シャビを育てた元バルサコーチが日本に提言 (2/2)
「大切なのは、ピッチ上で正しい判断をすること」
■状況把握、決定のトレーニングは小さい時から
――プレーの判断、決定などの個人戦術について、もう少し詳しく説明してください
サッカーで大切な3つの要素があります。ペルセプシオン(状況把握)、デシジョン(決定)、ヘクシオン(実行)です。まずはピッチの中で状況を把握して、どこへパスを出すかなどのプレーを決定し、実行(=キック)します。プレーをする上で大切な3要素のうち、多くの指導者は実行の練習ばかりしていて、実行をするために大切な状況把握、決定の練習をあまり行っていないように感じます。その結果、選手は正しい状況把握、決定ができず、間違ったプレーを選択してしまうのです。シャビやイニエスタのようないい選手は、どんな状況でもベストのプレーを選択することができます。なぜなら小さいころから、状況把握や決定のトレーニングをしてきたからです。わたしは状況把握、決定といった個人戦術を高めていくことこそが、いい選手になる秘訣(ひけつ)だと思っています。
――日本のU−12年代では一般的に「実行」の練習が多く、技術を高めるために、コーンの間をドリブルしたりしています
それは日本だけではありません。スウェーデン、ポーランド、フィンランド、中国、フランス、イタリア、全部同じです。技術を身につけることも大切ですが、それと同じぐらい次々に変わる状況の中で、その場所へいつ、どのタイミングで、どのように出るかを判断することも大切なのです。繰り返しますが、実行の練習だけでは十分ではありません。実行のトレーニングをした上で、状況把握、決定のトレーニングをすることが重要なのです。大切なのは、ピッチ上で正しい判断をすることです。
これまで多くの国を見て回りましたが、テクニックはあるのに、いい判断ができないために、プレーがうまくいかない選手をたくさん見てきました。よく見られるのが、攻撃のときに前へ急ぎ、真っすぐにしか進まないケースです。先日、あるJクラブのトップチームの練習を見たのですが、そこでも前に進む選手が多くいました。試合の中では、目の前のスペースにたくさん人がいて、前に進むことがベストの判断ではないときがあります。狭いスペースに多くの選手が入ってくると、状況はより難しくなるからです。そこで戦術的にいい判断をするのであれば、反対側のサイドにボールを運ばないといけない。今、プロとしてプレーしている選手の大半が、小さいときから状況把握、決定の練習をそれほどしてこなかったと思います。それらを小さいときに学ぶことが大切で、大人になってから身につけることは、とても難しいことです。
■テクニックと戦術は切っても切り離せないもの
――あなたは練習中、子供たちにかなり細かく戦術的な指導をしていました。それは12歳までに身につけないといけないことだからでしょうか?
わたしは、子供たちのプレーを修正することについて、長年考えてきました。多くの子供たちは小さいころ、テクニックを学ぶことから始めます。でも実際問題、テクニックと戦術は切っても切り離せないものです。サッカーを始めた段階から、テクニックと戦術を同時にトレーニングする必要があると思います。パスを例に挙げて説明しましょう。味方へパスをして、ボールを届けることは誰でもできます。しかしその中で、どのパスが本当にいいパスか、質の高いパスかを考える必要があります。いくつかのパスコースがある中で、最も効果的なパスを選ぶ。それができるのが、いい選手です。シャビがほかの選手と違うところは、状況に応じて誰に出せばいいのか、最適なパスを選択できることです。大切なのは、いつどこで、どのタイミングで誰に出すかを選ぶこと。それはしっかりと学ばないといけないことです。
――バルセロナの下部組織では、その辺りのことを強調して指導してきたのですか?
わたしは長い間、バルサで仕事をしてきました。さらには、フランス、イタリア、オランダ、イングランドなど、それぞれの国のいい部分を取り入れ、その中で大切だと思うことを見つけ出しました。わたしがしているのは、1つの提案です。多くの提案はバルサと重なりますが、それに加えて、シャビが実践しているような「CLで通用するサッカー」というアイデアを持っています。
わたしの目的は、日本や中国、メキシコ、アフリカなどの才能のある多くの子供が、将来CLでプレーする日が来ることです。わたしは長年バルサにいましたが、さらに良くできる部分はあったと感じています。だからこそ、今考えていることは、バルサの提案を超えていく可能性があると思います。ボールタッチが素晴らしい選手はたくさんいます。でもシャビやイニエスタのように、頭のいい選手はそれほど多くはありません。それは練習を重ねていくしかないことです。汗をかくことだけが練習ではありません。頭に働きかけることが重要なのです。
<了>
■指導者向けトレーニングDVD『知のサッカー』
FCバルセロナのカンテラで14年間、名選手を育て続けたジョアン・ビラ。彼が率いる世界的プロ育成者集団「SOCCER SERVICES,SCP」が初めて、日本のために開発したトレーニングDVD。バルサのフィロソフィー(哲学)に、同氏が世界各地で体験した指導法、トレーニングを結集させた独自のメソッド。頭を鍛えるノウハウ、圧倒的な実績。この指導法は、バルサのそれを超えていく可能性がある
『知のサッカー(Think soccer, express your potential.)』
DVD2枚組、21,000円(税込)、U−12世代向けの32の指導メニュー。オリジナル指導書(非売品)付き。スペシャルサイトで先行予約受付中。少年サッカーの情報サイト『サカイク』でも記事連載中
・『知のサッカー(Think soccer, express your potential.)』スペシャルサイト(外部サイト) (2011/6/14)
・少年サッカーの情報サイト『サカイク』(外部サイト) (2011/6/14)
鈴木智之
スポーツライター。『サッカークリニック』『サカイク』などに選手育成・指導法の記事を寄稿。著書多数。最新刊は『ゲキサカ』で好評連載中の『青春サッカー小説 蹴夢 KERU-YUME』(講談社)。「読めばサッカーがうまくなる」をモットーに、練習の大切さ、うまくなるために必要な情報を小説の中で表現した意欲作。TwitterID:suzukikaku
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