バルセロナの示した模範 (1/2)
美しきサッカーの勝利
■結果の重要視とカテナチオ
チャンピオンズリーグ(CL)決勝でマンチェスター・ユナイテッドに完勝した夜、バルセロナの成功に彩られた2008−09シーズンが完成した。リーガ・エスパニョーラ、国王杯、そしてCLの3冠という、スペイン勢として初の偉業。バルセロナのチーム作りは、世界の大部分のチームがお手本とすべきものだろう(少なくとも欧州王者と同等の予算があるならば)。と同時に、カタルーニャのチームが見せた「美しく勝つサッカー」は、「結果至上主義」を掲げて徹底的に守備を固めるチームに対し、1つの勝利以上の問いを投げ掛けたと言える。
勝利という目的は手段(もちろんルールの範囲内でだが)を正当化するという、“マキャベリ流”(本来の意味からは離れてしまっているが)のサッカーは、この40年間を見ても、世界のあちこちでサイクルごとに目撃されている。
60年代にインテルなどを率いたアルゼンチン人のエレニオ・エレラ、エストゥディアンテスの監督を務めたオズワルド・ズベルディアは、守備的なサッカーでクラブに栄光の一時代をもたらした。“グランデ・インテル”と呼ばれたエレラのチームは、ほとんどの選手が自陣に引いて守り、素早いカウンターで点を取るという“カテナチオ”という戦術を徹底。勝利を追及するそのプレーに、スペクタクルはみじんもなかった。
こうして重要視されるようになったのは結果である。次第に選手の大半よりも監督のステータスが上がり、高給を稼ぐようになった。ジョバンニ・トラパットーニ、ファビオ・カペッロ、ジョゼ・モリーニョらは、情緒的で、攻撃的でダイナミックなサッカーに現実的なサッカーで対抗し、その戦いに勝った指揮官たちだ。
■バルセロナの美しく組織的なサッカー
ヨーロッパにおける初めての大きな変革は、80年代後半から90年代前半にかけてミランを指揮したアッリーゴ・サッキによって生み出された。最終ラインを高く保ち、前線から積極的にプレッシングを行うゾーンディフェンスは、非凡な才能を持ったタレントが数多くいたからこそ実現した。フリット、ファン・バステン、ライカールト、バレージ、ドナドーニらが繰り出すサッカーは、“グランデ・ミラン”の栄光を後世にとどめ、欧州で帝国を築いた。それから約10年、南米ではボカ・ジュニアーズがタイトルを量産していたが、ミランほどの輝きは持ち得ていなかった。
そして2009年――バルセロナBから今季トップチームの監督に抜てきされた若きジョゼップ・グアルディオラに率いられたチームは、めったにお目にかかれない攻撃的サッカーで世界を驚かせた。3年前にも欧州と国内リーグのチャンピオンに輝いたが、そのプレーの質は異なる。現在のバルセロナを貫くのは、圧倒的なボールポゼッションを基盤とした美しく組織的なサッカーだ。才能溢れる選手たちがその個人技で局面を打開し、ゴールを量産。と同時に、チーム全体でプレッシングをし、攻守の切り替えを素早く行う。
チェルシーとの準決勝第2戦、もし後半ロスタイムにアンドレス・イニエスタがペナルティーエリアの外から放ったミドルシュートが決まらなかったとしたら、バルセロナのCL優勝が実現しなかったのは事実だ。だが、美的観点から言えば、たとえ優勝できなかったとしても、今季のバルセロナの価値はほとんど変わらないだろう。恐らく、結果至上主義者たちはバルセロナのサッカーの前に、白旗を振りかざしたのではないか。
確かに、チェルシーはあと一歩のところまでバルセロナを追い詰めた。しかし、劇的な幕切れで、バルセロナは勝利を手にした。フィジカルをベースとした守備的なスタイルが欧州の舞台で幅を利かせている昨今、バルセロナの成し遂げた“結果と内容”の両立は、今後に一石を投じるものとなったに違いない。
・バルセロナ優勝までの軌跡(日程・結果) (2009/6/1)
・世界が注目する最高の対決 (2009/5/26)
・マンUとバルセロナ、CL決勝への異なる道のり (2009/5/13)
- パオロ・マルディーニであるということ
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- バルセロナの示した模範
美しきサッカーの勝利(セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky)[09/6/1]




