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木村浩嗣
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スポーツナビ
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バルセロナ戦で感じた大久保の可能性(1/2) 木村浩嗣の「誘惑と憂鬱のスペインサッカー」
2005年02月21日
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| 大久保のケンカ腰の姿勢は、スペインでの東洋人へのイメージを払しょくするか【 Photo:AFLO FOTO AGENCY 】 |
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■ネガティブな先入観と偏見と戦わねばならない大久保
「プレー時間が少ない」「前線で孤立している」と大久保が不満を漏らしているそうだ。 このスポーツナビのニュースにそう書いてあった。
大久保のニュースは日本経由で伝わってくる。 対バルセロナ戦の翌日、『エル・パイス』『エル・ムンド』の二大全国紙を開いても、そのレベルの高い戦評にOkuboの文字は見当たらない。それでは、とスポーツ紙『マルカ』と『スポルト』を目を皿にして探しても、彼のプレーぶりについて言及はない。 城のときの大騒ぎとは大違いだ。地元マジョルカとはともかく、全国レベルでは大久保の名前すら知らないサッカーファンが大半だろう。
が、だからといって、私は大久保を過小評価しているのではない。 降格争いをするチームの新戦力として、6試合出場して1得点1アシストのFWにふさわしい――ジャパンマネー目当てとする揶揄(やゆ)や興味本位抜きの――扱いをスペインのマスメディアで受けていることは、大きな前進だと思う。Okuboはいちサッカー選手として注目(あるいは無視。それは彼の活躍次第)されているのだ。
「0」(マルカ紙。3段階評価で)、「評価無し」(スポルト紙)と採点された大久保の26分間だが、実は、私は高く評価した。 なぜなら、“舐めるな馬鹿”というケンカ腰の姿勢が、うかがえたからだ。 “やる気を見せた”とか“良く走った”などの甘っちょろい評価は、彼のドスの利いた表情や鋭い眼光には似合わない。私は会ったことがないので、どういう人物だかは知らないが、大写しになった表情から心中を察し、それに言葉を当てはめると、やはり“舐めるな馬鹿”がふさわしいように思う。
「スペインサッカーで成功する鍵」というと、とかく言葉とかコミュニケーションがクローズアップされる。が、私は、――レベルに合ったテクニック、フィジカルを備えているという前提での話だが――、最も重要なのは性格の強さだと思う。 城、西澤、大久保と続いた日本人選手への、スペインの一般サッカーファンの認識は、少々きつい言葉にすれば、“サッカー後進国から来た訳の分からない東洋人”というレベルにいまだに留まっている。マスコミの報道姿勢が変わったことは前述したとおりだが、それがスペインでサッカーを支える圧倒的な数の大衆に広がるには、まだ時間が必要だ。
スペインには“サッカー強国だ”という自負がある。 日本代表がワールドカップやアジアカップで好成績を残し、ご自慢のスペイン代表が期待外れに終わり続けようと、日本代表がスペイン代表を破る日が来るまで、そのプライドは揺るがないだろう。 そんな“強国”のリーグで、日本人選手がほとんど実績を残して来なかった現状では、悲しいことだが、大久保はまずネガティブな先入観と偏見と戦わねばならない。“オオクビーニョ”とか“オオクビッチ”という名なら、あこがれと期待の目で迎えられたはずなのだが、彼のスタートラインはそもそもマイナスだったのだ。 が、そんなハンディを跳ね返すエネルギーを、私はバルセロナ戦でのプレーぶりで見た。
■スペインでは抗議は必ずしもマイナスにはならない
まず表情がいい。 三角形の挑発的な目、固く結んだ口元は、ヘラヘラ笑っている人、という東洋人への屈辱的なイメージを壊すものだ。勝手な思い込みで恐縮だが、大久保にはグラウンドでは笑ってほしくない。プレー中の笑顔が様になるのは、ベッカムやロナウジーニョくらいだ。すごみのある表情で、緊張と禁欲を伝え続けてほしい。 冗談ではない。 私は大勢のスペイン人とともに観戦していたが、大久保投入時に「誰それ?」とか言われ、緩んだ空気が、あの怖い顔が大写しになると再び締まるのを感じた。真剣さ、集中力を言葉にできないのだから、表情でアピールすればいい。
オフサイドの判定に不服で、ボールを蹴り出した気概も買う。 スペインでは誰もが審判に抗議する。私は自分のチームの子供には禁じているが、プロは話が別。マイナススタートの大久保には逆に奨励したいくらいだ。 残念だったのは、審判がイエローカードを出してくれず注目度が低かったこと。日本語で審判に食って掛かる光景は、電波に乗って全国のニュース番組で流されたに違いなかったが。 知名度を上げるためだけではない。 「抗議⇒イエローカード」という筋書きであれば、“日本市場へのマーケティングの道具”という負の先入観を少しは払しょくしていたろう、と悔やまれる。スペインリーグでは抗議は必ずしもマイナスイメージにはならない。“真剣度、執着度の表れ”という寛大な評価もあるくらいだ。
両腕を振っての「もっと上がれ!」という意志表示も効果的だった。 まあ、“敗色濃厚、疲労も蓄積した時間帯に上がれと言われても……”が他の選手の心境だろうし、中盤の前線へのフォローが足りなかったとは、私は思わないが、アピールしたことは良いことだ。 グラウンド内で不満をぶつけ合い、言い争うくらいの光景は、スペインでは日常茶飯事だ。ウソだと思うならレアル・マドリーを見てほしい。カシージャス、グティ、ミチェル・サルガド、エルゲラ、ロベルト・カルロス間のののしり合い・責任のなすりつけ合いが、失点の度に繰り返されているではないか。
が、大久保が不満をマスコミに漏らしたのはまずかった。 ケンカ腰の激論も芝生の上だからこそ正当化される。 いくら腹を立てても、マスコミという“部外者”に対しては、同僚をかばうのが掟であり、監督のさい配(交代のタイミング)への不満を公にしたのは、クラブの内規にも抵触しかねない。 「(上がれ!というしぐさは)自然に出た。チームはよく戦ったと思う」くらいの優等生的発言でちょうど良かったのだ。 闘志をむき出しにするのはグラウンド内だけでいい。不満をぶつける対象は、相手チーム、チームメート、クーペル監督だけでいい。チームに速く溶け込みたいのなら、マスコミを蚊帳の外に置く慎重さが欲しかった。
<続く>
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