◆トピックス&コラム
中田徹
スポーツナビ

オランダ人の見た日本代表の弱点 (2/2)
選手、解説者のコメントを振り返る

2009年9月7日(月)

■本田効果で内田の前に生まれたスペース

日本の自滅もあり、オランダは後半に得点を重ねた
日本の自滅もあり、オランダは後半に得点を重ねた【Photo:Action Images/アフロ】

 ハーフタイム。日本は「前半以上にプレッシャーをかけないと、最後はオランダのエンジンがかかってきてやられるぞ」と話し合っていた。一方のオランダは、ファン・マルワイク監督が「今日の試合内容は悪い。しかし、こういう試合から勝つことを学ぼう」と選手に目標付けをしていた。
「僕らは後半に入ってもやることを変えていない。前半やろうとしたことを、後半そのままやっただけ。ハーフタイムにも『やり方を変えろ』という指示はなかった」(デ・ゼーウ)
 日本の選手は「後半、オランダは相当ハーフタイムに監督から言われていたはず」と感じていた。しかし事実は、「後半は日本が疲れていた分、オランダはきっちり普通に試合ができるようになった」(カイト)のである。日本の自滅だった。

 面白かったのは、本田が左サイドで起用されるとオランダの陣形が本田側に偏ったことだ。それだけオランダも本田を警戒していたのだろう。その結果、右サイドバックの内田の前に大きなスペースが自然に生まれていた。
 内田の対面(トイメン)は、後半から出場し初代表を記録したエリアである。エリアは背後のスペースをきちんと守れるウインガーだが、内田の攻め上がりにつかなかった。その結果、エリアは「楽しくサッカーをする」(エリア)ことに成功し、再三左サイド(日本にとっては右サイド)を突破し、2アシストを記録した。前半はロッベンを完封した内田だったが、後半はハンブルガーSVで活躍するエリアに完敗した。

 中村憲剛の説明が分かりやすい。
「オランダのバランスは4−2−3−1のままきれいだった。サイドバックは味方のウイングを追い越してこない。しかし篤人(内田)、佑都(長友)が上がった後のスペースを突いていた。そこで日本のサイドバックが攻め切れれば、2対1の優位を作れる。オランダのウイングが守備に戻ってくれば2対2となり、カウンターを受ける危険性が減る。しかし日本は後半、その手前でボールを失うことが多くなり、オランダの左右のウイングもサイドの守備につかなくてもいいという感じだった」

 闘莉王が「面白かったけどね。気付いたら0−3だった。そんなにやられた感じはしなかったんだけど、結果は結果。完敗です」と悔しそうに言う。
「勝負どころ、最後の精度というところ。2点目(スナイデル)、3点目(フンテラール)がそう。あそこでピンポイントで合わせて、ああいうキックが蹴れる。ちょっと違いを感じます。普通にブロックしているところでも、上からかわしていく感じが見事」

 そこは中村憲も同じ意見。
「めちゃくちゃオランダにチャンスを作られたわけじゃないけれど質が……。CK(1点目)もそう。スナイデルのシュートもそう。ふだんJリーグでは見ない。3点目のクロスもそう。フンテラールの佑二さん(中澤)から逃げる動き。佑都と佑二さんの間だから、また捕まえにくい。そこへピンポイント。シュート自体はきれいじゃないけれど、しっかりゴールへ入れるのが能力」

■1つのトーナメントを戦い抜く答えは……

 そして見えてきたいろいろな日本の弱点。その1つは、1点リードされると日本のプレッシングサッカーはあまりにもろいこと。
「オランダは1点取った後、スッと落ち着いた。多分、守備のポジションを1列下げたと思う。そこからカウンターに切り替えたはず。確かに先に1点取られたら厳しい。(オランダのようなチームは)ああいう試合運びがみんな体に染み付いているから、全く迷いがない。
 前半のオランダは、どことやってもそうなんでしょうけど、日本に守られているときに(ロングボールを)蹴ったり、GKまで何度も戻してつなぎまくったり。(8月の)イングランド戦でもGKとセンターバックが三角形を作って、誰かが来たところで穴ができるから、そこを突こうとしていた。イングランドは行かなかったけど、日本は行った。日本は自分たちのサッカーを出さないと見えてこないところがあるからそれを出した」(中村憲)

 そして誰にとっても明らかなのが、プレッシングサッカーによる体力の限界。岡田監督は「前半の激しい運動量のサッカーが持たないのは分かっているが、持たさないことには世界にかなわない」と言う。ならば、もっと中盤でコントロールする時間帯を意識して作るべきではないか。日本には遠藤という気の利いたMFがいる。遠藤はどう考えるか。
「基本的には高い位置からというのがチームの約束事で大前提。状況に応じて下がる部分はあるんで、そこの意思統一はもっとやっていかないと。でもやはり前からという“軸”はぶらさずにやっていきたいと思います」

 南アフリカW杯までに日本は1試合を戦い切るだけのプレッシングサッカーを完成できるのか。しかし、忘れてならないのは、W杯という舞台は短期連戦である。消耗・回復・消耗・回復を短期間で繰り返す中、1試合あたりのプレッシング量も下がっていくのは間違いない。

 ロシア代表にはフェルハイエンというオランダ人のコンディショニングのエキスパートがいる。ユーロ(欧州選手権)2008の準々決勝でロシアはオランダを下したが、この時、ロシアはグループリーグ最終戦から中2日という厳しい環境だった(オランダは中3日)。それでもしっかり、フェルハイエンはチームのリカバリーを成功させたのだ。
 今、オランダ人指導者はフェルハイエンが記したコンディショニングの分厚い教本を読み込んでいる。今1試合を戦い切るのに四苦八苦している日本が、果たして1つのトーナメントを戦い抜く答えを用意できるのか――。その裏付けが見つからない。
 くしくもオランダも日本もW杯の目標は同じ。ベスト4だ。

<了>

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中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。メキシコW杯を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。2002年、06年、10年ワールドカップ、ユーロ2004、08をはじめ、オランダリーグのコラムなどをリポートしている

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