです。
 ボスニア戦後の会見で岡田さんが「ある程度リスクを冒して勝負をかけていかないといけない」と言っていますが、これはどうしても“勝ちにいく”、引き分けでいいという考えはないということです。それだけ初戦の勝利が大事だと考えているんだと思います。

 鍵は、サイドをえぐることでしょう。タイがディフェンスラインを上げてくれれば、ボスニア戦のような背後への動きも生きてくると思うんですが、もし本当にベタに引いてきた場合は、サイドを崩していかないと難しい。そしてもうひとつ大事なのがシュートの意識です。多少遠くても打たないとダメ。(シュートに対して)DF1枚は出てこないといけないわけですから、相手をそうやって動かすわけです。動かしてそこを突いていけるか。ライン全体が上がらなくても、1枚でも2枚でも日本のシュートを意識して押さえに来なければいけない状況になれば、どこかに穴が開いてきます。最終ラインかもしれないし、そのひとつ手前が空くかもしれない。相手が待ち構えているからといって、そこに放り込んでいっても難しい。ゲームの中である程度、自分たちで選択肢を変えていかないといけないと思います。

<了>

1998年のワールドカップ・フランス大会を岡田監督のもとで戦った相馬氏 1998年のワールドカップ・フランス大会を岡田監督のもとで戦った相馬氏【 スポーツナビ 】
相馬直樹/Naoki SOMA
1971年生まれ、静岡県出身。日本を初めてW杯に導いた右利きの左サイドバック。日本代表時代は積極的なオーバーラップを武器に不動の左サイドバックとして活躍。加茂・岡田・トルシエと3人の監督のもとでプレー。鹿島アントラーズでは黄金時代を築き、その後、東京ヴェルディ1969、川崎フロンターレでプレーし、2005年に引退した。



【関連リンク】
チリ戦で見えた岡田ジャパンのサッカーとは 08/01/30

 


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