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なでしこが五輪予選を突破するための鍵とは (1/2)
風間八宏氏が語るW杯で見えた今後への課題

2011年8月31日(水)
米国戦で同点ゴールを決める澤(10番)。このシーンに象徴されるように、技術の高さが他国との差を生んでいた
米国戦で同点ゴールを決める澤(10番)。このシーンに象徴されるように、技術の高さが他国との差を生んでいた【写真:PanoramiC/アフロ】

 日本中を歓喜の渦に巻き込んだ女子ワールドカップ(W杯)優勝から1カ月半。日本女子代表(なでしこジャパン)は9月1日から、来年開催されるロンドン五輪アジア最終予選に臨む。予選にはW杯でベスト8に進出したオーストラリアや、同大会に出場した北朝鮮(グループリーグ敗退)といった難敵がそろっており、2枠という出場枠から考えても、厳しい戦いになることは必至だ。空前の“なでしこブーム”により、各メディアで選手たちの露出が増え、コンディションの低下が懸念される中、11日間で5試合という過密日程を乗り切り、本大会出場権を獲得できるのか。不安はぬぐえないところだろう。

 しかし、解説者の風間八宏氏は「自分たちのサッカーをやり通せば問題ない」と語る。予選突破への鍵は一体何なのか? W杯優勝の要因を振り返りつつ、予選や今後に向けての課題などを風間氏に語ってもらった。(取材日:8月21日)

■技術の差がスピードの違いを生んでいた

――まず、なでしこジャパンが女子W杯で優勝できた最大の要因は何だったのでしょうか?

 ほかの国とは違って技術主体のサッカーをしたからだと思いますね。相手とそんなにコンタクトをしなかった。ボールを止める技術や、パスをしっかりと通す技術で差をつけていました。この差がスピードの違いを生みましたよね。例えば、準優勝した米国は体が強いし、走るスピードもあるけれど、ボールと一緒に進むスピードがそれほどなかった。彼女たちとコンタクトすれば向こうの方が強いんですけど、日本はそういうサッカーしなかった。そこに一番の要因があったと思います。

――攻撃ではテクニックを生かしたパスワークで相手を崩し、守備では走力や戦術理解力という長所を生かした前線からのゾーンプレスが特徴的でした

 彼女たちはボールをキープするのがうまかった。攻撃と守備を分けて考えるのではなく、サッカーをどう考えるかだと思うんです。当然、自分たちがボールを保持してサッカーをするわけで、取られたらすぐ奪えばいいし、逆に奪わないとカウンターを食らって危ないシーンを作られる。何よりポゼッション率がどのチームと対戦したときも高かった。それで守備をする時間も少ない。こっちが攻めれば、相手は当然崩れているわけです。たとえボールを奪っても、そこからすぐに攻めていくのは難しい。それが守備をする上でも役立っていましたね。

――ボールをキープして攻め込んでいるから、たとえ奪われて守備に移っても必然的に高い位置でプレスを掛けることになったということですね

 そうですね。攻撃を中心に考えていると、ボールを奪われたときのやり方も決まってくる。彼女たちが違う位置で意識せずに守っているときは、相手にやられているときなんです。ドイツ戦はきつかったと思いますけど、ほかの試合では攻め勝っていたと思うんで、相手の攻撃はあまり威力がなかった。守備に限って言うと、攻撃が最大の防御となっていたんじゃないかと思いますね。

――W杯中、なでしこジャパンは現地で「女子のバルセロナ」という表現を使われていましたが、バルセロナとの共通点はどういった点が挙げられるのでしょうか?

 ボールをキープしている時間が長いというところは共通点の1つではあるんですけど、バルセロナとはやはり違います。男子と比べるとスピードはどうしても劣る。女子サッカーはパススピードでも差がつきますよね。それからボールを止める技術ですごく差がつきやすい。男子の場合、それだけではなく相手の力をどう利用して逆を突くのかが大事になってくる。とはいえ、ボールを持ってサッカーをすることがどういうことなのかを、日本は女子の中で初めて体現したんじゃないかと思います。

■弱点はボールを取られてからのカウンター

――なでしこジャパンのウイークポイントはどういった点にあるんでしょうか?

 しっかりとパスをつないでいくチームなので、ボールを取られたときにはみんなが動いていて、バランスが崩れている。そこをカウンターでやられてしまう。それが一番大きなウイークポイントだと思います。失点もほとんどがそのパターンです。だからボールを失わないように、個々の技術をもっと上げていくというのが今後への課題ですね。

――日替わりで新たなヒロインが誕生していましたが、欧州でプレーしている永里(優季)や安藤(梢)の良さを生かせていないような印象を受けました。その理由はどういったところにあったんでしょう?

 センターFWとしての難しさがあったように思います。永里は出たり出なかったりでしたし。監督としては、もう少し前線での動きがほしいとか、そういうことだったと思うんですけど、それは彼女が悪いわけではないですし、良かったところもあった。安藤に関しては、日本のチャンスはほとんど彼女の動きでつくっていたんで、力を発揮できていないわけじゃなかった。ただ点が取れなかった。それだけだと思いますよ。

――なでしこジャパンの戦術を考える上で、どの選手のどういったプレーがキーになっていたんでしょうか?

 簡単に言うとみんなの個性が生きたと思うんです。苦しい試合のときに、点を取るのは澤(穂稀)なんですけど、試合を落ち着かせるのは宮間(あや)と阪口(夢穂)でした。この2人がボールを落ち着かせることで、相手の勢いを止めたり、自分たちのリズムをもう一度作り直したりできる。宮間に関しては、女子の中でたぶん1番のFKを持っている。それから彼女たちの良さは、自分たちで攻撃を作っているところ。何かをやらされているんじゃなくて、自分たちで攻撃の発想をつくっている。そこが強さだと思います。

――今まではドイツや米国のようにフィジカルに優れたチームが勝ってきました。今回日本が優勝したことで、次回以降のW杯ではまた違った傾向が見られるようになるんでしょうか?

 どうでしょう。それぞれ環境が違うんで一概には言えないと思います。日本は学生時代に男子と一緒にやっているから技術は高くなっていった。そして、選手たちが五輪やW杯で頑張ってきたから目指すものが増えた。前はこんなに技術はなかったし、ボールも蹴れなかった。それが着実にレベルが上がってきて、ついに開花した。ボールもすごく蹴れるようになったし、宮間みたいな選手も出てきた。それが日本の土壌なんですよね。

 その一方で、米国やドイツは女子サッカーが1つのスポーツとして成立していると聞きます。女子の中だけでやるという環境で、彼女たちがそう簡単に技術を身に付けられるか。それはなかなか難しいと思います。日本はすごい環境が悪いと言われているけど、学校があるから決して悪くない。こういった環境をうまく生かしながら技術をもっと徹底してつけていけば、日本とほかの国の差はもっと大きくなると思いますね。

 <続く>


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