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nakata toru 中田徹



中田徹の「オランダ通信」
ブルージュとアヤックスへの期待 大混戦の欧州CL・グループH(後編)



ベルギーの若き才能バン・ダーメ。次々と新星が生まれるアヤックスからは今季も目が話せない【(C)Getty Images/AFLO】

■チームを救ったイブラヒモビッチの一発芸


 開始早々からボールポゼッションで上回るアヤックス。しかしその第一波をしっかり防ぎ切ると、セルタのDFは冷静に対応するようになる。
 アヤックスのボールポゼッションにはゴールへ向かうアクションが伴わなかったため、相手ゴール前での尻つぼみ現象を起こしたことも確かだが、左サイドバックのシルビーニョと左ハーフのファンフランの攻め上がりを減らして、しっかりセルタがアヤックスの攻撃を受け切ったことも大きかった。

 前半はアヤックスがボールを回すだけになり、攻撃の効率性ではセルタが上回った。アヤックスはセルタゴールへ向かってのアクションがもっと必要だった。
 負傷したファン・デル・ファールトを下げ、アヤックスは39分、ドリブラーのミテアを左ウイングに入れて相手DFを崩すアクションを期待した。ベンチの意図は後半、イブラヒモビッチに通じた。

 ボールポゼッションを続けても、結局最後は個の力が無理をし、相手DFを崩す作業が必要になってくる。それをやってのけたのが53分のイブラヒモビッチだった。
 相手DF2人にマークを受ける厳しい状況で一気にかわしに行き、さらにもう1人をかわす。計3人を相手ペナルティーエリア内で抜き切る強引さに、ドリブルしたボールは流れた。イブラヒモビッチがまた無理なプレーをしたとだれもが思っただろう。しかし渾身のスライディングとともに伸ばした左足がボールに追いつき、見事なシュートとなった。セルタのゴールへボールは吸い込まれた。
「ズラタン(・イブラヒモビッチ)はオール・オア・ナッシングの典型的プレイヤー。彼はこの日、やってのけた」
 とファン・デル・ファールトも振り返った、イブラヒモビッチのチームを救う一発芸だった。


■セルタの猛攻 跳ね返すアヤックス


 1点を奪われたセルタは死に物狂いでサイド攻撃を仕掛けた。やはりファンフランを抑えることは難しく、負傷退場のトラベルシ(完治まで最低6週間)に代わって右サイドに入ったデ・ヨンは再三抜かれてしまった。ボールポゼッションを捨て、クリアにクリアを重ねるアヤックス。  中央で待つミロシェビッチ、カターニャのプレッシャーはすさまじかったが、しかし、センターバックがよく耐えた。ファンフラン、シルビーニョ、ヘスリのクロスの先にはバン・ダーメがいた。
 バン・ダーメのクリアはさらに中盤のシュナイダー、トップのイブラヒモビッチによってセルタ陣内へ、二段となってクリアされ続けた。

 4分間のロスタイム。首脳陣3人がベンチで同時に立ち、指で残り時間を指図する。ルート・クロルコーチが「邪魔だ」と思わず隣に立ったブラウンス・スロットコーチをベンチに座らせる。クーマン監督はDF陣に「上がれ! 上がるんだ!」と猛烈に檄(げき)を飛ばす。
 その苦しい展開からようやくカウンターのチャンスを得たアヤックス。ベンチが思わず身を乗り出す。しかしシュナイダーはミスパス。珍しくクーマン監督がわれを忘れ、足元のペットボトルを怒りとともに蹴り上げる。アヤックスのベンチも守り切りに必死だった。

 セルタの猛攻とアヤックスの必死の守りが魂と魂のぶつかり合いの試合を呼んだ。
 素晴らしい試合だった。アヤックスは勝ったが、セルタも見事だった。


■負荷=経験を糧に成長を続け、今季も躍進するか


 この日、左のセンターバックに入ったのが本来左サイドバックのバン・ダーメだった。本来レギュラーのエスクードが背筋痛。グリゲラとパサネンでセンターバックを組むことも考えられたが、グリゲラが負傷上がりでゲーム勘が戻っていないこと、そして右利き同士でセンターバックを組ませたくないことから、クーマン監督はパサネンとバン・ダーメのコンビを選択した。このバン・ダーメが素晴らしい守備を見せた。
「空中戦、1対1でバン・ダーメが強さを見せた。まだ19歳。賛辞を贈りたい」
 バン・ダーメは10月10日に20歳になったばかりだが、クーマン監督にはまだティーンエージャーのままだった。いずれにしても高評価には変わりがない。

 9月21日のNAC戦では0−4と完敗。まだ不安定さの残るアヤックスだが、このチームのすごさはシーズンを通じての成長が劇的なことだ。試合での負荷を力にし、自らの実力に変えていくことはユース年代で必ず1歳上のチームと戦わせているポリシーに通じる。アヤックスは国内リーグより負荷のかかるチャンピオンズリーグを戦うことで成長して行くのだ。そのためにも(また経済的にも)ベスト16に残ることはとても大事だ。

 H組の1位候補はACミラン、2位をアヤックス、セルタ、クラブ・ブルージュが争うと見られていたH組。しかし多くの人の予想を裏切り(僕はひそかに予想が当たったが)、クラブ・ブルージュがACミラン戦を相手に、しかもアウエーでの勝利で、H組は一気に大混戦になった。クラブ・ブルージュは2位、そしてアヤックスは首位で前半を折り返した。
 すでにアヤックスはホームゲームを2試合消化。順調に勝ち点6をマークしたが、後半戦のアウエー2試合でいかに勝ち点を獲得するか。これが今シーズン、アヤックスがどこまで完成するかのカギになる。

<この項、了>
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