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第81回全国高校サッカー選手権大会第81回全国高校サッカー選手権大会

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sportsnavi 徳原隆元



逆境の中でサッカーを楽しめる“逞しさ”
<1回戦 地球環境(長野)vs立正大淞南(島根)>



選手に話をする地球環境高サッカー部の松本育夫監督(左から2人目)【共同】
■高校サッカーをどのように見るべきか?


 今年も全国高校サッカー選手権大会の時期がやってきた。冬のサッカーの風物詩ともいえる伝統ある大会だが、普段カメラマンとしてピッチにいる僕は、恥ずかしながら記者席に座っての取材は今回が初めてである。

 そのため、どういう姿勢で取材に臨もうかといろいろと考え、迷っていたのだが、12月28日に行われた天皇杯準決勝の京都サンガ対サンフレッチェ広島戦に、その取材方法のヒントがあった。試合後の記者会見で、京都サンガのエンゲルス監督は、若手中心のチームに対して、成長のためには多少のミスには目をつぶると発言した。

 そうした方針が良いか悪いかは、ジャーナリストそれぞれのサッカー観によって意見も変わってくるだろうが、僕はエンゲルスの発言に賛成である。展開されるサッカーのレベルが高いにこしたことはないが、すべてのチームにブラジル代表の華麗さや、マンチェスター・ユナイテッドのアタッキングサッカーを要求することはナンセンスであるし、指導者が実現不可能なスタイルを目指すのは絶対に間違っている。

 チームの実力はさまざまであり、そのレベルの最高のサッカーをすればいい。部活動である高校サッカーでは、練習の時間や施設も限られているのだから、個人技術や戦術に欠点があったとしても、エンゲルスのように寛大になろう。今回の取材はミスや未熟な部分を指摘するよりも、好プレーを褒める姿勢で臨むことにした。


■部員21名の地球環境高校が、長野県勢6年ぶりの全国大会勝利


 1回戦駒場スタジアムに登場した4校の中で、もっとも注目されていたチームはやはり地球環境だろう。創部からわずか7カ月のチームで、しかも部員数はたったの21人。そのうち途中入部の4人は登録上の問題でプレーできないため、実際は17人が今大会のメンバーである。さらに通信制という変わり種のチームだ。

 戦前の予想は地球環境の方に話題性があるものの、実力は立正大淞南が優位というのが僕の予想だった。試合前のサブグラウンドでの片面ずつを使っての練習も、約70人という大所帯の生徒たちが、整然と列を作ってブラジル体操をする立正大淞南は威圧的だった。

 そのことを松本育夫監督に聞くと「部員100人くらいのチームと何度も(練習)試合をしてきたのでもう慣れているし、今の子供たちはあまり気にしないようになってきている」と言う。「では、今日の試合も選手は緊張していないのですか」と再度尋ねてみると、「う〜ん」と一転してこの大一番に限っては、あまりいい返事が返ってこなかった。初の大舞台でプレーする選手たちの緊張を、監督は感じていたのかもしれない。

 しかし、試合はそうした松本監督の心配をよそに、地球環境の選手は伸び伸びとしたプレーを見せる。立正大淞南のFWの飛び出しに合わせて、ディフェンスラインの裏を突いてくるラストパスを、GK桑原を中心とした守備陣がブロック。特に8番キャプテン西田の体を張った守備と、周りの選手に声を掛ける統率力が光っていた。

 そして前半を0−0で終了し迎えた後半19分、地球環境が下司のゴールで先制する。その後、立て続けに2点を奪い、終了間際に1点を返されたものの、3−1で長野県勢としては6年ぶりの選手権勝利を挙げた。「うちの選手の方が逞しさを持っている。だから前半を凌いで後半勝負」という松本監督が思い描いていた、ゲームプラン通りの快勝だった。


■ブラジルでも日本でも、勇気をもってプレーし、そして楽しむことが重要だ


 話は少し逸れるが、12月15日にサントスFCがブラジル全国選手権に初優勝を果たしている。FWコンビは18歳のロビーニョと19歳のウイリアム。エースのディエゴは何と17歳であり、今日の駒場のピッチに立った高校生たちと同世代の選手たちが中心となって優勝を勝ち取っている。

 サントスFCの精鋭と地球環境の生徒たちでは、個人能力や目指しているサッカー、それに戦っている舞台とすべてにおいて大きな差があることは否めない。だが、両チームの選手たちには、ひとつの大きな共通点があった。それは選手たちが勇気を持って、一生懸命プレーしていたことだ。そして楽しんでいたことだ。

 試合後に松本監督と握手をする地球環境の選手たちの姿は、実にすがすがしかった。輝いていた。プレーする者にとって、サッカーは楽しい方がいいに決まっている。たとえそれがどういったレベルの試合でも、選手がサッカーを楽しむことは重要なことだ。

 そうした思いがほんの少しだけ立正大淞南の選手より、地球環境の生徒の方が上回っていたような気がする。だから試合に勝てたのだと思う。
 どんな大舞台でも、どんな逆境の場面でもサッカーを楽しめる余裕を持つことは絶対に大事であり、その精神が勝利への大きな要因になると僕は信じている。

<了>




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