スペースではない「ウラ」を突け
U−23日本 0−0 U−23カメルーン
■意外性のないスコアレスドロー
スタンドは涼しいというよりも寒かった。19度という気温にふさわしくない薄着の観客は、身震いしながらU−23日本代表と同カメルーン代表が対戦した国際親善試合の行方を見守った。そんな中、ハーフタイムに記者席を離れて通路へ出ると、30代そこそこと思われる男性に腕を絡めながら歩く若い女性とすれ違った。寒いからなのか、予定があるからなのかは知らないが「点は入らなかったけど、面白かったね」という過去形は、後半を観戦しない様子だった。ただ、その言葉は後半を見たとしても変わらなかったに違いない。
前半に記録されたシュート数は、日本が7、カメルーンが2。そして後半もそれぞれ同数をマーク。見る側としては日本の得点が生まれるのを待つばかりだったのだが、結果は0−0の引き分けである。決定機を何度か迎え、スタンドが一瞬も盛り上がらなかったわけではないのだが、すでに数年にわたりA代表を含めて「決定力不足」なる言葉を散々聞かされているファンにとって、意外性のない試合だったことは否めない。
■最終テストマッチで得た手ごたえ
もちろん、試合内容が悪かったという意味ではない。無失点に抑えてチャンスメークができたという、手ごたえを得た試合でもあるからだ。また、この試合は「五輪登録メンバー選考前の最終戦」である。つまり、選手選考のチェックという意味合いが強かった。14本のシュートを放って0得点なのだから、守備が安定しなければ「勝負」の土俵に上がることすらままならない。センターバックに起用された吉田麻也(名古屋)は1対1で相手を抑え込むなど良い働きを見せていたし、右サイドバックに入った森重真人(大分)も危険の芽を早めに摘んだ。前半30分に相手の右コーナーキックから訪れた唯一にして最大のピンチを、スーパーセーブでしのいだGK西川周作(大分)も含めて、最終メンバーへの生き残りに向けて守備陣は存在を大きくアピールした。
攻撃面でも得点の予兆がなかったわけではない。特に試合後、選手に話を聞くと、ボランチを使ったサイドチェンジによる攻撃展開には手ごたえを感じたようだ。確かに、この試合で最も惜しかったシーンのひとつは、右サイドを攻めた後に本田拓也(清水)を経由してサイドを変えたプレーから生まれた。左サイドバックの田中裕介(横浜FM)が本田圭佑(VVV)とのワンツーで駆け上がって入れたクロスに、梅崎司(浦和)がよく抑え込んだボレーを合わせたものの、相手GKに惜しくも防がれた場面だ。
■「奥の手」になり得る、意外性ある選手はいるか
試合運び自体は悪くない。ただ、あとほんの少し、相手ゴール前で危険な香りが欲しい。試合前日、反町監督はFWについての言及で「攻撃においては、相手にとって最も危険なプレーができることが大事。一番最初に動き出して一番危険なところに入っていける、ボールをもらえること」と話した。それは主に相手ディフェンスの裏への飛び出しを指しているが、何より「相手にとって危険」なのは、予測していない状況に陥れられることではないか。反面教師として、この日のカメルーンは身体能力で勝りながら、特に変化もなく、ゴール前への放り込み以外にチャンスはなかった。約束事は大事だし、遂行力も重要ではあるが、どうしても得点が必要という場面を想定するならば、与えられた役割・範囲を超えて勝負を仕掛け、日本の「奥の手」として機能する選手が現れることを期待したい。
例えば、サイドバックが攻撃参加したシーンは、相当に効果的だった。ワントップで溜めがうまく作れないために回数は多くなかったが、どちらかのサイドが通常の判断基準よりも積極的に上がる時間帯を作っても良いように思う。また、先発した森本貴幸(カターニア)は健闘していたが、くさびに入ったプレーで一度はターンを仕掛けても良いだろう。あるいは、結局1本もシュートを打たなかった梶山陽平(FC東京)、本田拓の両ボランチが攻撃参加するか多少無理があってもミドルシュートを狙う機会があってもいいはずだ。本田圭は「コンセプトはパーフェクトだが、個人技がまだ足りない」と話したが、その個人技には個々の駆け引きも含まれるだろう。夏日の合間の涼しさのように意表を突けば、さぞかし相手に嫌がられるはず。相手ディフェンスの「ウラ」を狙うのもいいが、相手の読みの「ウラ」をもう少し狙ってみてはどうだろうか。
<了>
・カメルーン戦後 反町監督会見 (2008/6/12)
・カメルーン戦後 U−23選手コメント (2008/6/12)
・試合後 U−23カメルーン代表エンピレ監督会見 (2008/6/13)




