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湯浅健二
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存在感高まるトーマス・ドルと高原直泰(1/2) 湯浅健二の「質実剛健! ブンデスリーガ」
2005年03月02日
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| 試合後に選手とかわすトーマス・ドル。そこにはポジティブなコミニュケーションがある【 Photo:AFLO FOTO AGENCY 】 |
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■4連勝後、ヘルタ・ベルリンに大敗。それでも内容は素晴らしい
そのとき、ハンブルガーSV監督トーマス・ドルが間髪を入れずにアクションを起こした。ピシッと締まった表情で選手たち一人ひとりに声を掛ける。キビキビとした態度でレフェリーと握手を交わす。フムフム……トーマスは脅威をうまく活用できている……なかなかのものじゃないか。そのときボクは、「脅威と機会は背中合わせ」という普遍的なコンセプトを考えずにはいられなかった。
ハンブルガーSVのゲームを観戦できたのは、前回のコラムで取り上げた(大敗を喫した)バイエルン・ミュンヘン戦以来のことだ。そのときはミュンヘンまで足を伸ばし、現地でスタジアム観戦したのだが、その後帰国してからの1カ月あまり、ハンブルクの試合がテレビ中継されることはなかった。それも、ハンブルガーSVが素晴らしいサッカーで連勝を続け(4連勝!)、高原が、ゴールやアシストを重ねるなど活躍していたにもかかわらずである。こちらは、「トーマス・ドルに率いられたハンブルガーSVと高原直泰の発展プロセスほど面白いコンテンツはないのに……」と不満タラタラだったわけだが、まあテレビ局の方針(視聴者ニーズ分析の内容)が違うのでは仕方ない。結局、存在感を大きくアップさせたハンブルガーSVと高原直泰の勇姿との再会は、今節(第23節)のヘルタBSCベルリン戦まで待たなければならなかったというわけだ。ところが結果は、バイエルン・ミュンヘン戦以来の大敗。さまざまな感情が入り交じった複雑な気持ちにさせられたものだ。
とはいっても、ハンブルガーSVが展開したサッカーの内容自体は、彼らが発展ベクトル上にあることを象徴するような素晴らしいものだった。チーム全体に深く浸透した強固な守備意識をベースに、選手たち個々が主体的に展開する積極ディフェンスプレーが有機的に連鎖し続ける。そしてボールを奪い返してからも、人とボールが素早く・広く動きつづける高質な仕掛けが繰り出されるのである。何度ハンブルクが、流れの中でベルリン守備ブロックを振り回してチャンスを作り出したことか。攻守にわたって、ハイレベルにバランスした組織プレーと個人プレーが実効あるハーモニーを魅せ続ける。チーム全体に共通する戦術的なプレーイメージが、選手たちの脳裏に深く刻み込まれていると感じる。そのこともまた監督のウデの証明なのである。
結局ハンブルクは、ゴール前の守備で信じられないミスと不運が続いたこともあって「1−4」という大敗を受け容れなければならなかったわけだが、タイムアップのホイッスルが吹かれた次の瞬間が、冒頭の「そのとき」ということになる。
■トーマス・ドルの「優れた指先のフィーリング」
選手たち一人ひとりと握手し、肩をたたきながら声を掛けるトーマス・ドル。そこで選手たちと交わされる、目つきや態度、言葉などによるさまざまなコミュニケーションからは、「結果は仕方ない。とにかくオマエたちは素晴らしいダイナミックなサッカーを展開したよ。オレはそのサッカーを誇りに思うしオマエたちを信頼している。とにかく次だ、次を見据えよう……」といったポジティブなスピリチュアルエネルギーの交錯を感じたものだ。
試合後に電話で話した知り合いのドイツ人ジャーナリストも、「そうだな、トーマスは、厳しくするところと、選手たちとフィーリングを共有するところとのメリハリがキッチリと決まっているよな。多分そのときも(この試合直後にグラウンド上で起きていたこと)、オマエが想像した通りの、次につながるコミュニケーションがなされたに違いないよ……」と言っていた。脅威になり得るネガティブな結果を逆手にとり、互いの信頼関係を深化させるためのツールとして活用してしまう。ボクは、そのジャーナリストと話しながら、就任以来、10勝1分け4敗という素晴らしい成績で、チームを最下位から7位にまで引き上げたトーマス・ドルの、心理マネージャーとしての「優れた指先のフィーリング」を再認識していた。
前回のコラムで書いたミュンヘンでの大敗の後、テレビのリポーターがハンブルガーSVのキャプテン、ベルギー代表のファン・ビュイテンに対してこんな厳しい質問をしていた。「これまでチームはうまくいっていた。監督と選手の関係もうまくいっていた。でも、トーマス・ドルになってからはじめて、結果だけではなく内容的にもヒドいゲームになった……。そんなことが、選手と監督との信頼関係にヒビが入るキッカケになるものだけれど??」。それに対してファン・ビュイテンは、ほほ笑みながらこう切り返したものだ。「まったくそんなことはないね。われわれの信頼関係は強いし、チームが発展していることは選手たちも実感している。単なる一つのゲーム結果でヒビが入るはずがない」。
このベルリン戦の後も、選手たちはさまざまなメディアから同じような挑発的な質問を受けていることだろう。そして記者たちは、ファン・ビュイテンに質問したテレビリポーターと同様に、発展ベクトル上に乗っているという確信がベースになっているからこその余裕に満ちた(記者たちにとっては面白くも何ともない)ほほ笑みのコメントを聞くことになるというわけだ。
<続く>
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