コラム    
中田徹
スポーツナビ

VVV本田「20年30年抜かれないような記録を作りたい」 (1/2)
〜オランダからの叫び〜

2009年8月23日(日)

■オランダで加熱する“本田フィーバー”

4試合連続となる今季5ゴール目を決めた本田(中央)
4試合連続となる今季5ゴール目を決めた本田(中央)【Photo:PICS UNITED/アフロ】

 22日に行われたフローニンゲン戦の7分、VVVの本田圭佑はフリーキックから先制弾をたたき出した。これで今季開幕から4試合連続となる5ゴール目。このフリーキックは、本田がマーカー役のアジロレのボールを奪ってドリブルでボールを前に運び、たまらずアジロレがファウルで止めて奪ったもの。本田は快調に見えるし、“本田システム”も機能しているようだ。

 今、オランダ人の興味は「本田の移籍はこの夏かなうのか」ということに集中している。最近アヤックスが本田獲得戦線から脱落し、PSVも本田をあきらめ切れないとはいえ、なかなか移籍金でVVVとの折り合いがついていない。そんな中、“日本在住フェイエノールトファンのオランダ人投資家”が、本田獲得にどうやら乗り出したらしいなどという情報も飛び込んできた。ともかく、現在オランダにおける“本田フィーバー”は日本では想像もつかないほど過熱している。

 そんな渦中の本田はゴールを奪うと左手を天高く上げ、右手を胸にメーンスタンドまで駆け寄っていった。胸にあるのはVVVのエンブレム。
「周りがみんな騒いでいますけど、僕自身、VVVの選手だというのを伝えたかった。僕はVVVでプレーしているんだというのを示せたと思う。あの瞬間、サポーターと気持ちがつながれたというふうに思ってます」

 前半はその後ゴールの奪い合いとなり、2−2で試合を折り返した。その中で本田がパスを成功させた回数は8本。個人的な手集計で誤差はあるだろうが、それにしても少ない本数である。キックオフ直後はアジロレのミスを誘い、チームに先制点をもたらした本田だったが、その後はアジロレの徹底マークに手を焼いた。「フィジカル的にあの15番(アジロレ)は強かった。あんなのはなかなか見ない」(本田)と思わず語るほどのプレッシャーを本田は受けていたのである。

■“本田システム”破りの大きなヒント

 後半が始まった。本田は「前半と後半で相手がやり方を変えてきた」と気付いた。
「ハーフタイム、監督(フローニンゲンのヤンス監督のこと)からの指示で駆け引きというか、『本田がどう反応するかちょっと前に行ってみろ』みたいな指示が(アジロレに)あったと思うんで、まったく違うことをしてきました。後ろで2人がパス交換している時にアジロレがするすると近付いていくんで嫌でした」
 アジロレが中盤でフリーマンとなり数的優位を作ると、今度はセンターバックのグランクビストが力強いドリブルで前へ上がってくる。こうしてフローニンゲンが試合を支配した。「本田の背後に大きなスペースが生まれるのは分かっていた」とヤンス監督。「後半はそのスペースをうまくアジロレが突いた」

 ファン・ダイク監督は仕方なく右ウイングのスハーケンを下げ、MFのファン・デッセルを投入して中盤を厚くした。これが66分のこと。
「本田が守備をしないのを突かれ、わたしは4−3−3をあきらめざるを得なかった。彼を生かすための選手交代をしなければならなかった。VVVにとって彼は重要な選手だから」。ファン・ダイク監督は交代策をこう説明した。
 これまで準備をしてこなかった片翼ウイングの戦術にVVVの選手は多少戸惑いを見せた。それでも長い時間、試合から消えていた本田が左サイドで2度好突破を見せ、ロスタイムには素晴らしいスルーパスでレーマンスの決定機を演出するなど、再び目立ち始めたのも確かだった。
 
 ファン・ダイク監督は「4−3−3をあきらめた」と言ったが、そもそも今のVVVは4−3−3システムと呼べるものなのだろうか。中盤は正三角形。底辺にいるレーマンスとアウアサルが汚れ役を引き受け、本田が攻撃に専念できるよう守備に奔走している。ファン・ダイク監督が編み出した“本田システム”である。しかし、今の本田の意識はストライカーで、ボールをもらいに引いてビルドアップに加わることはかなり少ない。今の本田を単純にMFとしてカテゴライズするのは、中盤との連動性のなさから無理があるという見方があってもいいだろう。今のVVVは4−2−3−1とも呼べず、4−2−4に見えることすらある。

 ファン・ダイク監督は本田にフリーロール役を与える代わりに、右サイドのスハーケン、左サイドのビアナ、もしくはアハハウイに細かに守備の要求をしており、サイドアタッカーは監督の指示をこなすのに大変な思いをしているという。VVVが守勢に回り両サイドが守備に走っている場合、4−4−1−1としてとらえることもできる。こうしたシステムの中で本田は攻撃に特化し、VVVも本田の才能を最大限に発揮させようとしている。 
 その本田をマークするのは、フィジカルだけでなく、テクニック、戦術眼など攻守にレベルの高い選手ばかりで、すきあらばその本田を追い越し、スペースを自在に生かす能力を十分に持っている。その選手を本田がマークに行かないとどうなるか。フローニンゲンは他チームに“本田システム”破りの大きなヒントを与えた。

 <続く>


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