リーグ序盤のヒーローは「海の英雄たち」 (1/2)
市之瀬敦の「ポルトガルサッカーの光と影」
■驚きは海風にのって
何やらロマンチックな小見出しをつけてしまったが、今季ポルトガルリーグ序盤を振り返る時、どことなくフレッシュな気持ちに浸れるのである。理由は、リーグ順位表を見ていただければすぐに分かってもらえるはず。驚いたことに、聞きなれないチームが首位の座についているではないか。
その名はレイソエス。ポルトからさらに北へ4キロほど行ったところに位置する町マトジーニョスのスポーツクラブである。人口は4万5000人余りの小さな町。このマトジーニョスにある港がレイソエス港。ポルトガル北部を、いやポルトガルを代表する港の1つである。
町の名前ではなく港の名前を冠するクラブ、レイソエス。海の香りがプンプンである。そんなクラブの健闘ぶりが、今季リーグ序盤、海風に乗ってポルトガル人に心地よい驚きをもたらしている。
正直に告白すると、このサッカーチームのことを私も長いこと知らずにいた。それもそのはず、1970年代末以降は長く2部リーグ暮らしが続き、ポルトガルサッカーの表舞台に姿を見せることがなかったのである。私がレイソエスのサッカーを初めて意識したのは、2002年5月。ポルトガル杯の決勝に進出した時である。当時はまだ3部に所属していたのだが、マリオ・ジャルデウやジョアン・ピントが絶好調だったスポルティングを相手に善戦し、敗れはしたものの、スコアは0−1であった。
あれからもう6年以上が過ぎてしまい、その試合のプレーひとつひとつを覚えているわけではない。だが、リスボン郊外ジャモールの森にある国立競技場に応援に駆け付けた多数のレイソエス・サポーターたちが、スタジアム外の芝生の上で、くつろぎながらお弁当を食べていた姿は今も印象に残っている。
レイソエスのサポーターが熱狂的なことはポルトガルでは有名で、ホームで試合をすれば、平均7000、8000人くらいの観客が集まる。アウエーでも多い時は約6000人が、“海の赤ん坊たち(ベベース・ド・マール)”というニックネームをつけられた選手たちをサポートするために、スタンドを埋めるのである。2004年、ポルトガルで公開された短編サッカー映画『君はわれらの信仰だ』の“主役”がレイソエス・サポーターだったこともうなずける。
■長い歴史をひもとけば
レイソエスは日本では、というよりもポルトガル以外では、つい最近までほとんど無名だったクラブだが、実は創設は1907年11月とかなり古い。ベンフィカだってクラブ創設は1904年なのだ。クラブの正式名称がレイソエス・スポーツクラブというように、サッカー以外にも、バレーボールや競泳などの活動も有名である。
マトジーニョスは港町、そしてレイソエスのスタジアムの名前はそのものズバリ、エスタディオ・ド・マール、すなわち「海のスタジアム」である。この1964年に完成したこじんまりとしたスタジアムは、漁師たちの支援を受けて建設されたという。ちなみに記念すべき最初のゲームの相手はベンフィカで、結果は当たり前のように4−0でベンフィカの圧勝だった。
レイソエスが2002年のポルトガル杯で準優勝したことはすでに述べた。しかし、さらに時代をさかのぼると、1961年にFCポルトを2−0で破ってポルトガル杯を制したことが記録に残されている(私の生まれた年で親しみがわいてくる)。まったくの無名で、無冠のクラブかと思えば、ポルトガルサッカー界ではまずまずの実績を残してきた、古豪と言ってもよいクラブなのである。
ヨーロッパの大会にも出場経験がある。その中では、61−62シーズンのカップウィナーズカップで、ベスト8まで勝ち上がったのが最高成績である。現在のUEFA杯の前身であるフェアーズカップにも2度出場。ただしどちらも1回戦で敗退した。最近だと、2002年のポルトガル杯準優勝を受けて出場したUEFA杯で予選を突破したものの、1回戦でギリシャのPAOKサロニカに敗れている。
もっとも、1960年代から1977年まで常連だった1部リーグでの最高順位は62−63シーズンの5位で、それ以外は2けたの順位も少なくない。古豪と言っても、セツバルやベレネンセスというレベルではないのだろう。
77年に2部に降格してからは、1988−89シーズンに一度だけ1部昇格を遂げているものの、その後はまた2部、3部暮らしが続き、2007−08シーズンになってやっと待望の1部復帰を遂げた。思い出せば、2007年はクラブ創設100周年に当たった年。記念すべき年に1部リーグ復帰を果たしたところが、なかなかかっこいいではないか。
「輝かしい栄光の歴史を誇るクラブ」とは言えないけれど、レイソエスはポルトガルサッカー界に無視できない足跡を残してきたクラブなのである。
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