明らかになった「日本人に足りないもの」 (1/2)
福岡大サッカー部4選手、オサスナ練習参加で見えたもの
■スペイン最高レベルのカンテラを持つオサスナへ
2月上旬、昨年8月の総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントで優勝を飾った福岡大学サッカー部の4選手が、スペインで練習参加を行った。受け入れ先のクラブは、CAオサスナ。元スペイン代表監督のホセ・アントニオ・カマーチョ監督率いるオサスナは、リーガ・エスパニョーラで第23節終了時点9位。そしてここ10シーズン、トップリーグのいすをキープしている名門だ。ホームタウンであるパンプローナの人口が約20万人。クラブの年間予算が今季1部20チーム中15番目に当たる3000万ユーロ(約36億4000万円)という規模を考えれば10年連続の1部は快挙と呼べるだろう。
その秘訣は何か。それは「カンテラ(下部組織)にあり」という声を多く聞く。実際、現スペイン代表のデルボスケ監督が「オサスナのカンテラは、スペイン最高レベル」と高評価を与えるほど、オサスナは育成に定評のあるクラブ。「選手を育ててトップチームで使う」そして「活躍してもらってから売る」ことで、チームの強化とクラブ経営の黒字化を両立している。事実、現在のトップチームにはスペイン代表左サイドバックのモンレアルのほか、プニャル、ミゲル・フラーニョ、アスピリクエタらのクラブ生え抜き選手が数多くレギュラーとして活躍しており、ここ6シーズンで計23名ものカンテラ出身選手がトップデビューを果たしている。
日本の大学チャンピオンであり、今年、実に7人ものJリーガーを輩出した福岡大からパンプローナに派遣されたのは、1月のアジアカップ予選イエメン戦でA代表デビューを飾ったFW永井謙佑(3年)、MF假屋健太(2年)、DF牟田雄祐(1年)、U−18日本代表のFW清武功暉(1年)の4選手。直前に体調を崩し予定より3日遅れのスタートとなった永井は、2部B所属のオサスナ・プロメサ(Bチーム)、そのほか3選手はユースチーム(AとBがある)に入って2週間の練習参加を経験した。
福岡大サッカー部の乾眞寛監督(第1週目の練習を視察に訪れた)からは「日本にないものを見て、感じて、刺激をもらってこい」と送り出された4選手は、けがもなく2週間の滞在を経て、2月中旬に無事帰国の途についた。そんな彼らは、オサスナでの練習参加を通して何を感じ、何を吸収して帰ったのだろうか。そしてスペインにあって、まだ日本にはないものとは何か。本稿では、日本サッカーの育成の面でヒントとなり得る、その“何か”を、選手の言葉をもとに模索していきたい。
■4人を驚かせたスペインの練習メソッド
まずは、2週間の練習参加が終わった直後の4人の感想を並べてみよう。
「楽しかったです。日本にはない球際の激しさ、メリハリがあったので。日本では見たことがないような切り替えがスペインの練習にはありました」(永井)
「あまり試合形式の練習とかはなかったんですけど、練習の意図とかを考えながらやろうと意識して、学ぶことが多い2週間でした」(假屋)
「練習時間が短かく、戦術練習が多かったんですけど、その中でも球際の強さとか、日本にいても学べないところがたくさんありました。これから自分がディフェンスとしてやっていく中で、大切なことを考えさせられる2週間でした」(牟田)
「集中力の高さが違いました。90分だからパッとやれるし、プレスとかも速い。やる時はやるという感じでした。スイッチのオンとオフの切り替えが非常に速かったです」(清武)
「日本とスペインの練習の違い」を聞くと、一様に「スペインの方が練習時間は短い。けれども、日本よりも球際が激しく、メリハリがある」との答えが返ってきた。永井は「量としては、それほどやっていないけれど、日本よりコンパクトにやっている気がする」と質を追求するスペインの練習メソッドについて端的に説明してくれた。清武は、さらに具体的にこう話している。
「日本だったら、最初にジョグからストレッチをして、パス&コントロールというような順序で練習に入っていくんですが、こっちはまず筋トレみたいなことをして筋肉を刺激してから外に出て、ジョグなしで軽くボールを蹴って、いきなり実戦的な練習に入ります。2週間いて誰ひとりけが人が出なかったのは、集中している証拠だと思います」
■「駆け引きのうまさ」と「先を見たプレー」
オサスナのカンテラでは、練習時間は90分と決められている。練習は週4日で、週末は土日のいずれかが試合で、いずれかはオフ。よって、ほかの町クラブと同じく週休2日である。休まないことに慣れている日本の選手からすれば「物足りない感じがした」(永井)という感想が出るのも納得だ。これについてオサスナ・ユースAのイニャキ・パチェコ監督は、こう説明してくれた。
「オサスナのみならずスペインでは、練習の量ではなく質を追求する。また、サッカーの試合が90分であるのだから、練習も90分が妥当と考えている。時間のみならず、テンション、集中力も(試合と)同じ高さを求めていく」
日本との違いは、もちろん練習のスタイルやメソッドだけではない。プレーの違いで驚いたことについて彼らに質問してみると、球際の激しさや強さ以外にも、興味深い答えがいくつか返ってきた。DFの牟田は「駆け引きのうまさ」を挙げた上で、こういう話をしてくれた。
「スペインの選手はサボっているように見せておいていきなり出てくるとか、要所要所がうまかったです。日本で対戦する選手はずっとトップスピードなのでついていけたし、ちょっと体をぶつけたら体勢を崩したりしますけど、こっちはスピードの緩急があるのでついていけないときもありました」
ボランチの假屋は「先を見たプレー」を挙げた。
「こっちの選手は、その場しのぎのプレーではなくて、先を見て、考えながらプレーしているように映りました。深く考えているかどうかは分かりませんが、自然に習慣としてできている気がします。やっぱり小さいころからサッカーを観てきているというのが大きいんじゃないでしょうか。いいプレーをすると周りがしっかり反応して盛り上がってくれるし、逆にミスが続いたりすると怒鳴るまではいかないですが、ちゃんと指摘してきます」
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