広島だからこそ実現できた全国制覇 (2/2)
広島皆実・藤井潔監督インタビュー:第1回
■僕らはサンフレッチェに対して責任感がある
――選手権優勝はもちろんですが、プリンスリーグ中国優勝も大変なことだと思います
プリンスリーグ中国(のタイトル)を取ったときもすごくうれしかったですね。選手たちはサンフレッチェ広島ユースに勝ちたいという思いもありますから。広島ユースとはいい関係にあるんです。中学生年代でサンフレッチェが選手に下した(ユースには昇格させないという)評価はいい悪いという一面的なものではなくて、そのときはそういう評価だっただけで、選手はそこからまだまだ伸びるし僕らはジュニア、ジュニアユースまでサンフレッチェの組織の中で育ててもらった選手たちを預かるわけなんです。なので、僕らはサンフレッチェに対して責任感というか、絶対いい加減なことができないわけです。ですから、預かっている責任感と、優秀な選手が集まるサンフレッチェに対して、高体連のチームとして負けたくない気持ちはありますね。
――広島ユースに上がれなかった選手を「預かる」という感覚は大事なことですし、ほかの地域でそういう関係ができているかというと、そうではないところもあると思います
それはやはりサンフレッチェの姿勢がそう思わせてくれているのだと思います。森山(佳郎・広島ユース監督)さんしかり、トップチームのフロントの人だったり、サンフレッチェというクラブ自体の持つ姿勢が、僕らにそう思わせてくれています。
――具体的にどのような姿勢なのでしょうか?
指導者、選手共々、この広島という地域で伸びていこう、学んでいこうという姿勢です。試合をしたり、一緒にミニトーナメントをやらせてもらったときなどに、サンフレッチェのユースやジュニアユースの指導者からはそういう部分をすごく感じます。
――サンフレッチェの下部組織の選手はほかの選手と違いますか?
技術はやっぱり高いですよね。でもあとは、ほかの中学生とまったく変わりません。変わらないというのは、勘違いして入ってくる子もいるし、ユースに上がれずに劣等感たっぷりで来る子もいる。そういうのはイチ中学生としては当たり前にありますから。街クラブ出身の子でもお山の大将だった子は勘違いして入ってくるし、サンフレッチェ出身の選手には絶対にかなわないと思って入ってくる子もいるし、それはどこ出身でも変わりません。
■広島ユース、広島観音の刺激は大きかった
――広島は広島ユース以外にも、広島皆実、広島観音、広島県工、瀬戸内など高校サッカーのいいチームがそろっていて、選手たちはユースに上がれなくても選べる環境にあります。これは広島が持つ力だと思います
広島の力というより、それこそサンフレッチェが持つ力ですね。サンフレッチェの力というのは、前身のマツダがあり、東洋工業があり、そこから積み上げられてきたものですから。
――広島ユースの実績は申し分ないですが、広島観音が2006年のインターハイ(全国高校総体)で優勝したことも大きな刺激になったのでは?
刺激は大きかったですね。そのときは観音独自の指導スタイルや、畑(喜美夫)監督のやり方がクローズアップされましたし、それは一つの成果ですね。観音はいろいろなやり方で選手にアプローチしていて、そういうやり方もあるんだなとか、それをやり抜くことで結果がつかめるんだなという刺激はありました。ですが、畑先生には畑先生のやり方があるし、観音の環境の中で生まれたのがサッカーノートを使っての指導とか、週3回の全体練習などですから。試行錯誤してそういうスタイルを作り上げた指導者、何よりも同じ地域で育った子供たちがそういう結果をつかめるわけですから、ウチももっとやらなければならないと思いましたね。
――今回は逆に広島皆実が全国制覇を果たしたわけですが、ほかのチームにどう影響すると思いますか?
それは周りが考えることですし、僕らもこれが自分たちにとってどう影響するのかを考えていかないといけない。僕が(決勝が行われた)国立競技場の周りのことを考えられなかったのと同じように、そこまで大きなことは考えられないですね。今は新チームになる1、2年生に向き合っていくことしかできません。今はまだ小粒だしナイーブな面が多いけれど一生懸命頑張るこの子たちを、またいいチームにできそうな手応えもあるので。周りの期待は大きいし難しいことでしょうが、そこしか自分の力を発揮できる場所はないわけですから。
<第2回は6日にアップ予定>
・優勝にもぶれない指導者としての姿勢=インタビュー第2回 (2009/2/6)
・『高校サッカー&Jユース 強豪・有力チーム徹底ガイド』安藤隆人 著(メディア・ポート) (2009/2/5)
安藤隆人
大学卒業後、5年半勤めた銀行を退職して単身上京し、フリーサッカージャーナリストに転身した異色の経歴を持つ。ユース年代に情熱を注ぎ、15年以上の取材実績を誇り、日本全国、世界各国を旅し、ユース年代の発展に注力する。今年1月にこれまでのサッカージャーナリスト人生の一つの集大成と言える、『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)を出版。筆者自身のサッカー人生からスタートし、銀行員時代に夢と現実のはざまに苦しみながらも、そこで出会った高校1年生の本田圭佑、岡崎慎司、細貝萌ら才能たちの取材、会話を通じて夢を現実に変えていく過程を書き上げた。さらに第2章では槙野智章、内田篤人、柏木陽介、安田理大、ハーフナー・マイク、森重真人ら“調子乗り世代”の立ち上げから、ベスト16に進んだカナダU−20W杯まで、ほぼすべての遠征や合宿、大会に密着した完全ドキュメンタリーを収録し、第3章では香川真司の高校1年生から現在までを描いている。ほかにも『高校サッカー聖地物語 僕らが熱くなれる場所』(講談社)、『プラチナ世代のW杯』(白夜書房)があり、雑誌では『Number』、サッカー専門誌などに寄稿
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