コラム    
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
スポーツナビ

バルセロナの偉大なる挑戦
国王杯敗退から得られるもの

2010年1月19日(火)

■国王杯での敗退

バルセロナは国王杯敗退をチャンスに変えられるか
バルセロナは国王杯敗退をチャンスに変えられるか【Photo:AP/アフロ】

 13日にサンチェス・ピスファンで行われた国王杯5回戦のセカンドレグ、バルセロナは内容でセビージャに勝り、試合にも1−0で勝ちながらも、厳しい現実を突きつけられた。2試合合計2−2、アウエーゴールの差で準々決勝進出を逃し、ジョゼップ・グアルディオラ監督が2008−09シーズン開幕前にトップチームの監督に就任して以来、初めてタイトルを逃がすこととなったのだ。今こそ、バルセロナは勇気を示し、世界最高レベルのサッカーでリーガ・エスパニョーラとチャンピオンズリーグ(CL)優勝へ向けて突き進むべきだろう。

 国王杯敗退が決まった後のバルセロナのロッカールームでは、何が起きていただろうか。恐らく選手たちは自分たちに対する怒り、悔しさ、そして失望にさいなまれていたに違いない。09年はチームとしても個人としてもタイトルを総なめにした最大のスター、リオネル・メッシをはじめ、キャプテンのカルレス・プジョルも残された2つのタイトル――リーガとCLの2冠を誓っている。

 2シーズン連続の3冠はついえたものの、バルセロナが披露しているあらゆる面でハイクオリティーなサッカーは非の打ちどころがない。知将グアルディオラは国王杯から姿を消した後も、これまでのサッカーのやり方を変えるつもりがないことを宣言した。確かに、センターバックの守備に若干問題を抱えていることは事実だ。今季加入したチグリンスキはまだバルセロナのサッカーに適応しておらず、長期離脱していたガブリエル・ミリートは先ごろ、やっと復帰したばかりである。とはいえ、ボールを支配するバルセロナのサッカーは、たとえ負けたとしても変わることはない。それが、クラブの哲学だからだ。

■リーガではいまだ無敗

 バルセロナの国王杯敗退は、さまざまな理由により今後のチームの精神状態に何かしら影響を与えるかもしれない。とはいえ、昨シーズンのバルセロナのように、3冠達成が実現可能なチームは世界中を見渡してもそうあるものではない。09年の6冠(リーガ、国王杯、CL、UEFAスーパーカップ、スペイン・スーパーカップ、クラブワールドカップ=W杯)の方が、超人離れした偉業なのだ。

 一方で、こうした成績に匹敵するほど重要なのは、グアルディオラがカンテラ(下部組織)出身の選手を数多く起用し、結果を残していることだ。セビージャとの国王杯第2戦でも、スタメン中6人がカンテラ出身、交代出場も含めると実に8人がプレーしているのだ。クラブW杯決勝のような大舞台でも、グアルディオラはさほどトップチームでの経験がないカンテラ上がりのジェフレンを抜てきしている。

 今季のバルセロナはリーグ戦ではいまだ無敗(14勝4分け0敗)、敗北を喫したのはCLでグループリーグのルビン・カザン戦、そして国王杯5回戦ファーストレグのセビージャ戦のみである。いずれもカンプ・ノウでの敗戦というのが興味深い。
 一方、昨シーズンのバルセロナは、決して順風満帆な立ち上がりではなかった。リーガ開幕戦で昇格組のヌマンシアにアウエーで0−1と黒星を喫し、続くラシン戦もホームで1−1と引き分けた。だが、そこからは9連勝と波に乗り、最終的にはアウエーでのクラシコ(伝統の一戦)でレアル・マドリーに6−2で勝ったこともあり、27勝6分け5敗の勝ち点87、ライバルには9ポイント差をつけた。今季ここまでの今季の成績は、昨シーズンを上回るものだ。

■懸念はグアルディオラの契約延長問題

 バルセロナにとって一番の懸念事項は、グアルディオラの契約延長問題である。クラブは快い返事を待ち望んでいるが、シーズン終了後に予定されている次期会長選挙に影響を及ぼすであろう自身の去就に関し、指揮官は慎重な姿勢を見せている。現会長のジョアン・ラポルタは次の会長選には出馬しない。

 グアルディオラのもとへは各国からさまざまなプロジェクトが持ち込まれていると言われる。マンチェスター・ユナイテッドがサー・アレックス・ファーガソンの後任に望んでいるという報道もあるくらいだ。とはいえ、グアルディオラがバルセロナと契約更新することに、何ら問題がないこともまた事実である。思慮深い性格ゆえ、しかるべき時が来るまで口をつぐんでいるのだろう。

 バルセロナは16日、国王杯から敗退した直後のリーグ戦で再びセビージャとまみえ、今度は4−0で圧勝。この日、レアル・マドリーはビルバオに0−1で屈し、首位バルセロナと2位レアル・マドリーの差は5に開いた。
 ちなみに国王杯の8強の顔ぶれは、アトレティコ・マドリー、セルタ、デポルティボ、セビージャ、マジョルカ、ヘタフェ、ラシン、オサスナ。リーガの上位3チームはすでに姿を消しているが、これもまたサッカーの一側面である。

 バルセロナは今、新たなる1ページをめくるべく偉大なる挑戦に臨もうとしている。連続3冠の道はすでに絶たれたが、これをチャンスととらえてリーガとCL連覇に向けてまい進できれば、さらなる伝説が生まれることだろう。モチベーションを維持するという点では、今回の失敗に学ぶくらいが丁度いいのかもしれない。

<了>

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿
公式サイト(スペイン語・英語)

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