コラム    
中田徹
スポーツナビ

リールスの川島が涙「今日の結果は受け入れたくなかった」
パフォーマンスに手応えもチームは5連敗

2010年8月30日(月)

■勝ち点ゼロというのは僕としては受け入れたくない

ゲンク戦に先発出場し、競り合うリールスの川島(中央)=ゲンク
ゲンク戦に先発出場し、競り合うリールスの川島(中央)=ゲンク【共同】

 1−4という大敗。そして開幕5連敗。タイムアップの笛が鳴ると川島永嗣はまず正座をして、次に体育座りをし、最後は仰向けになった。その間1分近く。やがてFWラジンスキが駆け寄り、さらにMFセクールやカベス主将も川島を慰めに来たが川島の涙は止まらなかった。
「負けていて。相手のゲンクは優勝を争うようなチームですが、僕にはそういうのは関係ない。今のチームにとっては勝ち点が必要だし、ここまで勝ち点ゼロというのは僕としては受け入れたくない。どういう状況であれ勝つということが自分たちに求められた使命。やっぱり今日の結果は受け入れたくなかった。そういうのがちょっと感情に出てしまったかなと思います」と川島は涙の意味を語った。

 全勝チームと全敗チームの差をまざまざと見せ付けられた試合だった。キックオフからリールスは首位ゲンクの勢いに完全にのまれてしまい、攻守にパニックの連続。3分にはフォッセンに先制弾を決められた。8分にリールスはエルザバスがシュートを放つも、これが前半唯一のシュートで、前半の45分間は完全にゲンクが試合を支配し切った。
 16分にはリールスの2人のセントラルMFの混乱を突き、またしてもフォッセンが決めて2−0。「今日はシュートを打てば入るという感じだった」と好調フォッセンは笑った。

 オランダ語では守備が弱く何度も相手に崩されることを『チーズの穴』と言うが、まさにこの夜の、そして今季のリールスの守備陣がそうだった。前半を2失点で終えたのは実にラッキーで、8度のオフサイドに救われた。このオフサイドも意図して奪ったものではなく、ゲンクにとってはがら空きとなったサイドのスペースへ出したスルーパスが、微妙なタイミングでオフサイドになってしまったようなものばかりだった。

 前半の不出来を選手の交代によってハーフタイムに修正するのが今季のアントゥエニス監督だ。この日はカベンス1人の投入だったが、これで少しチームが落ち着き、66分にはロングスローからのこぼれ球をカベンスが強烈な左足シュートで1−2とした。その後もリールスは攻め込む時間を作るが、ゲンクもカウンターをさく裂させ、リールスを自陣に押し戻す。
 82分から83分にかけて3度の決定機に川島の好セーブが続き、ゲンクはなかなかリールスにとどめを刺せなかった。だが、83分にはリールスのゴール前で3対2の数的優位を作ってカムーが3点目を奪い、ロスタイムにも川島との1対1からオグンジミがシュートを決めて4−1となった。

■僕としてはプレーは1試合1試合ホントによくできている

 試合終了の合図を前に、試合をあきらめピッチに倒れ込んだ仲間たちに、「早く立ち上がれ」と声をかけた川島だったが、再開のタイムアップと同時に試合終了。今度は川島が座り込んだ。
「1−4だろうが、1−5だろうが、僕は笛が鳴るまで点を取ることがベストだと思う。それは負けても崩す姿勢じゃない。僕は何点取られても、味方が点を取るためにプレーしたい。サッカーは何が起こるか分からない。チームが勝つために僕はプレーしたい。そのことは変わらないです」と4失点目直後のシーンを川島は振り返った。

 川島自身の自己評価としては、「結果は結果ですけど、僕としてはプレーは1試合1試合ホントによくできていると思う。“前の試合”よりは“今日の試合”の方がよくできている。自分としてはそれを続けたい」と、パフォーマンスが向上していると分析している。
 だが、チームパフォーマンスは向上の兆しがない。開幕前から不安視されていたDF陣だが、最近はけが人も多く、最終ラインが固定できない。ゲンク戦は「4バック中、3人がMFの選手」(川島)というありさまだった。MFも安定しておらず、チーム全体としてビルドアップができない。そのため小柄なFWラジンスキに向かってどんどんロングボールが蹴り込まれる始末だ。

 開幕前、川島をはじめとする6人もの補強を行い、他チームをうらやましがらせたリールスだが、開幕ダッシュにつまずいてクラーセン、ニカイスを補強。最近はFWソンク(ゲンク戦はベンチ外)を獲得した。さらにゲンク戦後は「DFの補強が急務。今、クラブの首脳陣は補強に向けて全力を注いでいる」(アントゥエニス監督)と矢継ぎ早の補強作戦に出ている。
 開幕のSTVV戦前、「さらにDFの補強が必要と言われている? そんな必要ないよ。うちの選手は十分なクオリティーを持っている」と語っていたサミー会長に対し、今は「あのときもっと強く補強を主張しておけば良かった」とアントゥエニス監督はうなだれる。試合ごとに選手が入れ替わり、アントゥエニス監督が唱える“オートマティズム”からリールスはますます遠のくばかりである。

<了>

中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。メキシコW杯を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。2002年、06年、10年ワールドカップ、ユーロ2004、08をはじめ、オランダリーグのコラムなどをリポートしている

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