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◆トピックス&コラム

「谷間世代」との決別
U−23日本代表対U−23韓国代表(前編)

2004年2月22日
(文=宇都宮徹壱)  

日本―韓国 前半、ドリブルでゴール前に攻め上がる田中達=長居【共同】

■素晴らしい試合を見せてくれた両チームに感謝!


 新大阪発東京行きの最終新幹線にて、この原稿を書いている。

 長居スタジアムのプレスルームで時間を忘れて仕事をして、大慌てで地下鉄・御堂筋線に飛び乗り、泣きそうになりながらホームを駆けずり回った末に、ようやく訪れた安ど感。張り詰めた神経が弛緩してゆくに従い、今日の白熱したゲームが脳裏に蘇ってきて、ひとり笑みが漏れる。体も心もヘトヘトなのだが、それでもキーボードをたたく指のリズムは、田中達也がドリブルで刻むステップのごとく実に軽やかだ。

 いやはや、それにしてもいい試合を見せてもらった。代表戦でこれほど気持ちの良い試合を見たのは、いつ以来だろう。もしかしたら、2年前のワールドカップまでさかのぼらなければならないかもしれない。
 今回の勝利は、私にとって(そして、おそらくは多くのファンにとっても)、二重の意味でうれしい勝利であった。

 まず、あの韓国に勝利したことが、何よりも痛快である。
 告白すれば、試合前日までの私は、昨年から妙に増えた日韓戦に食傷気味であった。しかし、である。アウエー席から「テーハンミングッ(ドドンがドンドン)!」というコールを耳にした瞬間、2年前のトラウマ――もとい、鮮烈な記憶がフラッシュバックして、すぐさま私は戦闘モードに突入した。その気持ちは、ピッチ上のU−23日本代表選手諸君も同様だったはずだ。昨年の対戦では、ホームで1−1(スコア以上に力の差を見せ付けられた)、アウエーで1−2(高松のゴールが唯一の慰めだった)と、しっかり負け越している相手だ。3月1日のアジア最終予選に向けた壮行試合とはいえ、チームのモチベーションを落とさないためにも、絶対に負けられないという思いはあっただろう。
 それだけに、2−0というスコアもさることながら、一人一人の選手が、最後まで戦う姿勢を貫いたことに、私は心からの拍手を贈りたい。

 そしてもうひとつは……今さら多くを語る必要もないだろう。ヌルくて、頑迷で、新鮮味のかけらもない最近のA代表に心底辟易していた者にとって、今回のU−23代表の勝利は、極めて爽快なものとして映ったことだろう。ここ数日、代表戦にすっかり幻滅していた私であったが、今日の試合でずい分と救われた気分になった。
 何はともあれ、今日の素晴らしい勝利をプレゼントしてくれた日本の若き戦士たちに、そして同時に、コンディション不良にもかかわらず最後まで正々堂々と戦ってくれた韓国の若き選手たちに対しても、私はひとりのサッカーファンとして、心から御礼を申し上げる次第である。


■U−23代表がA代表に足りないものを教えてくれる


 ここ3試合のU−23代表を見ていて、つくづく感心させられることがある。それは、戦闘能力の高さ、戦術理解度の高さ、そして修正能力の迅速さである。
 以下、それぞれについて見ていきたい。

 まずは、戦闘能力の高さについて。
 新チームになって、いきなり挑んだイランとロシアに対し、彼らが互角以上の戦いを見せたことは賞賛に値する。そして今回、苦手意識のある韓国に対しても、ボール支配率ではやや下回りながらも、後半からは怒とうの攻撃を見せて実に9本ものシュートを浴びせた。
 確かに今回の韓国は、明らかな調整不足の観が否めず、加えて朴智星、李天秀といった海外組も不在であった。とはいえ、昨年は彼ら不在の相手に対して、日本は何ともふがいない戦いを強いられていたのである。それが今回は、一転して自信あふれるプレーで相手を圧倒し、分厚い攻撃を繰り返していたではないか。攻撃の多様さ、精度の向上もさることながら、これまでにない旺盛な闘争心がプレーから感じられるのが、何ともたのもしい。
 次に、戦術理解度の高さについて。
 今回は、いわゆる「代表組」が復帰した最初の試合となった。茂庭照幸と石川直宏は、多少のゲーム勘の欠如は見られたものの、しっかりと自分の与えられた仕事をこなし、ゲームを通して徐々にチームにフィットしていった。一方で、彼らを迎えるチームメートも「だれが入っても、チーム戦術がしっかりしているから同じですよ」と、まったく不安を見せない。山本昌邦監督のビジョンをメンバー全員で共有し、選手の間でディスカッションしながら可能な限り正確に具現化していく――その能力が、実に図抜けているのだ。

 そして、修正能力の迅速さについて。
 今回の韓国戦でいえば、前半の平山相太の頭を狙う戦術から、後半は松井大輔を投入して相手DFを引っ張り出し、バイタルエリアにスペースを作って2列目以降の選手の飛び出しに活路を見いだす戦術に切り替えた。結果、この戦術変更が功を奏したわけだが、このチームはそうした修正を迅速に実行することができるのである。

 もちろん、こうしたことが可能なのも、1)個々のベースとなる技能がしっかりしていること 2)正当な選手間の競争原理が機能していること 3)チームのコンセプトが明確であること――以上3点があって初めて実現できるものなのであろう。
 こうして考えると、現在のU−23代表は、A代表が忘れかけているものを明らかにしているようにさえ思える。確かに1)は、A代表の方が優れているのかもしれない(当たり前だ)。ついでにいえば、経験値についても比べるべくもない。だが、少なくとも2)と3)が、U−23代表の強さの下支えになっていることは明白である。それを忘れた(あるいは度外視した)現在のA代表が、それと引き換えに何を得たのか――。
 私に言わせれば、それは絶望的なカオス(混沌)と、不健康なスリルにほかならない。

<後編に続く>


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