ボカを揺るがすリケルメと監督の対立 (1/2)
前期リーグ優勝チームに緊急事態
■選手との関係悪化で監督辞任の危機
ボカ・ジュニアーズがアルゼンチンサッカー界ではまれに見る危機に直面している。国内リーグ、コパ・リベルタドーレス、そして新たに創設されたコパ・アルヘンティーナの3大会を合わせて計32試合も無敗を貫いているにもかかわらず、数選手との関係が悪化したフリオ・セサル・ファルシオーニ監督が辞任を決意しかける緊急事態が生じているのだ。
この矛盾した現象を理解するには、アルゼンチンサッカー界が史上初めて直面している問題を知る必要がある。多くの若手有望株がヨーロッパやアジア、中米、ブラジルら、サッカーの質や経済面でより魅力的な舞台へと移住するようになった今、空洞化した国内リーグでは技術レベルの低下という前代未聞の問題が生じている。ボカの選手たちが3年ぶりの前期リーグ制覇にも満足せず、プレースタイルに不満を訴えている背景には、そのような傾向に対する危機感が関係しているのである。
無敗のまま全試合を終えたものの、前期リーグのボカは第2節のウニオン・デ・サンタフェ戦(4−0)を除いて大量得点を挙げることができなかった。ほとんどの試合は引き分けか最少得点差での勝利であり、格下相手にも守備的すぎる戦い方を貫いたファルシオーニの戦い方は常に批判の的となっていた。
ファルシオーニとフアン・ロマン・リケルメのそりが合わないことは、監督就任当初から周知の事実だった。これまで国内外で多くのタイトルを獲得してきた33歳のMFは、クラブの入口に記念碑が建てられるほどの絶大な支持を誇るスター選手である。一方、ファルシオーニは4−4−2の愛好者として知られている。それはつまり、アルゼンチンでは「エンガンチェ」(トップ下)と呼ばれる、中盤と前線をつなぐ4−3−1−2の「1」にあたる選手が存在しないシステムである。
そのためファルシオーニは、1年前の後期リーグが始まってすぐのオール・ボーイズ戦を前に、リケルメを先発から外すことを明言した。それが両者の対立を生むきっかけとなったのだが、その後なかなか結果が出なかったことで世論の圧力は強まり、最終的にリケルメはチームの中心としてプレーするようになる。結局リケルメは相次ぐけがの影響でコンスタントにプレーできなかったものの、チームは前期リーグを制するまでに結果を出したのだった。
■ベネズエラのロッカールームで起きた事件
前期リーグを無敗で制したころから受けていた批判は、年が変わり、新たなシーズンが始まった後も変わっていない。後期リーグのホーム初戦ではオリンポを2−0で下すも、コパ・アルヘンティーナの初戦では3部所属のラモン・サンタマリナ・デ・タンディルと1−1で引き分け、PK戦の末に辛くも勝ち抜けを決めた。
特にベネズエラの弱小クラブ、サモラとのコパ・リベルタドーレス初戦で受けた批判は痛烈だった。優勝候補の一角として7度目の南米制覇を目指すボカにとって、14日に行われたグループリーグ初戦は最もくみしやすい試合の1つだった。わずか3年前に母国のトップリーグに参戦したばかりのサモラは、ボカの攻撃力を恐れてホームながら5人のDFを起用した。しかし、対するボカも失点を恐れてほとんどリスクを冒さず、試合は退屈極まりない90分間の後にスコアレスドローで幕を閉じた。
この試合ではベレス・サルスフィエルドでゴールを決めていた2年前から契約を試み、不発に終わったフィオレンティーナ時代を経てようやく獲得を実現したウルグアイ人FWサンティアゴ・シルバが公式戦デビューを飾った。だが、それもボカのプレー内容を変えるきっかけにはならなかった。
そしてこの日の夜には新たな事件が起こった。試合後のロッカールームにて、リケルメとファルシオーニが言い合いになったのである。後に明かされた話では、ファルシオーニはサイドに開けという指示に反して中央に絞ってプレーしたFWツビタニッチに対し、自分よりリケルメの指示に耳を傾けたのではないかと言い寄った。それを聞いたリケルメは、ツビタニッチに指示したのはほかの選手(エルビティ)だと主張した上、チームメートの前で謝罪するようファルシオーニに迫った。この一件により、監督を擁護するコーチ陣とリケルメを支持する選手たちとの関係は完全に二分してしまった。
ベネズエラからブエノスアイレスへの帰路はまさに地獄で、百数十台のカメラとマイクが詰めかけた空港は混沌(こんとん)とした状態に陥った。ファルシオーニとリケルメの対立は以前から存在していたが、これが両者の関係を決裂させる決定的な出来事となった。
・ベロン擁するエストゥディアンテスの優勝なるか (2012/2/16)
・アルゼンチンサッカー界をのみ込む暴力の波 (2011/11/14)
・窮地のボカをよみがえらせたリケルメ (2011/9/29)
・スポーツナビ・サッカーFacebookページ (2012/2/23)
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