初タイトルをもたらしたもの(1/2)
東アジア女子選手権 日本代表対中国代表
2008年02月25日
宇都宮徹壱
■地元メディアが注目する中国女子代表だが……
2月最後の日曜日。17日に開幕した東アジア選手権も、この日の女子の第3戦で閉幕を迎える。翌日の夜には日本に帰国。当地の激辛の料理とも、ほこりっぽい風景とも、そして怒鳴り合うような騒がしさとも、この日でおさらばである。
女子の会場、永川スタジアムで行われた第1試合は、韓国対北朝鮮。前半こそは0−0ときっ抗したゲームに見えたが、後半は北朝鮮の圧倒的な攻撃力に抵抗するすべもなく、終わってみれば4−0で北朝鮮の圧勝であった。よくまあ日本は、こんな強豪に逆転勝ちしたものである。現在、最も優勝に近いポジションにいる日本だが、それもこれも、あのロスタイムでの澤のスーパーゴールがあればこそである。
試合終了後、第2戦に出場する日本と中国のメンバーが、ほぼ同時にピッチに現れる。満員のスタンドは大歓声。この日は日曜日とあって、約2万5000人収容のスタンドはほぼ満員となっていた。日本ではちょっと想像がつかないが、中国では女子代表の人気は、男子のそれをしのぐとさえ言われている。最近ではFIFAランキングで北朝鮮と日本に抜かれたとはいえ(最新のランキングでは、北朝鮮6位、日本11位、中国13位、韓国25位)、それでも男子に比べれば世界の強豪であることは間違いない。加えて、昨年地元で開催された女子ワールドカップ(W杯)、そして今年の北京五輪の影響もあり、地元のメディアも連日、女子代表のニュースに多くの時間と紙面を割いていた。
さて、これまで日本にとり、中国は天敵そのものであった。しかし2006年のオーストラリアでのアジアカップで1−0で9年ぶりの勝利を飾ると、同年にドーハで行われたアジア大会でも1−0で快勝。タフな試合が予想されるアウエーでの対戦だが、3連勝も決して夢ではないだろう。
日本のシステムは、いつものように4−4−2。GKは山郷。DFは右から近賀、池田(旧姓・磯崎)、岩清水、柳田。MFは大野、澤、阪口、宮間。そしてFWには、荒川と永里。前回の韓国戦で右MFに起用されていた近賀は、再びサイドバックに下がり、それまでトップだった大野が右MFに入った。このポジションは、今なお佐々木監督にとっては悩みのひとつらしい。それ以外で目に付くのは、今大会初出場となる池田だろうか。結婚して姓を変えて、初めてのスタメン。やっぱりキャプテンマークがよく似合う。
現地時間16時30分、今大会最後の試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
■これ以上ない理想的な展開で中国に完勝
前半は完全に日本のペースで進む。前線での積極的なプレッシングから、荒川が果敢にインターセプトに挑み、そして永里と大野が貪欲にシュートを狙っていく。あらためて、日テレ・ベレーザのFW3人が並び立つ光景というものは壮観である。
19分、ついに日本が先制する。オフサイドぎりぎりの地点から、永里が右サイドを抜け出してクロス。これを大野が冷静に流し込んで1−0とする。
その後も完全に日本のペース。時折カウンターを受けることがあっても、ボールポゼッションではるかに中国を上回り、積極的に仕掛けてはシュートを放っていく。逆に後半、攻め疲れが出ないかと心配するくらいであった。
中国で警戒すべき人物はFWの9番ハン・ドゥアンだろう。がっちりした体格で、スピードもある。日本の選手がまともに当たりにいったら、たちまちボディコンタクトの強さと尋常でない突破力でぶっちぎられていたことだろう。また、両サイドの選手が虎視眈々(こしたんたん)とディフェンスの裏を狙っているため、、近賀と柳田はうかつには攻撃参加できない。それでも中国のカウンターに対しては、池田を中心にすぐさまボールホルダーを囲み、次々とボールを奪いに行くことで、体格とスピードに勝る相手の侵入を許さない。38分には11番のシェ・ツァイシアの右からのクロスを22番のシュー・ユアンがダイビングヘッドで合わせるが、幸いシュートはポスト左に逸れる。
最大のピンチをしのいだ日本は、43分に追加点を挙げる。左コーナーキックからいったんは中国守備陣がクリア。そこからカウンターを仕掛けようとしたところを、澤が勇敢な飛び出しからインターセプトし、すぐさまシュート。いったんはGKがはじくも、大野が詰めてネットを揺らす。その後の場内アナウンスでは、最初のシュートの段階でゴールラインを割っていたという判断があったのか、「澤のゴール」と発表されたが、これは大野のゴールに変わった。前半は理想的な展開のまま2−0で終了。
後半、中国は178センチの長身FWのグオ・ユエを投入。3トップにして、パワープレーとドリブル突破で日本守備陣を蹴散らそうと試みる。しばらく押し込まれる展開が続いたが、中国はパスもコンビネーションもあまりにも雑で、散発的な攻撃はすぐさま日本に見切られてしまう。そして後半10分、日本がダメ押しの3点目。この日、左サイドで躍動感あふれるプレーを見せていた宮間が、対角線上の大野に正確なパスを送り、大野からのクロスに永里が豪快なヘディングシュートを決める。それまで何とか闘志を保っていた中国も、この鮮やかな3点目にすっかり意気消沈。スタンドからの声援も念仏調に変わり、濃密なアウエーの雰囲気はすっかり霧散してしまった。
その後、15分には荒川が、そして36分には途中出場の安藤が、いずれも惜しいシュートを放つなど、後半も日本が完全にゲームを支配。これ以上ない理想的な展開で、宿敵中国に完勝するとともに、3試合全勝で見事、東アジア選手権優勝を果たした。日本女子の国際タイトル獲得は、これが初。日本はさらにフェアプレー賞を獲得し、大野は大会得点王、そして澤には大会MVPがそれぞれ授与された。何はともあれ、おめでとう、なでしこジャパン! いやはや、本当にいいものを見せてもらった。
<続く>
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・中国戦後 なでしこ選手コメント 08/02/24
・中国戦後 佐々木監督会見 08/02/24
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