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◆トピックス&コラム
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エンターテインメントとしての代表戦 (2/2)
日本代表 1−0 パラグアイ代表
■パラグアイ戦で明らかになった日本の方向性
かくしてW杯での最後の相手パラグアイに、日本は見事に90分で勝利し、4年後のブラジル大会に向けて幸先の良いスタートを切ることができた。W杯という極限状態と、国内でのノンタイトルマッチを単純比較すべきではないことは重々承知しているが、それでも、今回のパラグアイがほぼ一線級の選手をそろえてきたことを思えば、十分に評価できる結果であったと言えよう。とはいえ、ここで忘れてならないのが、9月の2試合は「ザッケローニへの引き継ぎ」が主な目的であることだ。では、新監督に引き継ぐべき日本の方向性とは、どのようなものであったのか。技術委員会主導による今回の選手選考、そして選手たちがピッチ上で見せたパフォーマンスから、以下の3点が浮上してくる。
(1)世代交代
まず特筆すべきが、今回の選手の平均年齢である。ベンチを含めて26.1歳、スタメンに限れば25.4歳である。W杯のメンバー23名の平均年齢が27・8歳だったから、2歳以上若返ったことになる。今回のスタメンで30代は中澤のみ。その次に年長なのは松井と中村憲でいずれも29歳。一方で北京五輪世代が、過半数の6名を占めたのも何とも感慨深い。1979年生まれの「黄金世代」が現役時代の晩年を迎えつつある今、世代交代の波が一気に押し寄せるのは間違いないだろう
(2)新戦力の発掘
このパラグアイ戦では、細貝が初キャップを刻んだほか、栗原と岩政大樹(後半23分)と槙野智章(後半44分)が、それぞれキャップ数を3に増やした。細貝はこれからもチャンスがあるだろうが、問題はセンターバックの3人である。いずれもJリーグではそれなりのキャリアを積んでいるのに、代表戦はやっと3試合目。それだけこのポジションは、中澤と田中マルクス闘莉王の寡占状態であったのだ。もちろん中澤も闘莉王も、国内屈指のセンターバックであることは間違いないが、彼らが4年後も盤石の守備を見せてくれる保証はない。この機会に、じっくりと後継者候補を試してもらいたいものだ。余談ながら、先ごろ代表からの引退を発表した中村俊輔の不在は、この試合ではあまり感じることはなかった。中盤の人材については、さほど心配する必要はなさそうである。
(3)海外組の成長
海外での経験は、そのままプレーへの自信に直結する。香川しかり、長友しかり(内田については、まだまだ本領を発揮できていないと思う)。ほんの3カ月前までドメスティックな選手であっても、当人の努力と意欲次第では、短期間でも十分に潜在能力を伸ばせることを、彼らは見事に証明してみせた。思えばスタメンに海外組が7名も名を連ねるのは、ジーコ政権下以来のことであろう。これに、先ごろ海外移籍が決まった阿部勇樹(レスター)や矢野貴章(フライブルク)、さらにはアーセナルへの加入が見込まれる宮市亮(中京大中京)の世代が加われば、4年後は随分と明るいものに感じられる。
■代表戦のもうひとつのあり方を見せてくれた原監督代行
何、楽観的過ぎる? いやいや、決してそんなことはあるまい。むしろ4年のタームで考えるならば、今が最も未来を楽観視できる数少ないチャンスである。今から悲観していてどうする? と言いたいくらいだ。
ここで思い出してほしい。国内で行われた代表戦で、これほど内容と結果に一定以上の満足が得られて、笑顔で帰路に就くことができたのは、いつ以来であろうか。「勝利」ということで言えば、今年3月3日に行われたバーレーン戦(2−0)以来である。ただしこの試合は、アジアカップ予選の消化試合であったにもかかわらず、岡田監督の進退問題と相まって、実に余裕のない試合内容となってしまった。当時と比べれば、今回のパラグアイ戦はゴールこそ少なかったものの、極めて娯楽性に満ちたゲームであった。ライトファンも「また見に来ようかな」と少なからず思っただろう。
今回の強化試合が、結果として極上のエンターテインメントとなったのは、原監督代行の手腕に負うところが大きい。しっかり結果を出す一方で、最後には駒野友一をピッチに送り込むサービス精神も忘れない。この日、スタンドを埋め尽くした6万5157人の観客の中で、W杯での駒野の涙のPK戦を知らぬ者はいなかったはずだ。背番号3がピッチに足を踏み入れた瞬間、会場はこれ以上ないくらい温かい拍手で包まれた。原博実という人は、こうしたファンサービスを巧みにさい配に織り込むことに長けている人なのだと思う。試合後の会見でも、香川のゴールについて質問されて「いい時間帯で決めてくれました」と答えていたのも、あの人ならではの機微だったのだと思う(意味が分からない人は「原 いい時間帯」で検索してみてください)。
代表戦とは、結果重視の禁欲的なゲームが、その大半を占める。今年に入ってからW杯に赴くまでの代表戦は、まさにそうしたカタルシスに乏しい試合内容ばかりであった。もし本大会での歓喜がなかったら、この日の代表戦に果たして6万人を超える観客が訪れていただろうか。確かに代表戦は、結果が第一である。だが一方で代表戦は、時にエンターテインメントを重視してもよいのではないか。とりあえずこの9月シリーズは、そうした試合が許される数少ないチャンスである。2日後のグアテマラ戦でも、そんな代表戦を「ヒロミジャパン」もとい、原監督代行が率いる日本代表に求めたい。
<了>
・香川「シュートへの意識をもっと強く」=談話 (2010/9/5)
・原監督代行「香川はかなり成長すると思う」 (2010/9/5)
・パラグアイ監督「日本のGKが良かった」 (2010/9/5)
宇都宮徹壱
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)。近著『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。自身のWEBサイト『徹壱の部屋』(http://supporter2.jp/utsunomiya/)でもコラム&写真を掲載中。また、有料メールマガジン「徹マガ」(http://tetsumaga.sub.jp/tetsumaga_official/)も配信中
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