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sportsnavi 吉村憲文




全日本ユース 改革大会を終えて(前編)



静岡学園高を破り初優勝し、笑顔で記念撮影に納まる市船橋高イレブン=埼玉スタジアム【共同】

■新たなスタートを切った全日本ユースに浮かび上がる問題点


 第14回全日本ユースが終わった。高体連、クラブの垣根を越えた中での市立船橋の優勝は選手の質、戦術、そして内容とすべてがそろった素晴らしいものであり、新たなスタートを切ったこの大会にとって、ふさわしいものになったと言えるだろう。

 いきなり「新たなスタートを切った」と書いたが、この大会では過去の反省から育成年代の日本一を決めるにふさわしい大会にしようと大会改革を進め、今年度は幾つかの点で抜本的な転換が行われた上でのリスタートだった。そこで何が変わったかをもう一度整理しておこう。

 まず昨年度までは全日本ユース出場チームの決定方法は、高体連は基本的にインターハイの都道府県予選の後に行われる9地域大会の優勝校。しかも地域大会はトーナメント戦に限られるとともに、初夏のチームを作りの初期段階に行われることから、「正直言って、去年まで全日本ユースは地域大会に勝ったチームのおまけみたいなもの」(市立船橋・石渡監督)だった側面は否定できない。

 一方のクラブは夏休みに行われるU−18クラブユース選手権の上位(基本的には5チーム)が出場権を得ていた。クラブにとっては、「真剣勝負の舞台で高体連のチームと当たれる唯一の場」(広島ユース・森山監督)であり、対抗意識はかなり強かった。ただ、過去の歴史を振り返ると、13回の大会で優勝は高体連が12回でクラブはわずかに1回。圧倒的に高体連有利だった。

 しかし、今年の大会から出場チーム選定の段階で大きく変わった。特に顕著な点は9地域の代表決定に高体連とクラブを完全にミックスしたリーグ戦を導入したことである。早いところで九州のように3月から大会は始まり、8月末まで時間をかけて真剣勝負を行った。ただし、9地域それぞれにリーグ戦の方式がまちまちで、2回戦総当り制にしているところがある半面、わずか5節で終わってしまう地域もあった。このあたりは来年度への非常に大きな課題となった。

 同時に「中国地方にはあまり強いチームがない」と前出の森山監督が語ったように、プリンスリーグの段階で、どれほど試合数を増やしても地域格差によって根本的なレベル差が埋まらないケースもある。関東、東海、関西、九州以外のエリアに属す強豪チームは独り勝ちが当然になってしまい、強ければ強いほどこうした悩みは尽きない。プリンスリーグは地域の垣根を越えた形にしないと、全体の底上げになっても強豪チームの強化にはつながらないという矛盾を生むことになりかねない。


■グループ分け、最終節の他時刻開催、日程、移動……


 次に本大会を振り返ると、幾つかの問題点が浮かび上がる。まずグループ分け抽選の段階で強豪が一同に集ったグループと、そうでないグループがはっきりと分かれてしまった。特にグループCは関東1位の市立船橋、東海2位の静岡学園、関西1位のG大阪ユース、そして九州1位の鹿児島城西。先進地域の上位ばかりで、あまりにハイレベルな争いに『死のグループ』といわれたが、出場チームにとってはなんとも迷惑な組分けである。結果論ではあるが、グループCに属した市立船橋と静岡学園が決勝に進んでおり、他のグループよりレベルは数段高かった。逆にG大阪ユースがこの段階で消えてしまうのはあまりにもったいなかった。来年からは何らかの方法でこれら先進4地域の上位チームをシードするなどの必要があるだろう。

 さらに問題だったのは予選リーグ第3戦が同時刻&他会場開催でなかった点だ。つまり同じ組の第1試合の結果を見て、第2試合のチームは戦うことができたのだ。勝ち点や得失点を計算しながら第2試合のチームはプレーすることができる。各国のプロリーグを見ても分かるように最終節は同時刻開催であり、それが常識である。「絶対に問題。ぜひマスコミが書いて」とは静岡学園の井田監督のコメントだ。今回のような大会方式は普通サッカーの世界ではあってはならないことだ。来年は絶対に同時刻開催にしなくてはならない。

 加えて日程と移動の問題もある。今回予選リーグ最終戦と決勝トーナメントは10月4、5日と2日連続で行われた。このこと自体が問題ではあるが、それ以上に一部のチームは次の開催地への移動を強いられ、コンディションに大きな問題を残した。特に藤枝でゲームを行ったグループDを勝ち上がった清水ユース(東海1位)と国見(九州2位)は、翌日のゲームが埼玉の駒場だったために長距離移動が必要になった。しかもトーナメントの相手はリーグ最終戦を埼玉で戦い、移動の必要のなかった広島ユース(中国1位)と東福岡(九州3位)。ゲームにおけるコンディションの違いは明らかだった。明らかにハンディキャップ・マッチだったのだ。結果、清水ユースも国見もいいところなく敗れ去った。

 先に書いたグループリーグ最終戦の同時刻&他会場開催のことと合わせて考えれば、「グループリーグ戦とトーナメント戦の間に最低でも48時間の休養を入れた上で、決勝トーナメントの開催地を中間点にするなどの工夫が必要なはず」だと、大会の視察に行われた多くのJリーグ関係者も声を揃えた。選手に最高のパフォーマンスを期待するなら、それなりの舞台を準備してやるのは大人の義務であり仕事である。来年度はこうした問題が絶対に解消していなくてはならない。


■メディアの取り上げ方にも問題 真の意味での環境作りを


 そして加えてもうひとつ大きな問題があったと筆者は思っている。メディアの無知が目に余ったからだ。大会に対する報道自体の少なさはもちろん、関心は極端に低い。いくら「18歳以下の真の日本一を決める大会」と川淵キャプテンが高らかに宣言しようとも、メディアの関心は高校選手権に遠く及ばず、「そんな大会やっているの」と口にする記者までいた。一方的に協会に組織改革や、代表強化を迫るメディアだが、自らの意識改革を怠っている状況はどう考えてもおかしい。「私はユースには興味がない」と平気で口にした女性キャスターもいる。こんな連中が日本のサッカーメディアの中心にいるのか……。何もこれは筆者がユース年代の取材を日常的に行っているからだけではない。日本にとって一番いい育成の形を探っていくことが、今後の日本サッカーの発展につながることは間違いないからだ。そこを無視することが問題だといっているのだ。その意味でメディア自身の反省が必要だ。

 問題点の記述ばかりになってしまったが、もちろんそれ以上に大会の変化を評価する声がある。静岡学園の井田監督は「本大会をリーグ戦に変えることで、従来のトーナメントにない戦いがある。(リーグ戦初戦で対戦した)G大阪ユースは、内容で向こうが押していながら結果的にうちが勝った。今までのトーナメントだったらそれでG大阪ユースは終わりだったけど、まだゲームもある。同じことはウチにも言えるし、真剣勝負の場が増えたことが素晴らしい」と語っている。加えて当然ここまで勝ち上がるためには「今以上に使える選手の数が必要になる」(市立船橋・石渡監督)だけに、指導者の育成の手腕が問われることにもなる。指導者にも厳しい時代が来たことになる。その意味でもプリンスリーグの立ち上げと、全日本ユースの改革は新しい時代の到来を告げるものになった。今後は高校選手権とJユースカップの開催時期を調整し、真の意味でユース年代の一番権威のある大会であることを示す環境作りが必要になってくるだろう。

<後編に続く>








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