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スポーツナビ
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「冴えた先手必勝」と「思わぬ彷徨」
高円宮杯(U−18) 広島ユースvs.流経大柏
2007年10月08日
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高円宮杯第18回全日本ユース(U−18)サッカー選手権大会の決勝戦が8日、さいたまスタジアム2002で行われ、流通経済大学付属柏高校(以下、流経大柏)が1−0でサンフレッチェ広島FCユース(以下、広島)を下して初優勝を飾った。
■先手必勝のプレッシング
広島ユースを破って初優勝を決め、喜ぶ大前(右から2番目)ら流通経大柏高イレブン=埼玉スタジアム【 共同 】
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ピッチの上の“チャンネル”は、シビアなサッカーのままであり、ドラマが入り込むすきはなかった。後半7分、流経大柏のFW大前元紀が左サイドから送り込んだグラウンダーのクロスは、見合って動きの鈍った相手DFとGKの間をすり抜けて中央へと通り、MF小島聖矢が押し込んで流経大柏が先制した。そして、流経大柏がそのまま90分間を押し切り、広島のサッカーをシャットアウトした。試合後、公式記録を手にしてがく然とした。広島は強烈な攻撃力で、決勝まで他チームを蹴散らしてきた。その強豪Jユースの記録欄にあるシュート数は、MFの横竹翔、内田健太がそれぞれ2本ずつ放った計4本だけだった。試合の終盤はパワープレーに打って出たが、それでも同点あるいは逆転するという劇的なドラマは、現実になることはなかった。広島の森山佳郎監督も「今年、これだけ何もできずに負けたというのは、記憶にない。大舞台の経験はこちらの方があるので、相手を飲み込むスタートを切れたら良いと思っていたが、反対に飲み込まれてしまい、最後まで取り戻せなかった」と肩を落とすばかりだった。
試合前、流経大柏が先手を奪えば逃げ切る可能性はあると感じながらも、広島が優位に立つ展開を予想していた。3枚のMFは、パワープレーに強い横竹、ミドルシュートが打てる内田、パス出しと飛び出しができるMF岡本知剛と武器が多く、ウイングはドリブルで相手を引きずるだけの力を持っている。相手に守られてもサイドバックが攻撃参加をすれば崩し切る破壊力がある。いずれかの攻撃パターンによって、流経大柏の素早いプレスがリズムを崩すのではないかと考えていたのだ。だが、流経大柏は乱れるどころか、途中出場組の元気で勢いを増すほどだった。準決勝でも感じたことだが、技術とスピードのあるチームが気持ちに余裕を持つと、手がつけられない。相手の焦りを巧みに利用し、パスやフェイント、ドリブルで相手をとことん翻ろうする。彼らは決勝戦でも最後まで試合のペースを譲らない強さを見せ付けた。
「やってきたことをよく出せていた。ボールは一つしかないのだから、とにかく早く寄せて奪い、ボールと人を素早く(囲まれないように)動かす。普段から小さな(コートでの)ゲームでタッチ数を少なくして、その後にコートを大きくしていく練習をしている」 流経大柏の本田裕一郎監督の話を引用すれば“そのままコートを大きくした”ものが、まさしく今日の試合だった。メーンスタンドの高い位置にある記者席からは、その特徴がよくうかがえた。前線から積極的に相手(ボール)を追い、パスのコースが限定されると、流経大柏のアウエー用のグレーのユニホームが占める面積は一気に縮まった。広島の攻撃陣はすかさず2枚、3枚と寄せるDFに選択肢を削られ、苦し紛れのプレーからは、さらにその先の選択肢を奪われた。また、高い位置でボールを奪えば、ワンタッチ、ツータッチによるワンツーなどのパス交換で密集地を抜けてゴールに迫り、低い位置でボールを奪うと、面積をパッと大きく広げて、相手のいないエリアへとボールを運んだ。得点が生まれたのは後半だが、前半の15分を迎えようとする辺りには、流経大柏の「先手必勝」パターンがすでに確立されていた。
■力を出させてもらえなかった広島
それにしても、広島はなぜこれほどの完敗を喫することになったのか。じれたウイングが中央へと個人技で仕掛けてはボールを奪われる様子に、これまでの迫力はみじんもない。組み合わせたことのない両チームの色を混ぜた時に、まったく思いもよらなかった色がフィールドに広がり、そのことに驚いているかのようで、焦りと困惑が見え隠れしていた。
ある記者が聞いた。 「力を出せなかったのか、力を出させてもらえなかったのか」 横竹は、しばらく悩んだ後で「力を出せなかった」と答えた。それは、後者が現実だと認めることを拒否するための言葉に違いなかった。引いて守られたわけでもないのに行く手を次々に阻まれ、最大の持ち味である攻撃力を完ぺきに封じられた。“相手の良さを消す”というのは、よく用いられる一つの作戦だが、この試合の場合は、流経大柏が自分たちの良さを出すことが、そのまま広島の良さを消すことに直結した形で、いたって自然に生み出された効果だった。だからこそ、広島は落とし穴の出口がなかなか見えず、ついにはい出すことができなかった。先にも列挙したように、広島の攻撃には幅がある。広島の選手たちは「ビルドアップの時に前線からパスコースを切ってきて、頭の良いプレスを仕掛けてくると感じた」(横竹)と危機感を覚えたが、対処法が見つからなかったというのは、一種のパニックに陥っていたということだろう。
初優勝した流経大柏は、選手全員があこがれを抱く冬の高校選手権で全国大会2冠を狙う。だがその前には、インターハイを制した市立船橋など強豪がひしめく千葉県予選が待っている。積極的なプレスで主導権を握り、先制点を奪って伸び伸びとスピード&テクニックを生かすスタイルが通じている間は良い。 ただ、本田監督は準決勝の後にこんなことを言っていた。 「ここしばらく前半で1点が取れているが、何か気に入らない。前半は0−0で良いと言った」 先制点が取れなくてもあせることはない、というだけの意味であったかもしれない。しかし、その言葉は今後に待ち受けている課題の暗示だったのではないだろうか。 この日の広島がそうであったように、経験したことのない落とし穴につまずくことは、どんなチームにも起こり得る。その時に、混乱から立ち直って勝利をつかめるかが、2冠を目指す上での鍵になってくるだろう。
<了>
関連リンク
・クラブか、それとも高校か=浦和ユースvs.流経大柏 07/10/06 ・逢魔が時=広島ユースvs.名古屋U18 07/10/06 ・綻び=流経大柏vs.青森山田 07/09/25
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